RAID1は意味ない?バックアップとの違いと正しいデータ保護法

「大切なデータを守るためにRAID1を組んだけど、これって本当に意味があるの?」
「RAIDはバックアップではないと聞いたけど、どういうこと?」

このように、RAID1の必要性やその本当の役割について、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

特にSSDの信頼性が向上した現在、「RAID1は意味ない」という声も聞かれるようになりました。

この記事では、RAID1が「意味ない」と言われる理由から、その正しい役割、そしてバックアップとの決定的な違いまでを徹底的に解説します。

最後まで読めば、RAID1のメリット・デメリットを正しく理解し、あなたの環境に最適なデータ保護方法を見つけることができるでしょう。

目次

【結論】RAID1が「意味ない」は本当?と言われる5つの理由

RAID1が「意味ない」と言われる背景には、いくつかの明確な理由があります。

技術の進歩や代替手段の登場により、かつてほどの優位性がなくなったというのが主な論点です。

ここでは、その具体的な5つの理由を解説します。

理由1:容量効率が悪い(使えるのはディスク1台分だけ)

RAID1の最大のデメリットは、容量効率の悪さです。

RAID1は「ミラーリング」という仕組みで、2台のディスクに全く同じデータを書き込みます。

例えば、2TBのハードディスク(HDD)を2台使ってRAID1を構成した場合、合計物理容量は4TBになりますが、実際にユーザーが使える容量は半分の2TBだけです。

これは、データの安全性を確保するために、常に1台分の容量をコピー用として確保し続けるためであり、コストパフォーマンスの観点からは非効率と言わざるを得ません。

理由2:書き込み速度が速くならず、むしろ低下する場合がある

RAIDを組むとストレージが高速化するというイメージがありますが、RAID1に関しては書き込み速度の向上は期待できません。

データを保存する際、RAID1は2台のディスクに同時に同じ内容を書き込む必要があります。

そのため、ディスク1台で運用する場合と比較して、書き込み処理に時間がかかり、わずかに速度が低下することもあります。

一方で、データの読み込みに関しては、2台のディスクから同時に読み出せるため高速化するメリットがありますが、書き込み性能を重視する用途には不向きです。

理由3:SSD自体の信頼性が向上し、故障リスクが低下した

RAIDが普及した主な背景には、物理的な駆動部品を持つHDDが故障しやすかったという事情があります。

しかし、近年主流となっているSSDは、半導体メモリでデータを読み書きするため物理的な駆動部品がなく、HDDに比べて衝撃に強く、故障率も格段に低くなりました。

SSDメーカーが保証するTBW(総書き込み容量)も大幅に向上しており、通常の使用で突然故障するリスクは大きく減少しています。

このため、SSDでRAID1を組んで故障に備える必要性そのものが薄れてきているのです。

理由4:より高速な「NVMe SSD」の登場で速度面の優位性がない

データの読み込み速度が向上する点はRAID1のメリットですが、その優位性も薄れています。

従来のSATA接続のSSDよりもはるかに高速な「NVMe SSD」が普及したためです。

NVMe SSDは、単体でもRAID1を組んだSATA SSDの読み込み速度を軽く上回る性能を持っています。

速度向上を目的とするなら、RAID1を組む手間やコストをかけるよりも、NVMe SSDを1台導入する方がはるかに簡単で効果的です。

理由5:HDD/SSDの同時購入による「同時寿命」のリスクがある

RAID1を構築する際は、同じメーカー・同じ型番のディスクを2台同時に購入するのが一般的です。

しかし、これは「2台のディスクがほぼ同じタイミングで寿命を迎える」リスクをはらんでいます。

製造ロットが同じディスクは、使用状況も同じになるため劣化の進み具合も似通ってきます。

片方のディスクが寿命で故障し、新しいディスクに交換してデータを復旧(リビルド)している最中に、残ったもう片方のディスクも寿命で故障してしまう、という最悪のケースも起こり得るのです。

そもそもRAID1とは?バックアップとの決定的な違いを解説

RAID1の役割を正しく理解するためには、「バックアップ」との違いを明確に区別することが重要です。

これらは目的が全く異なる技術であり、混同しているとデータを失うリスクを高めてしまいます。

RAID1の仕組みは「ミラーリング(同じデータを2台に同時保存)」

RAID1は、一般的に「ミラーリング」と呼ばれています。

その名の通り、接続された2台のストレージ(HDDやSSD)に、全く同じデータを鏡写しのようにリアルタイムで書き込む技術です。

ユーザーからは1台のドライブとして認識されますが、内部では常に2台のドライブが同じ状態を保つように動作しています。

これにより、片方のドライブが物理的に故障しても、もう片方のドライブが無事であればデータは失われません。

RAID1の本当の目的は「冗長化(耐障害性)」であり、システムを止めないための技術

RAID1の真の目的は「バックアップ」ではなく、「冗長化(じょうちょうか)」です。

冗長化とは、システムの一部に障害が発生しても、予備の系統に切り替えることで全体の機能を停止させずに運用を継続できるようにすることです。

つまり、RAID1は「ディスクが1台壊れても、パソコンやサーバーを止めずに使い続けられる」ための耐障害性を高める技術なのです。

常時稼働が求められるサーバーなどで、ダウンタイムを最小限に抑えるために利用されます。

なぜRAID1はバックアップの代わりにならないのか?

RAID1がバックアップにならない最大の理由は、データの変更が「リアルタイム」で「両方のディスク」に反映されてしまう点にあります。

バックアップとは、ある特定の時点のデータを別の場所・媒体に保存しておくことで、元のデータに問題が発生した際にその時点の状態に復元できるようにするものです。

しかし、RAID1にはこの「時点を戻す」という概念がありません。

誤ったファイル操作やウイルス感染もそのまま複製されてしまう

具体的な例を考えてみましょう。

もし、あなたが重要なファイルを誤って削除してしまった場合、その削除操作はRAID1を構成する2台のディスク両方で即座に実行されます。

片方のディスクに残っているということはなく、復元は困難です。

同様に、ランサムウェアのようなウイルスに感染してファイルが暗号化された場合も、その被害は2台のディスクに同時に及んでしまいます。

このように、RAID1は物理的な故障には強い一方で、人為的なミスやソフトウェア起因のデータ破壊には全くの無力なのです。

本当に意味ない?SSD/HDDでRAID1を導入するメリットと最適な活用シーン

「意味ない」と言われる一方で、RAID1には特定の条件下で大きなメリットがあり、今でも有効な選択肢です。

その利点を理解し、適切なシーンで活用することが重要になります。

最大のメリット:片方のディスクが故障してもデータを失わず稼働し続けられる

RAID1がもたらす最大の恩恵は、やはり高い耐障害性です。

ディスクドライブは消耗品であり、いつかは必ず故障します。

RAID1を組んでいれば、2台のうち1台が突然故障しても、システムは停止しません。

もう片方の正常なディスクで作業を継続しながら、故障したディスクを交換し、データを復旧(リビルド)することができます。

この「業務を止めないで済む」という安心感は、特にビジネス用途において非常に大きなメリットです。

読み込み速度は単体ドライブより向上する

前述の通り、書き込み速度は向上しませんが、読み込み速度は高速化される傾向にあります。

これは、1つのデータを読み出す際に、2台のディスクから並行して読み込みを行うことができるためです。

大容量のファイルを開いたり、多くのファイルを一度に読み込んだりするような作業では、その効果を体感できる可能性があります。

こんな用途にはRAID1が有効!おすすめの活用シーン

RAID1の特性を考慮すると、以下のようなシーンでの活用が考えられます。

用途理由
小規模な社内ファイルサーバーサーバーの停止が業務に影響を与えるため、耐障害性が重要になる。
重要なデータを扱う業務用PCPCの故障による業務停止時間を最小限に抑えたい場合に有効。
家庭用NAS(ネットワークHDD)家族の写真や動画など、失いたくない大切な思い出のデータを物理故障から守る。

これらの用途では、データの保全と同時に、システムが停止しないことの価値が高いため、RAID1が効果を発揮します。

【HDD/SSD別】RAID1を組む際の注意点とポイント

HDDでRAID1を組む場合は、故障の前兆(異音や速度低下など)が現れやすいため、比較的リスク管理がしやすいです。

一方、SSDは故障の前兆なく突然認識しなくなるケースが多く、注意が必要です。

特に、同じ製品を同時に購入してRAID1を組んだSSDは、寿命が同タイミングで訪れるリスクがあります。

対策として、あえて異なるメーカーの製品や購入時期の違う製品で組む方法もありますが、互換性の問題が発生する可能性もあるため、上級者向けの対策と言えるでしょう。

RAID1の故障・トラブルQ&A|壊れた時の対処法は?

RAID1を運用する上で、実際にトラブルが発生した際の対処法を知っておくことは非常に重要です。

よくある疑問とその答えをまとめました。

片方のHDD/SSDが故障したらどうなる?データは無事?

RAID1を構成するディスクのうち1台が故障した場合でも、データが失われることはありません。

正常に動作しているもう1台のディスクに必要なデータが全て残っているため、システムはそのまま稼働し続けます。

多くのRAIDシステムでは、管理ツールからの警告通知や、ケース本体のLEDランプが赤く点灯するなどして、異常を知らせてくれます。

この状態を「縮退運転(デグレードモード)」と呼び、早急なディスク交換が推奨される状態です。

RAIDケース本体が壊れた場合、中のディスクは取り出して使える?

RAIDを構成している2台のディスク自体が無事であれば、ディスクを収納しているケース(筐体)が故障しても、データは救出できる可能性が高いです。

RAID1は単純なミラーリングであるため、ディスクを1台取り出して、別のケースやパソコンに直接接続すれば、通常のドライブとして認識され、中のデータを読み書きできる場合がほとんどです。

これは、複雑なデータ分散を行うRAID5などにはない、RAID1の大きなメリットの一つです。

故障の確認方法とリビルド(復旧作業)の具体的な手順

故障の確認は、主にOSやRAIDコントローラーの管理ソフトウェアで行います。

定期的に状態をチェックする習慣が大切です。

ディスクが故障していることが確認できたら、以下の手順でリビルド(再構築)を行います。

  1. システムの電源を落とさずに(ホットスワップ対応の場合)、故障したディスクを新しい同容量以上のディスクに交換します。
  2. 交換後、システムが新しいディスクを認識すると、自動的にリビルドが開始されます。
  3. リビルド中は、正常なディスクから新しいディスクへデータが全てコピーされます。
  4. リビルドが完了すれば、再び冗長性が確保された正常な状態に戻ります。

リビルド中に起こりうるトラブルと注意点

リビルド作業は、正常に残っているディスクに対して非常に高い負荷をかけます。

特に、故障したディスクと同時期に購入・使用開始したディスクの場合、このリビルドの負荷が引き金となって、もう片方も故障してしまう「共倒れ」のリスクがあります。

このリスクを避けるためにも、リビルド作業を開始する前には、必ず正常なディスクのデータを別のストレージにバックアップしておくことを強く推奨します。

RAID1より安心?大切なデータを守るための代替案と正しいバックアップ方法

RAID1は万能ではありません。

本当に大切なデータを失わないためには、RAIDとは別の考え方でデータを保護する「バックアップ」が不可欠です。

ここでは、RAID1の代替案となりうる、より確実なデータ保護方法を紹介します。

基本は「3-2-1ルール」に基づいた定期的なバックアップ

データバックアップの基本原則として「3-2-1ルール」という考え方があります。

  • 3つのデータコピーを持つ(原本+2つのバックアップ)
  • 2種類の異なる媒体に保存する(例:内蔵HDDと外付けHDD)
  • 1つはオフサイト(遠隔地)に保管する(例:自宅とクラウド)

このルールに従うことで、機器の故障、操作ミス、災害など、さまざまなリスクからデータを守ることができます。

手動でも簡単!複数の外付けHDD/SSDへ時間差でコピーする方法

最もシンプルで効果的な方法の一つが、複数の外付けストレージを用意し、手動で定期的にデータをコピーすることです。

ポイントは「時間差」を設けることです。

例えば、1週間おきに別の外付けHDDにバックアップを取るようにすれば、ファイルを誤って削除してしまっても、1週間前の状態に戻すことができます。

これはリアルタイムで同期してしまうRAID1では不可能なデータ保護方法です。

クラウドストレージを活用した自動バックアップ

Google DriveやDropbox、OneDriveといったクラウドストレージサービスを利用するのも非常に有効です。

多くのサービスには、指定したフォルダを自動で同期・バックアップする機能があります。

インターネット経由でデータが遠隔地のデータセンターに保管されるため、自宅のPCや外付けHDDが災害や盗難に遭ってもデータを守れるという大きなメリットがあります。

物理的な媒体の管理が不要になる点も魅力です。

【上級者向け】NASキットやメーカー独自の高信頼性機能(拡張ボリュームなど)も選択肢に

より高度なデータ管理を求めるなら、SynologyやQNAPといったメーカーが提供するNASキットの導入も選択肢になります。

これらは単なるファイルサーバー機能だけでなく、高度なバックアップ機能やスナップショット機能(特定の時点のファイル状態を記録する機能)を備えています。

また、アイ・オー・データ機器の「拡張ボリューム」のように、RAID1の弱点であるディスクの同時故障リスクを低減する独自技術を採用した製品もあり、より高いレベルでのデータ保護が可能です。

まとめ:RAID1は「止めない」ための技術。データの「消失」を防ぐにはバックアップが必須

この記事では、RAID1が「意味ない」と言われる理由から、その本当の役割、そしてバックアップとの違いについて詳しく解説しました。

RAID1は、ディスクの物理的な故障からシステムを守り、「稼働を止めない」ための優れた冗長化技術です。

しかし、ファイルの誤削除やウイルス感染といったトラブルには対応できず、バックアップの代わりにはなりません。

SSDの信頼性が向上した現在、個人用途でのRAID1の必要性は薄れています。

本当に大切なデータを「消失」から守るためには、RAID1を過信せず、「3-2-1ルール」に基づいた定期的なバックアップを別のシステムで構築することが最も重要です。

RAID1とバックアップ、それぞれの役割を正しく理解し、組み合わせて利用することで、鉄壁のデータ保護環境を構築できるでしょう。

  • RAID1はバックアップではなく冗長化技術である
  • 目的はHDD/SSD故障時にシステムを止めないこと
  • 使える容量はディスク1台分となり効率が悪い
  • ファイルの誤削除やウイルス感染は防げない
  • SSD自体の信頼性向上でRAID1の必要性は低下した
  • 書き込み速度は向上せず、むしろ遅くなることがある
  • ケース本体が壊れてもディスク単体でデータを取り出せる可能性が高い
  • 同時期に購入したディスクは同時に寿命を迎えるリスクがある
  • リビルド作業は残ったディスクに負荷をかけ共倒れのリスクを伴う
  • 真のデータ保護にはRAIDと別系統のバックアップが不可欠
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