QIDI TECH MAX3レビュー解説!価格・性能・評判を徹底網羅

近年、家庭用3Dプリンターの性能は目覚ましく向上していますが、その中でも特に注目を集めているのが、QIDI TECH社がリリースしたハイスペックモデル「QIDI TECH MAX3」です。

このプリンターは、最大600mm/sという驚異的な印刷速度、325mm四方という広大な造形サイズ、そしてABSやカーボンファイバーといった特殊な素材(エンジニアリングプラスチック)の印刷を可能にする恒温チャンバー機能を備えています。

まさに、家庭用でありながら産業用に匹敵するポテンシャルを秘めた一台と言えるでしょう。

しかし、その高性能さゆえに「価格はどれくらい?」「実際の印刷品質や使い勝手はどうなのか?」「自分のような初心者でも扱えるのか?」といった疑問や不安を感じる方も多いはずです。

この記事では、QIDI TECH MAX3のスペックや特徴を徹底的に解説するとともに、実際のユーザーからの評判や口コミを基にした客観的なレビューをお届けします。

購入後に後悔しないための重要な注意点も詳しく解説しますので、本格的な3Dプリンターを検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

QIDI TECH MAX3レビュー解説:特徴とスペック

QIDI TECH MAX3の主な特徴

QIDI TECH MAX3は、単なる高速・大型プリンターというだけでなく、特に高機能なエンジニアリングプラスチック(エンプラ)の安定した造形を可能にする、数々の特徴的な機能を搭載しています。

これにより、趣味の造形から実用的なパーツ製作まで、幅広いニーズに応えることができます。

65℃の恒温チャンバー機能

ABSやASA、PC(ポリカーボネート)といったフィラメントは、印刷中に冷却される過程で収縮し、「反り」や「層間剥離」といった問題が発生しやすいという弱点があります。

MAX3は、庫内を最大65℃に保つことができるアクティブヒーター付きの恒温チャンバーを搭載しています。

これにより、造形物全体を均一な温度に保ちながら印刷を進めることができ、熱収縮による変形を劇的に抑制します。

この機能のおかげで、これまで難易度が高いとされてきたエンプラ素材でも、安定した高品質な造形が可能になります。

350℃対応高温ノズルと硬化鋼ノズルの標準付属

一般的な3Dプリンターのノズル温度は260℃程度までですが、MAX3は最大350℃まで対応する高温ホットエンドを搭載しています。

これにより、ナイロンやPCなど、より高い温度を必要とするフィラメントも使用可能です。

さらに、標準で「銅合金ノズル」に加えて、カーボンファイバーやガラスファイバーが含まれた「研磨材入りフィラメント」に対応するための「硬化鋼ノズル」が付属します。

これらのフィラメントは非常に硬く、通常の真鍮ノズルではすぐに摩耗してしまいますが、硬化鋼ノズルであれば問題なく印刷できます。

つまり、MAX3は箱出しの状態で、非常に幅広い種類のフィラメントに対応できるのです。

CoreXY構造とKlipperファームウェア

高速かつ精密な動作を実現するために、MAX3は「CoreXY構造」を採用しています。

これは、2つのモーターが協調してX軸とY軸を駆動する方式で、印刷ヘッドの移動に伴う慣性を低減し、高速動作時の振動を抑える効果があります。

また、ファームウェアにはオープンソースで評価の高い「Klipper」を採用。

これにより、共振補正(入力シェーピング)などの高度な制御が可能となり、高速印刷時でも綺麗な表面品質を維持します。

Klipperは拡張性も高いため、今後の機能追加やカスタマイズにも期待が持てます。

QIDI TECH MAX3のスペック詳細

QIDI TECH MAX3は、その特徴的な機能群を支えるために、全体的に高いレベルでバランスの取れたハードウェアスペックを備えています。

大型造形と高速印刷を安定して実現するための、堅牢な設計思想が見て取れます。

以下に、その詳細なスペックを一覧表にまとめました。

項目仕様
プリント方式FDM(熱溶解積層方式)
本体サイズ553(W) × 553(D) × 601(H) mm
本体重量約24.5 kg (公式情報) / 約38kg (販売サイト情報) ※情報に差異あり
構造CoreXY、オールメタルフレーム
造形サイズ325(W) × 325(D) × 315(H) mm
印刷速度最大 600mm/s
加速度最大 20,000mm/s²
ノズル温度最大 350℃
ヒートベッド温度最大 120℃
チャンバー温度最大 65℃ (アクティブヒーター搭載)
対応フィラメントPLA, ABS, ASA, PETG, TPU, PC, ナイロン, カーボン/ガラス繊維強化ポリマー等
ノズル銅合金ノズル、硬化鋼ノズル (0.4mm径)
レベリング全自動ベッドレベリング
ファームウェアKlipper
データ転送Wi-Fi, LAN, USBメモリ
ディスプレイ5インチ タッチスクリーン
その他機能フィラメント切れ検知、停電復帰、チャンバー循環ファン、活性炭フィルター

このスペックで特に注目すべきは、大型の造形サイズと高速印刷性能を両立させている点です。

また、それを支えるためのオールメタルフレームやダブルZ軸構造、そして多様なフィラメントに対応するための高温ノズルと恒温チャンバー機能が、このプリンターの価値を大きく高めています。

QIDI TECH MAX3の大きな造形サイズ

QIDI TECH MAX3の最大の魅力の一つは、その広大な造形サイズです。

最大で325mm × 325mm × 315mmまでのオブジェクトを印刷することが可能で、これは家庭用3Dプリンターのカテゴリにおいては最大クラスに属します。

この大きなビルドボリュームが、ユーザーの創造性をどのように解放するのか、具体的なメリットを見ていきましょう。

1. 大規模モデルの一体造形

例えば、コスプレ用のヘルメットやアーマーパーツ、実用的な収納ボックス、大型のドローンフレームなど、従来であれば複数のパーツに分割して印刷し、後で接着する必要があったような大きなオブジェクトも、MAX3なら一体で造形できます。

これにより、パーツの接着やパテ埋め、研磨といった後処理の手間が大幅に削減され、強度と見栄えの両方で優れた成果物を得ることができます。

2. 複数のパーツの同時生産

大きなビルドプレートは、多数の小さなパーツを一度に並べて印刷する「バッチ生産」にも非常に有効です。

例えば、自作のボードゲームの駒や、機械の交換部品などをまとめて生産する際に、印刷開始から完了までのサイクルを効率化し、生産性を大幅に向上させることができます。

3. 設計の自由度の向上

造形サイズの制約が少なくなることで、設計段階での自由度が格段に上がります。

「このサイズに収めなければならない」という制約から解放され、より理想的な形状や機能を持ったデザインを追求することが可能になります。

このように、QIDI TECH MAX3の大きな造形サイズは、単に大きなものが作れるというだけでなく、作業効率の向上とクリエイティブな可能性の拡大に直結する、非常に価値のある特徴なのです。

QIDI TECH MAX3の価格

QIDI TECH MAX3は、その産業用グレードに匹敵する豊富な機能を搭載しているため、価格も家庭用3Dプリンターの中ではハイエンドクラスに位置づけられます。

Amazonなどのオンラインストアでの販売価格は、おおむね「13万円台」で推移しています。

この価格を、他の人気3Dプリンターと比較してみましょう。

  • エントリーモデル (例: Creality Ender-3 V3 KEなど): 3万円〜5万円台。基本的な機能は備えているが、エンクロージャーや高速印刷機能はないことが多い。
  • ミドルレンジ高速機 (例: Bambu Lab P1S, Creality K1など): 8万円〜12万円台。高速印刷やエンクロージャーは搭載しているが、恒温チャンバー機能やMAX3ほどの大型造形サイズはない場合が多い。
  • QIDI TECH MAX3: 13万円台。高速印刷、大型造形、恒温チャンバー、高温ノズルなど、ほぼ全ての機能を網羅。

このように見ると、MAX3の価格は決して安価ではありません。

しかし、その価格には、ABSやナイロン、カーボンファイバーといった特殊なフィラメントを安定して造形するための「65℃恒温チャンバー」や「350℃高温ノズル」といった、他社の同価格帯モデルにはない付加価値が含まれています。

もし、これらの機能を別途オプションで追加しようとすれば、数万円以上の追加投資が必要になるでしょう。

特に、強度や耐熱性が求められる実用的なパーツを製作したいユーザーにとって、これらの機能は必須とも言えます。

そう考えると、QIDI TECH MAX3は、初期投資は高くとも、その汎用性と性能から見れば、非常にコストパフォーマンスに優れた選択肢であると評価できます。

QIDI TECH MAX3レビュー解説:性能と評価

QIDI TECH MAX3の印刷速度

QIDI TECH MAX3の性能を象徴するのが、最大「600mm/s」という圧倒的な印刷速度です。

これは、従来の一般的な3Dプリンター(50mm/s〜150mm/s程度)と比較して、数倍から10倍以上も速い数値であり、造形時間を劇的に短縮します。

例えば、3Dプリンターの性能評価でよく用いられるベンチマークモデル「3DBenchy(船)」の印刷時間は、通常であれば1時間半から2時間かかるところを、MAX3ではわずか16〜17分で完了させることができます。

この驚異的な速度は、前述した「CoreXY構造」と「Klipperファームウェア」の採用によって実現されています。

CoreXY構造が高速動作時の振動を抑え、Klipperファームウェアが共振補正(入力シェーピング)によって振動に起因する印刷品質の低下(ゴースティング)を防ぎます。

これにより、速いだけでなく、綺麗な造形を両立させているのです。

ただし、この「600mm/s」という数値はあくまで理論上の最大値であり、常にこの速度で印刷が行われるわけではないことを理解しておく必要があります。

実際の印刷速度は、使用するフィラメントの種類、ノズル温度、モデルの形状の複雑さ、積層ピッチなどの設定によって変動します。

特に、外壁などの品質が求められる部分は速度を落として丁寧に印刷し、内部の充填(インフィル)部分で速度を上げるなど、スライサーソフトが自動で速度を調整します。

それでもなお、トータルでの印刷時間が従来機よりも大幅に短縮されることは間違いありません。

試作品を何度も作り直したい場合や、短納期での製作が求められる場面において、この印刷速度は絶大なアドバンテージとなるでしょう。

QIDI TECH MAX3の評判・口コミ

QIDI TECH MAX3の実際のユーザーからの評価は、その高性能さを裏付ける肯定的な意見が多い一方で、いくつかの課題点も指摘されています。

購入を検討する上で、これらのリアルな声は非常に参考になります。

高く評価されている点

  • 印刷速度と品質の両立: 「とにかく印刷が速いのに、仕上がりが驚くほど綺麗」「高速でも寸法精度が良く、±0.02mm程度に収まる」など、速度と品質のバランスを絶賛する声が多数を占めます。
  • 安定性と剛性: 「CoreXY構造と重い本体のおかげで、高速動作でも振動が少なく安定している」「ABSのような反りやすい素材も、恒温チャンバーのおかげで失敗なく出力できる」といった、安定した造形を評価する意見も多いです。
  • サポート体制の評価: 「トラブル時にサポートに連絡したら、迅速かつ丁寧に対応してくれた」「英語でのやり取りになるが、翻訳アプリを使えば問題なく解決できた」など、メーカーのサポート体制を評価する声が目立ちます。これは海外メーカー製品を選ぶ上で大きな安心材料となります。
  • 多様なフィラメントへの対応力: 「カーボンファイバー入りのフィラメントも問題なく印刷できた」「高温ノズルのおかげで、これまで扱えなかった素材に挑戦できる」といった、汎用性の高さを喜ぶ声もあります。

指摘されている注意点・不満点

  • 本体の大きさと重量: 「想像以上に大きくて重い。搬入と設置が大変だった」「設置場所には十分なスペースと頑丈な台が必要」という意見は、ほぼ全てのレビューで見られます。
  • 動作音: 「冷却ファンの音がかなり大きい。静かな環境での使用には向かない」という騒音に関する指摘も多いです。
  • 初期設定の注意点: 「PEIシートを敷かずにレベリングをすると、ノズルがベッドに激突して傷がつく」という、マニュアルにはない重要な注意点がユーザーから報告されています。
  • 初期不良や個体差: 「初期不良で部品交換が必要だった」「ネジの締め付けが甘い箇所があった」など、品質のばらつきに関する報告も少数ながら存在します。
  • オプションパーツ: 「AIカメラが標準搭載ではないのが残念」「純正のオプションパーツがもう少し安いと嬉しい」といった意見も見られます。

これらの評判から、MAX3はハードウェアの基本性能とサポート体制が高く評価されている一方で、設置環境や初期設定、静音性など、ユーザー側で工夫や注意が必要な側面もあることがわかります。

QIDI TECH MAX3のおすすめな点

QIDI TECH MAX3は、その多機能性と高性能さから、特に「実用的なモノづくり」を目指すユーザーにとって、非常に強力なツールとなります。

このプリンターがどのような方に特におすすめできるのか、そのポイントをまとめてみましょう。

1. 高強度・高耐熱な実用パーツを製作したい方

自動車やバイクのカスタムパーツ、ドローンのフレーム、治具、工具など、厳しい環境下で使用される実用的な部品を製作したい方には、MAX3が最適です。

65℃の恒温チャンバーと350℃の高温ノズルにより、ABS、ASA、PC、ナイロン、さらにはカーボンファイバー強化フィラメントといった、高い強度と耐熱性を持つエンジニアリングプラスチックを安定して造形できます。

これは、一般的な家庭用3Dプリンターでは困難な領域です。

2. 大型の造形物を一度に出力したい方

コスプレの衣装や小道具、建築模型、等身大に近いオブジェクトなど、大きな造形物を分割せずに作りたいクリエイターにとって、325mm四方の広大な造形エリアは大きな魅力です。

分割・接着の手間を省き、より完成度の高い作品を効率的に生み出すことができます。

3. 試作のスピードを重視するプロ・セミプロユーザー

製品開発の現場で、アイデアを素早く形にして検証したいエンジニアやデザイナーにとって、最大600mm/sの印刷速度は開発サイクルを大幅に短縮します。

「午前中に設計したデータを、午後には手に取って確認する」といったスピーディーな開発フローを実現可能です。

4. 3Dプリンターのステップアップを考えている方

すでにEnder-3のようなエントリーモデルを持っていて、「もっと速いプリンターが欲しい」「ABSや特殊素材にも挑戦したい」と考えているユーザーのステップアップ機として、MAX3は非常に満足度の高い選択肢となるでしょう。

自動レベリングやKlipperファームウェアなど、使いやすさと拡張性を両立した機能が、次のレベルのモノづくりをサポートします。

QIDI TECH MAX3の注意点

QIDI TECH MAX3は非常に高性能で魅力的な3Dプリンターですが、その導入を成功させるためには、いくつかの重要な注意点を理解しておく必要があります。

これらは主に、その大きなサイズと高性能に起因するものです。

1. 設置場所と搬入経路の確保

これは最も重要な注意点です。

本体サイズが55cm四方以上、重量も30kg近く(梱包状態では37kg)あるため、まず設置するための頑丈で水平な台と、十分な作業スペースが必要です。

さらに、本体背面からフィラメントを供給するため、壁にぴったりとつけることはできず、ある程度の背面スペースも必要になります。

購入前には、本体寸法だけでなく、梱包箱のサイズ(約65cm四方)を確認し、玄関から設置部屋までの搬入経路(廊下やドアの幅)を必ず測定してください。

2. 初回セットアップ時のノズル激突リスク

複数のユーザーから、「ビルドプレートにPEIシートを敷かずにオートレベリングを開始すると、センサーがプレートを検知できず、ノズルがビルドプレートに激突する」という重大な不具合が報告されています。

マニュアルには明記されていない場合があるため、最初の電源投入時には、必ずPEIシートが正しく設置されていることを確認してから、レベリング作業に進む必要があります。

万が一激突してしまった場合は、慌てずに本体の電源をオフにしてください。

3. 動作音への対策

レビューでも多く指摘されている通り、特に冷却ファンの動作音はかなり大きいです。

静かなリビングや寝室での使用は現実的ではありません。

可能であれば、作業部屋やガレージなど、音が気にならない場所に設置するのが理想です。

それが難しい場合は、印刷時間を日中に限定するなどの工夫が必要になるでしょう。

4. 電源と消費電力

MAX3は900Wという大容量の電源ユニットを搭載しており、特にヒーター類が作動する際の消費電力は大きくなります。

同じコンセントから他の多くの電化製品の電源を取っている場合、ブレーカーが落ちる可能性も考慮する必要があります。

タコ足配線は避け、壁のコンセントから直接電源を取ることをお勧めします。

これらの注意点を事前に把握し、対策を講じることで、QIDI TECH MAX3の持つポテンシャルを最大限に引き出し、快適な3Dプリントライフを送ることができるでしょう。

まとめ:QIDI TECH MAX3レビュー解説!購入前に知るべきポイント

  • QIDI TECH MAX3は高速・大型造形が可能なFDM方式3Dプリンターである
  • 最大600mm/sの印刷速度と325mm四方の広大な造形エリアを持つ
  • 65℃の恒温チャンバー機能によりABSなど反りやすい素材の安定造形が可能である
  • 350℃対応の高温ノズルと硬化鋼ノズルが付属し、エンプラ素材にも対応する
  • CoreXY構造とKlipperファームウェアにより高速かつ高品質な印刷を実現する
  • 価格は約13万円台で、機能性を考慮するとコストパフォーマンスは高い
  • 評判は「速度・品質・サポート」で高評価だが、「大きさ・騒音・初期設定」には注意が必要である
  • 設置には十分なスペースと頑丈な台、そして搬入経路の確認が必須である
  • PEIシートを敷かずにレベリングするとノズルが激突する危険性がある
  • 高強度な実用パーツや大型モデルを製作したい中〜上級者におすすめの機種である
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