近年、オーディオ愛好家の間で大きな注目を集めているR2R DAC、それが「Musician Pegasus」です。その最大の魅力は、手の届きやすい価格帯でありながら、数十万円クラスのハイエンド機に匹敵するとも言われる卓越したサウンドクオリティにあります。一般的なΔΣ(デルタシグマ)方式のDACとは一線を画す、自然でアナログライクな響きは、多くのユーザーを魅了してやみません。
しかし、いざ購入を検討しようとすると、「実際の音質はどうなのか?」「NOSモードとOSモードの違いは?」「自分のシステムに合うだろうか?」といった疑問や、R2R DACならではの注意点が気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、Musician Pegasusの性能を徹底的に解き明かすため、その技術的な特徴やスペックから、実際のユーザーによる詳細なレビュー、良い評判・注意点まで、あらゆる情報を網羅的に解説します。NOS/OSモードの比較試聴レビューや、客観的な測定データも交えながら、多角的にその実力に迫ります。
Musician Pegasusの購入を迷っている方、R2R DACの世界に足を踏み入れたいと考えている方にとって、本記事が確かな判断材料となるはずです。その魅力と実力を、ぜひ最後までご覧ください。
Musician Pegasusのレビュー解説|特徴とスペック
musician pegasusの主な特徴
Musician Pegasusは、その価格帯において卓越した音響性能を提供することで、多くのオーディオ愛好家から注目を集めているR2R DACです。
このDACの心臓部には、独自に設計された24ビットR2R(抵抗ラダー)ネットワークと6ビットDSDデコード機能を組み合わせたアーキテクチャが採用されています。
これにより、一般的なΔΣ(デルタシグマ)方式のDACチップとは一線を画す、自然でアナログライクなサウンドを実現しています。
また、デジタル信号処理はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を介して行われ、信号の純度を最大限に高めています。
FIFO(First-In First-Out)バッファリング技術により、入力信号のジッター(時間軸の揺らぎ)を効果的に低減し、安定したデータ転送を可能にしている点も大きな特徴です。
電源部にもこだわりが見られ、低ノイズの電源を搭載することで、オーディオ回路へのクリーンな電力供給を実現し、S/N比の向上に貢献しています。
さらに、USBおよびI2S入力では最大でDSD1024、PCM1536kHzという非常に高いサンプリングレートに対応しており、ハイレゾ音源のポテンシャルを余すところなく引き出すことが可能です。
これらの技術的な特徴が組み合わさることで、Musician Pegasusは、解像度の高さと音楽的な表現力を両立した、魅力的なサウンドを提供します。
musician pegasusのスペック詳細
Musician Pegasusの技術仕様は、その高い性能を裏付けるものとなっています。
詳細なスペックを理解することで、ご自身のオーディオ環境との適合性を判断する助けになるでしょう。
以下に主なスペックを表でまとめました。
項目 | スペック |
---|---|
アーキテクチャ | 24BIT R2R + 6BIT DSD (32ステップFIRフィルター) |
周波数応答 | 10Hz〜60KHz |
THD+N | 0.002% |
S/N比 | 123dB (A-weighted) |
ダイナミックレンジ | >120dB |
サンプリングモード | Non-Oversampling (NOS) / Oversampling (OS) |
デジタル入力 | Coaxial x1, Optical x1, USB x1, AES/EBU x1, I2S (HDMI) x1 |
アナログ出力 | RCA x1 (2.2Vrms, 625Ω), XLR x1 (4.4Vrms, 1250Ω) |
対応PCM | 全入力: 24bit / 44.1-192KHz, USB/I2S: 最大1536KHz |
対応DSD | 全入力: DSD64 (DoP), USB/I2S: 最大DSD1024 |
電源要件 | 110-240VAC, 50/60Hz |
消費電力 | ≤20W |
サイズ (W×D×H) | 280 x 250 x 50 mm |
重量 | 3.9 kg |
特筆すべきは、豊富な入力端子と、USB/I2S入力における広範なハイレゾフォーマットへの対応です。
これにより、PCオーディオからCDトランスポートまで、様々なデジタルソースを接続できます。
ただし、I2S接続には業界標準のピン配列が存在しないため、接続する機器との互換性を事前に確認する必要があります。
Pegasusには8つのI2Sモード設定機能が搭載されており、多くの機器との互換性が図られていますが、万能ではありません。
また、アナログ出力はRCA(アンバランス)とXLR(バランス)の両方を備えていますが、これらは内部で共有されているため、同時接続は音質劣化の原因となる可能性があり、推奨されていません。
設計上、真のバランスDACであるため、可能な限りXLR出力を使用することで、その性能を最大限に引き出すことができます。
NOSとOSモードの比較レビュー
Musician Pegasusの音質を語る上で欠かせないのが、NOS(Non-Oversampling)モードとOS(Oversampling)モードの切り替え機能です。
この二つのモードは、デジタル信号の処理方法が異なり、それぞれに独特の音質的特徴があります。
NOSモードの音質
NOSモードは、入力されたデジタル信号をアップサンプリングせずに、そのままアナログ信号に変換する方式です。
このモードの最大の魅力は、デジタルフィルターによる加工が一切ないため、非常に素直で生々しいサウンドが得られる点にあります。
多くのレビューで指摘されているように、NOSモードの音は暖かく、柔らかい肌触りを持ちながら、しっかりとしたメリハリも感じられます。
「空気感」や「湿度感」といった表現がしっくりくるような、独特の雰囲気を醸し出し、音の実体感が際立ちます。
特に、ボーカルや楽器の数が少ないシンプルな構成の音楽では、その魅力が最大限に発揮され、まるで羽毛で撫でられるような心地よい響きに包まれるでしょう。
OSモードの音質
一方、OSモードは、入力信号を内部で高次のサンプリングレートに変換(オーバーサンプリング)してからD/A変換を行います。
この処理により、NOSモードで感じられた、音数が多い楽曲での若干の混濁感が解消され、音の分離が向上し、見通しの良いクリアなサウンドになります。
ただし、音色はNOSモードに比べてやや硬質になる傾向があります。
モニターライクなクールで硬質な鳴り方になり、RME ADI-2 DACのようなサウンドに近付くと評するレビューも見られます。
この硬質なキャラクターが、楽曲によっては説得力を増す場合もありますが、Pegasus本来の持ち味である「まろやかさ」を重視するなら、NOSモードに軍配が上がるかもしれません。
結論として、NOSモードとOSモードのどちらが優れているということではなく、聴く音楽のジャンルや個人の好みによって最適なモードは異なります。
静かなボーカル曲や室内楽はNOSモードで、音数の多いオーケストラやロックはOSモードで、といったように使い分けることで、Musician Pegasusの持つ多様な魅力を存分に楽しむことができます。
musician pegasusの音質レビュー
Musician Pegasusの全体的な音質は、多くのユーザーから高く評価されており、その価格帯を超えるパフォーマンスを持つと言われています。
音質のキーワードは「自然さ」「立体感」「音楽的な響き」です。
まず、このDACの最も際立った特徴は、R2R方式ならではの自然でアナログ的な音色です。
一般的なΔΣ方式のDACが持つ、いわゆる「デジタル臭さ」が少なく、非常に滑らかで聴きやすいサウンドを提供します。
特にNOSモードでは、音源が持つ情報をありのままに引き出すような素直さがあり、長時間聴いていても疲れにくいという意見が多く見られます。
音場表現も秀逸です。
左右だけでなく、奥行き方向にも広く深い立体的なサウンドステージを描き出します。
ボーカルは前に出てきて存在感を放ち、楽器の一つ一つの位置関係が明確に感じられるため、まるで目の前で演奏しているかのような臨場感を味わうことができます。
エージング(バーンイン)による音質変化が大きいことも、この製品の特筆すべき点です。
メーカーは300時間のエージングを推奨しており、多くのユーザーが、使い込むほどに音の硬さが取れ、滑らかさや深みが増していくと報告しています。
購入直後の音だけで判断せず、じっくりと時間をかけて鳴らし込むことで、Pegasus本来の性能が解放されるでしょう。
他のDACとの比較では、例えばRME ADI-2 DACと比較した場合、ADI-2がクールでモニター的なサウンドであるのに対し、Pegasusはより暖かく、音楽的な響きを持っていると評されています。
解像度や情報量といった基本的な性能は同等レベルにありながら、音の「聴かせ方」に違いがあり、これがPegasusの大きな魅力となっています。
Musician Pegasusのレビュー解説|評判と注意点
musician pegasusの良い評判・口コミ
Musician Pegasusは、国内外のオーディオコミュニティやECサイトで数多くの肯定的なレビューを獲得しています。
ここでは、実際に使用したユーザーからの良い評判や口コミをいくつか紹介します。
価格を超えたサウンドクオリティ
最も多く見られる意見は、「価格以上の価値がある」というコストパフォーマンスの高さに関するものです。
「10万円台で購入できるなら買い」「30万円クラスの音がする」といった声が挙がっており、ハイエンドオーディオの入り口として非常に高く評価されています。
その音質は、解像度や情報量だけでなく、音楽の表現力において、より高価なDACに匹敵すると考えられています。
立体的で広大な音場
音場の広さと立体感も、多くのユーザーが絶賛するポイントです。
「スピーカーの存在が消える」「目の前に立体空間ができる」といったレビューがあり、左右だけでなく、高さや奥行き方向にも広がる三次元的なサウンドステージを体験できます。
これにより、音楽への没入感が格段に高まります。
自然で音楽的な音色
R2R方式ならではの自然でアナログライクな音色も、高く評価されています。
「最近のよくあるDACのカッチリした音作りを好まなければ、選んでみても良い」「真空管にも通ずるものがありそう」といった意見があり、解像度を保ちつつも、聴き疲れしない滑らかなサウンドが好まれています。
特にボーカルや弦楽器の表現力に定評があり、艶やかで密度のある音を奏でます。
NOSモードの魅力
前述の通り、デジタルフィルターを介さないNOSモードの音質は、このDACの大きな魅力の一つです。
「NOSモードでは少しウォーム寄りになる」「羽毛で優しく撫でるような心地良さがある」など、その自然で心地よい響きに魅了されるユーザーが後を絶ちません。
これらの評判から、Musician Pegasusが単にスペックが高いだけでなく、音楽を深く楽しむための表現力を備えた優れたDACであることがうかがえます。
musician pegasusのおすすめな点
Musician Pegasusは、その優れた音質と機能性から、幅広いオーディオファンにおすすめできる製品ですが、特に以下のような方には最適な選択肢となるでしょう。
R2R DACに初めて挑戦する方
R2R方式のDACは、その自然な音質から根強い人気がありますが、高価な製品が多いのが実情です。
Pegasusは、比較的手の届きやすい価格でありながら、本格的なディスクリートR2R DACのサウンドを体験できるため、R2R入門機として非常に優れています。
ΔΣ方式のDACとは異なる、音楽的な響きの豊かさにきっと驚くはずです。
自然で生々しいサウンドを求める方
もしあなたが、分析的でクールなサウンドよりも、暖かく、空気感のある生々しいサウンドを好むのであれば、Pegasusはまさにうってつけです。
特にNOSモードで聴く音楽は、デジタル音源であることを忘れさせるほどの自然さと実体感を備えています。
ボーカルやアコースティック楽器の再生を重視する方には、特におすすめします。
システムの拡張性を楽しみたい方
Pegasusは、単体で完結するだけでなく、外部機器との連携によってさらなる音質向上を図れる拡張性の高さも魅力です。
例えば、PCオーディオ環境であれば、HQ Playerのような高品質なアップサンプリングソフトウェアを導入することで、内蔵のOSモードとは異なる、より洗練されたサウンドを追求できます。
また、DDC(デジタル・トゥ・デジタル・コンバーター)を追加してI2S接続を試すなど、様々な使いこなしによって音が変化する様は、オーディオの探求心をくすぐるでしょう。
バランス接続を活かしたい方
前述の通り、Pegasusは真のバランス設計を持つDACです。
そのため、XLRバランス出力を備えたヘッドホンアンプやプリアンプをお持ちの方であれば、その性能を最大限に引き出すことができます。
バランス接続によるS/N比の向上や、チャンネルセパレーションの改善は、音質に明確なメリットをもたらします。
musician pegasusの注意点
Musician Pegasusは非常に優れたDACですが、購入・使用する上でいくつか知っておくべき注意点があります。
これらを事前に理解しておくことで、後悔のないオーディオライフを送ることができるでしょう。
長時間のエージングが必要
多くのレビューで指摘されている通り、Pegasusは本来の性能を発揮するまでに長時間の慣らし運転(エージングまたはバーンイン)を必要とします。
メーカーは300時間(約12.5日)を推奨しており、この期間は電源を入れたまま、あるいはスタンバイ状態で通電を続ける必要があります。
購入直後の音は本来の性能ではないため、焦らずじっくりと育てていく心構えが大切です。
ボリューム機能がない単体DAC
Pegasusにはボリューム調整機能が搭載されていません。
これは純粋な単体DACであるためで、使用するには別途プリアンプや、ボリューム付きのヘッドホンアンプ、あるいはプリメインアンプが必要です。
PCオーディオの場合はOS側で音量調整も可能ですが、音質面を考慮すると、やはり物理的なボリュームを持つ機器との組み合わせが望ましいでしょう。
セッティングによる音質変化
本体の設置方法によっても音質が変化する可能性があります。
特に、電源ユニットとDACユニットの2筐体を重ねて設置(スタック)すると、電源トランスの振動や磁気的な干渉により、解像度や分離感が低下するとの報告があります。
スペースが許すのであれば、両ユニットを離して設置することで、よりクリアなサウンドが得られる可能性が高いです。
また、脚が3点支持(前2、後1)であるため、特に背面のケーブルを抜き差しする際に筐体が揺れやすい点にも注意が必要です。
I2S接続の互換性
I2Sは高音質なデジタル接続方式ですが、統一された規格がないため、機器間の互換性に問題が生じることがあります。
Pegasusには8つのI2Sモードが用意されていますが、すべての機器との接続が保証されているわけではありません。
I2S接続を主目的として購入する場合は、お手持ちの機器との互換性を事前に販売店やメーカーに確認することをおすすめします。
電源ケーブルが付属しない場合がある
販売店やロットによっては、電源ケーブルが付属しない場合があります。
その際は、別途用意する必要があります。
また、電源電圧はAC110-240Vのワールドワイド対応ですが、日本国内の100V環境でも問題なく動作します。
musician pegasusの測定値(ベンチマーク)
オーディオ製品の評価において、主観的な聴感レビューだけでなく、客観的な測定データも重要な判断材料となります。
Musician Pegasusは、海外の著名なオーディオ測定サイト「Audio Science Review」などで詳細なベンチマークテストが行われており、その結果は非常に良好です。
SINAD(信号対雑音・歪み比)
SINADは、DACの総合的な性能を示す重要な指標の一つで、数値が高いほどクリーンな信号を生成できることを意味します。
Pegasusのバランス出力(XLR)で約110dBという優れた値を記録しています。
これは、多くのハイエンドDACに匹敵するレベルであり、技術的な完成度の高さを証明しています。
R2R方式のDACとしては、特に優秀な部類に入ります。
ダイナミックレンジ
ダイナミックレンジは、最も小さい音と最も大きい音の差を表現できる能力を示します。
Pegasusはこの項目でも約123dB(A-weighted)というスペック通りの高い数値を記録しており、微細な音のニュアンスからパワフルなクライマックスまで、幅広い音楽表現に対応できる能力を持っていることがわかります。
ジッター性能
ジッターはデジタル信号の時間軸の揺らぎであり、音質劣化の大きな原因となります。
Pegasusは、USB入力、同軸入力ともに非常に低いジッターレベルを達成しており、クリーンで安定したD/A変換が行われていることを示しています。
これは、内蔵されたFIFOバッファや高精度なクロックが効果的に機能している証拠です。
測定値と音質の関係
これらの優れた測定値は、Musician Pegasusが技術的に非常によく設計されたDACであることを裏付けています。
しかし、測定値の良さが、必ずしもすべての人の好みの音質と直結するわけではない点には注意が必要です。
例えば、R2R方式特有の倍音構成や、NOSモードの特性などは、単純な測定値だけでは表現しきれない「音楽的な魅力」に繋がっている場合があります。
結論として、Musician Pegasusは客観的な測定データにおいても高い性能を示しており、その上でR2R方式ならではの魅力的な音質を両立している、非常にバランスの取れた製品であると言えるでしょう。
まとめ:Musician Pegasus レビュー解説
- Musician PegasusはR2R + DSDアーキテクチャを採用したDACである
- 自然でアナログライクなサウンドが最大の特徴である
- NOSモードとOSモードの切り替えで音質の変化を楽しめる
- NOSモードは素直で生々しく、OSモードはクリアで分離が良い
- 音場は広く立体的で、優れた臨場感を提供する
- 性能を発揮するには300時間程度の長時間エージングが推奨される
- ボリューム機能がないため、別途アンプが必要である
- セッティング(重ね置きなど)によって音質が変化する可能性がある
- 客観的な測定値(SINADなど)も非常に良好である
- 価格を超えるサウンドクオリティでコストパフォーマンスが高いと評価されている