イヤホンのアップグレードを検討する際、1万円以下の価格帯で圧倒的なコストパフォーマンスを誇る製品に出会うと、心が躍るものです。
特に、美少女パッケージと妥協のない音作りで知られる水月雨(MOONDROP)の新作となれば、その期待値はさらに高まるでしょう。
しかし、今回発売された「蘭II(LAN 2)」には「REF」と「POP」という2つのバリエーションが存在するため、どちらを選べば自分の好みの音楽をより楽しめるのか、迷ってしまう方も多いはずです。
この記事では、MoonDrop 水月雨 蘭II LAN 2 REFの音質や特徴を、対となるPOPモデルとの比較を交えて徹底的にレビュー解説します。
それぞれのモデルが持つ独自の魅力や、前作からの進化ポイント、そして海外レビュアーの評価まで網羅しました。
あなたの音楽ライフをより豊かにする、最適な一本を見つける手助けとなれば幸いです。
水月雨 (MOONDROP) 蘭II LAN 2 REF レビュー:2つのモデルの違いとは?
結論から申し上げますと、蘭II LAN 2の「REF」と「POP」の最大の違いは、搭載されているドライバーや筐体素材ではなく、目指した音の方向性(チューニング)にあります。
外観上のデザインは異なりますが、基本的なハードウェア性能は同一です。
そのため、どちらが上位・下位という関係ではなく、リスナーの好みや聴くジャンルによって選択が分かれる兄弟機と言えるでしょう。
蘭II REFとPOPの決定的な違いは「チューニング」の方向性
蘭II REF(Reference)と蘭II POPの決定的な違いは、周波数特性のチューニングアプローチです。
REFモデルは、その名の通り「リファレンス(基準)」を目指したサウンド設計がなされています。
中高域の表現力に重点を置いており、音の立ち上がりが速く、クリアで繊細な描写を得意とします。
一方でPOPモデルは、よりリスニングライクな楽しさを追求したチューニングです。
中低域に厚みを持たせ、ボーカルやベースラインを心地よく聴かせる、温かみのあるサウンドに仕上がっています。
同じドライバーを使用しながらも、ここまでキャラクターの異なる2つの音を用意した点に、水月雨の開発力の高さがうかがえます。
スペック比較一覧:ドライバー構成や付属品に違いはある?
両モデルのスペックを比較すると、内部構造や付属品は共通していることがわかります。
以下の表に主な仕様をまとめました。
| 項目 | 蘭II REF / POP 共通仕様 |
| ドライバー | 10mm デュアルチェンバー高性能ダイナミックドライバー |
| 振動板 | ガラスドーム複合振動板 |
| 再生周波数帯域 | 12Hz – 60kHz |
| 感度 | 118dB/Vrms (@1kHz) |
| インピーダンス | 30Ω ±15% (@1kHz) |
| コネクタ | 0.78mm 2Pin |
| プラグ | 4.4mm バランスプラグ(標準) |
| 付属品 | 3.5mm変換ケーブル、ポーチ、イヤーピース |
このように、ハードウェアとしての基礎体力は全く同じです。
純粋に「どのような音色が好みか」だけで選べるのは、ユーザーにとって非常に選びやすい構成と言えます。
発売日と価格:1万円以下で買えるハイコスパ機の実力
MoonDrop 蘭II LAN 2シリーズは、2025年11月27日に日本国内で発売されました。
市場価格はおよそ8,550円から9,500円程度で推移しており、1万円を切る価格設定となっています。
昨今の円安傾向や原材料費の高騰を考慮すると、ステンレス筐体に高品質なケーブルが付属してこの価格というのは、驚異的なコストパフォーマンスです。
特に、後述する4.4mmバランスケーブルが標準で付属している点を踏まえると、単なるエントリー機を超えた「ハイコスパ機」としての実力を十分に備えています。
【音質評価】蘭II REF (Reference) は高解像度でクリアなサウンド
蘭II REFの音質を一言で表すなら、「透き通るような高解像度サウンド」です。
原音に忠実であることを重視しており、音の輪郭をはっきりと描き出す能力に長けています。
音が団子にならず、一つひとつの音が分離して聴こえるため、モニターライクな聴き方を好む方には特におすすめです。
高音域・女性ボーカルの美しさと「透明感」の正体
REFモデルの最大の魅力は、突き抜けるような高音域と女性ボーカルの美しさにあります。
この透明感を生み出しているのは、新開発の「ガラスドーム複合振動板」の高い剛性と、歪みの少なさです。
女性ボーカルの息遣いや、ハイトーンの伸びが非常に滑らかで、曇りのないクリアな歌声を堪能できます。
決して線が細すぎるわけではなく、芯のある高音が空間に広がる感覚は、水月雨ブランドの真骨頂とも言えるでしょう。
クラシックや楽器演奏(インスト)に向いている理由
このREFモデルは、クラシック音楽や楽器主体のインストゥルメンタル楽曲との相性が抜群です。
理由は、中高域の楽器表現にこだわったチューニングが施されているためです。
バイオリンの弦が擦れる繊細なニュアンスや、ピアノの打鍵音の響き、金管楽器の煌びやかさなどがリアルに再現されます。
また、音場表現も比較的広く、オーケストラのような編成の大きな楽曲でも、各楽器の配置が手に取るようにわかる定位感の良さを持っています。
REFの注意点:楽曲によっては高域が鋭く感じる可能性
高い解像度と引き換えに、注意すべき点も存在します。
録音状態があまり良くない音源や、高域成分が多すぎる楽曲を聴く場合、音が鋭く刺さるように感じることがあります。
いわゆる「サ行の刺さり」や、シンバル音が金属的に響きすぎると感じる場面があるかもしれません。
ウォームで柔らかい音を好む方や、長時間のリラックスしたリスニングを目的とする場合は、聴き疲れする可能性がある点を考慮しておく必要があります。
蘭II POPモデルとの聴き比べ:リスニングライクな万能機
REFモデルに対し、蘭II POPモデルは「音楽を楽しく聴く」ことにフォーカスした万能機です。
分析的に音を聴くのではなく、リズムやグルーヴ感に身を委ねたい時には、こちらのモデルが適しています。
全体的に角が取れたマイルドな音作りで、長時間のリスニングでもストレスを感じさせません。
POPは低域の厚みと温かみがある「万人受け」サウンド
POPモデルの特徴は、REFよりも増量された低域の厚みと、全体を包み込むような温かみのある音色です。
低音がしっかりと土台を支えているため、音楽全体に迫力と安定感があります。
かといって、低音が他の帯域を邪魔するようなことはなく、ボーカルもしっかりと前に出てきます。
このバランスの良さは「万人受け」するサウンドであり、初めて本格的な有線イヤホンを購入する方にも安心しておすすめできる仕上がりです。
ロックやJ-POP、アニソンにはPOPモデルがおすすめな理由
ロック、J-POP、アニソンといった現代的なジャンルを聴くなら、POPモデルが断然おすすめです。
これらのジャンルでは、バスドラムのキック感やベースのドライブ感が楽曲のノリを決定づける重要な要素となります。
POPモデルの豊かな中低域は、こうしたビート感を損なうことなく、エネルギッシュに再生してくれます。
また、電子音が多用される楽曲でも、高域が刺さることなく適度な刺激として楽しめるため、楽しくノリ良く聴くことができます。
海外レビュアーの評価は?GizaudioなどがPOP版を支持する理由
海外の著名なオーディオレビュアーたちの間でも、蘭II POPモデルは高い評価を得ています。
例えば、Gizaudioのレビューでは、POPモデルが「優れたオールラウンダー」として推奨されています。
彼らがPOP版を支持する主な理由は、特定のジャンルを選ばない汎用性の高さと、自然なトーンバランスです。
REFモデルはやや楽曲を選ぶ傾向があるのに対し、POPモデルはどんなプレイリストでも破綻なく鳴らす安定感があり、それが「3.5点(5点満点中)」といった堅実な高評価につながっています。
前作「蘭-LAN」から何が進化した?スペックと特徴を徹底解説
今回の「蘭II」は、単なるマイナーチェンジではなく、明確なスペックアップを果たしています。
前作「蘭-LAN」もコストパフォーマンスの高いモデルでしたが、蘭IIではユーザーの要望を取り入れ、さらに使い勝手と音質を向上させました。
ここでは、具体的な進化ポイントを3つに絞って解説します。
最大のメリット:4.4mmバランスプラグ標準搭載&3.5mm変換付属
今回のモデルチェンジにおける最大のメリットは、標準ケーブルが「4.4mmバランスプラグ」仕様になったことです。
通常、この価格帯のイヤホンは3.5mmシングルエンドプラグが一般的であり、バランス接続を楽しむには別途ケーブルを購入する必要がありました。
蘭IIでは最初からバランス接続が可能であり、さらに3.5mm変換ケーブルも同梱されているため、一般的なスマホやPCでも問題なく使用できます。
これにより、追加投資なしで高音質なバランス駆動を体験できる点は、競合他社に対する強力なアドバンテージです。
新素材「ガラスドーム複合振動板」による解像度の劇的な向上
音質の核となるドライバー振動板には、新世代の「ガラスドーム複合振動板」が採用されました。
前作ではベリリウムメッキなどが採用されていましたが、今回は厚さわずか0.05mmのソリッドガラスドームを使用しています。
この素材は極めて高い剛性と軽量性を両立しており、高域の伸びと解像度が劇的に向上しました。
また、柔軟なエッジと組み合わせることで歪みを大幅に低減し、広いダイナミックレンジを実現しています。
装着感とビルドクオリティ:MIM製法ステンレス筐体の質感
筐体には、MIM(金属粉末射出成形)製法によるステンレススチールハウジングが採用されています。
高温焼結によって作られたこの筐体は、非常に頑丈で高級感のある質感が特徴です。
プラスチック製のイヤホンとは一線を画す重厚感があり、所有欲を満たしてくれます。
また、前作同様にコンパクトなサイズ感を維持しているため、耳への収まりが良く、装着感も快適です。
水月雨 蘭II LAN 2 REFの評判・口コミ・海外レビューまとめ
発売直後から、国内外で多くのユーザーがレビューを発信しています。
全体的には非常にポジティブな反応が多いですが、一部で装着感に関する意見も見受けられました。
実際の評判や口コミを整理してご紹介します。
良い口コミ:価格破壊と言われる「付属品」と「筐体品質」
最も多く見られる称賛の声は、やはりそのコストパフォーマンスの高さです。
「この価格で4.4mmケーブルと変換アダプタが付いてくるのは価格破壊だ」という意見が多数寄せられています。
また、ステンレス筐体のビルドクオリティについても、「安っぽさが全くない」「デザインが洗練されている」と好評です。
音質に関しても、「REFの透明感は素晴らしい」「POPのバランスが絶妙」と、それぞれのターゲット層から満足の声が上がっています。
悪い口コミ・注意点:耳のサイズによる装着感と遮音性
一方で、ネガティブな意見としては、装着感の個人差が挙げられます。
筐体自体はコンパクトですが、ノズル部分の形状や長さが耳に合わない場合、密閉度が下がり低音が逃げてしまうことがあります。
また、金属筐体であるため、冬場などは装着時にヒヤッとする冷たさを感じるという声もありました。
イヤーピースのサイズ選びが重要であり、付属のもので合わない場合は、他社製のイヤーピースに変更することで改善されるケースが多いようです。
【結論】水月雨 蘭II LAN 2 REFはどんな人におすすめ?
ここまで蘭II LAN 2 REFおよびPOPについて解説してきましたが、最終的にどちらを選ぶべきなのでしょうか。
それぞれの特徴を踏まえ、おすすめできるユーザー像をまとめます。
REF (Reference) を買うべき人 vs POP を買うべき人
蘭II REF (Reference) をおすすめする人
- 女性ボーカル曲やアニソンの透き通るような声を堪能したい人。
- クラシックやジャズ、インストゥルメンタル楽曲をよく聴く人。
- 音の解像度や分離感を重視し、分析的に音楽を楽しみたい人。
- 高域のキラキラした表現が好きな人。
蘭II POP をおすすめする人
- ロック、EDM、J-POPなど、ノリの良い音楽をよく聴く人。
- 低音の迫力やリズム感を大切にしたい人。
- 聴き疲れしない、マイルドで温かみのある音が好きな人。
- ジャンルを問わず、様々な音楽を幅広く楽しみたい人。
1万円以下で「バランス接続」を試したいなら最強の選択肢
どちらのモデルを選ぶにせよ、MoonDrop 蘭II LAN 2シリーズは、1万円以下で手に入るイヤホンとして最高クラスの選択肢です。
特に、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)やポータブルDACをお持ちで、まだバランス接続を試したことがない方にとっては、これ以上ない入門機となります。
追加のケーブル代をかけずに、オーディオ沼の入り口である「バランス接続の世界」を体験できる最強のパッケージと言えるでしょう。
まとめ:MoonDrop 水月雨 蘭II LAN 2 REF レビュー解説
- 蘭IIには「REF(高域寄り)」と「POP(低域寄り)」の2種類のチューニングがある
- REFは透明感のある高音と女性ボーカルの美しさが最大の特徴
- POPは低域に厚みがあり、ジャンルを選ばず楽しめる万能サウンド
- 両モデルともスペックや搭載ドライバーは共通で、純粋に音の好みで選べる
- 市場価格は8,550円前後と、1万円を切る高コスパを実現
- 最大の進化点は4.4mmバランスケーブルの標準搭載と3.5mm変換アダプタの付属
- 新開発のガラスドーム複合振動板により、解像度と歪み特性が向上
- MIM製法のステンレス筐体は高級感があり、耐久性にも優れる
- 海外レビューでは、汎用性の高さからPOPモデルを推す声も多い
- バランス接続デビューを考えているユーザーにとって、最適解となる一台
