自作PCユーザーやBTOパソコンの購入を検討している方にとって、現在のメモリ価格の異常な値上がりは深刻な悩みではないでしょうか。
少し前まで手頃な価格で購入できたDDR5メモリが、気づけば2倍、3倍の価格に跳ね上がっています。
「もう少し待てば安くなるのではないか」
「今買わないともっと高くなるのではないか」
このように、購入のタイミングを見極めるのが非常に難しい状況です。
今回のメモリ高騰は、単なる一時的な供給不足ではなく、AI需要の爆発的増加や大手メーカーの戦略変更、さらには円安といった複合的な要因が絡み合っています。
この記事では、2025年から2026年にかけての価格推移予測や、高騰の根本的な原因、そして「今買うべきか」の結論について詳しく解説します。
現在の市場状況を正しく理解し、損をしないための判断材料としてお役立てください。
【2025年最新】メモリ高騰の現状と価格推移グラフの分析
2025年に入り、PCパーツ市場、特にメモリ製品において過去類を見ない価格変動が起きています。
多くのユーザーが戸惑うこの状況は、単なる季節的な変動ではなく、市場構造そのものが変化したことによるものです。
まずは、具体的な数字と事例をもとに、現在のメモリ高騰の実態を分析していきます。
DDR5メモリ価格が数ヶ月で約3倍に高騰した実態
PCパーツの価格比較サイトやショップの店頭価格を確認すると、DDR5メモリの価格上昇率は異常とも言えるレベルに達しています。
例えば、人気のあるDDR5-5600 32GB×2枚組(合計64GB)のキットは、2025年の初頭や秋口には2万円台前半で購入できるケースもありました。
しかし、2025年12月時点では、同じ製品が7万円台後半まで高騰している事例も確認されています。
わずか数ヶ月の間に価格が約3倍になるというのは、仮想通貨マイニングブーム時のグラフィックボード価格高騰を彷彿とさせる事態です。
特に32GBや48GBといった大容量モジュールの値上がりが顕著で、クリエイターやハイエンドゲーマーにとって大きな痛手となっています。
Micron(Crucial)のコンシューマー事業撤退が与えた衝撃
この価格高騰に拍車をかけた大きなニュースとして、メモリ大手Micronによるコンシューマー向けブランド「Crucial」のメモリ・ストレージ事業終了の発表があります。
長年、自作PCユーザーに親しまれ、信頼性とコストパフォーマンスの高さで定番だったCrucialブランドが市場から姿を消すことになりました。
Micronは今後、より利益率の高いサーバー向けやエンタープライズ向けの製品にリソースを集中させる方針です。
市場における主要プレイヤーの一つが一般向け市場から退場することで、供給量への不安が一気に高まりました。
これが「今のうちに確保しなければ」という駆け込み需要(パニック買い)を誘発し、店頭在庫の枯渇と価格の急騰を加速させる要因の一つとなっています。
DDR4やSSD、HDDへの値上げ波及と在庫状況
影響を受けているのは最新のDDR5メモリだけではありません。
一世代前の規格であるDDR4メモリも、DDR5への生産ライン移行に伴う供給減により、じわじわと価格が上昇しています。
「DDR5が高いからDDR4でしのごう」と考えても、以前のような安価な価格で入手することは難しくなりつつあります。
また、ストレージ分野においても、SSDやHDDの価格上昇が始まっています。
AIデータセンターの建設ラッシュにより、学習データを保存するためのストレージ需要が爆発的に増えているためです。
特に大容量のHDDや高速なNVMe SSDは、企業間での争奪戦となっており、一般消費者向けの在庫が圧迫されています。
日本市場特有の「円安」による二重苦の影響
世界的なメモリ価格の上昇に加え、日本国内では「円安」という深刻な問題が重くのしかかっています。
PCパーツの多くはドル建てで取引されるため、為替レートの影響をダイレクトに受けます。
海外市場で価格が上昇している上に、円の価値が下がっているため、日本国内での販売価格は「海外の値上げ分 × 円安分」という二重の上昇圧力を受けることになります。
これにより、海外のユーザー以上に、日本の消費者は割高感を強く感じざるを得ない状況に陥っています。
なぜメモリ価格は高騰しているのか?主な3つの原因
今回のメモリ高騰は、一過性のトラブルではなく、半導体業界全体の構造的な変化に起因しています。
なぜこれほどまでに価格が上がってしまったのか、その主な3つの原因を解説します。
これらを理解することで、今後の市場動向が見えてきます。
AIバブルによるHBM(広帯域メモリ)への生産ライン転換
現在のメモリ高騰の最大の原因は、生成AIブームによる「HBM(High Bandwidth Memory)」の需要爆発です。
AIの学習や推論に使用される高性能GPUには、データの転送速度が極めて速いHBMが不可欠です。
メモリメーカーにとって、HBMは非常に利益率が高い「ドル箱」商品です。
そのため、Samsung、SK hynix、Micronといった主要メーカーは、限られた生産ラインとシリコンウェハを、一般的なDDRメモリからHBMの製造へと大規模にシフトさせています。
HBMは製造難易度が高く、通常のメモリよりも多くのウェハを消費するため、結果としてPC向けのDDR5メモリに回せる生産能力が大幅に削減されてしまっているのです。
メーカーによる供給調整と利益率重視への戦略変更
メモリメーカー各社は、過去の不況時に過剰在庫を抱えて価格が暴落し、巨額の赤字を出した経験から学んでいます。
そのため、現在は需要が増えたからといって、すぐに工場を増設して増産するというリスクを取りたがりません。
むしろ、供給を絞ることで価格を高止まりさせ、利益率を最大化する戦略をとっています。
市場が寡占状態(主要3社による支配)であるため、無理な価格競争をする必要がなく、暗黙の了解として供給調整が行われている側面もあります。
「作れば売れる」状況であっても、あえてPC向けメモリの供給を増やさないことで、メーカー側にとって有利な市場環境が維持されています。
DDR5への移行に伴うDDR4の生産縮小(フェーズアウト)
メモリの規格がDDR4からDDR5へと移行する過渡期にあることも要因の一つです。
メーカーは次世代のDDR5やHBMに投資を集中させるため、旧世代となるDDR4の生産ラインを縮小、あるいは廃止しています。
市場にはまだ多くのDDR4対応PCが存在し、需要は根強く残っていますが、供給は減る一方です。
これにより、需給バランスが崩れ、本来であれば値下がりしていくはずの旧製品までもが値上がりするという現象が起きています。
メモリ高騰はいつまで続く?2026年以降の市場予測
多くのユーザーが最も知りたいのは、「この高騰はいつまで続くのか」という点でしょう。
残念ながら、短期的に価格が以前の水準まで戻る可能性は極めて低いと予測されています。
専門家の見解や市場データを基に、2026年以降の展望を考察します。
専門家は「2026年も高止まり」と予測する理由
業界のアナリストや専門家の多くは、メモリ価格の高騰は2026年も続くと予測しています。
AIへの投資競争はまだ始まったばかりであり、Google、Microsoft、Amazonなどの巨大テック企業は、今後数年単位でデータセンターの拡張を計画しています。
これに伴い、メモリメーカーの生産能力は2026年、2027年分までAI向け製品で埋まっていく可能性があります。
一般消費者向けのDRAM供給が劇的に改善する材料が見当たらないため、少なくとも来年いっぱいは高値が続くという見方が支配的です。
最悪のシナリオは「今後10年間の供給不足」の可能性
一部のストレージコントローラーメーカーのCEOなどは、より悲観的な予測として「供給不足が今後10年続く可能性」を示唆しています。
これは、メモリメーカーが新規の工場建設や設備投資に対して極めて慎重になっているためです。
工場の建設には数年の歳月と巨額の資金が必要ですが、もしAIバブルが弾けた場合、その投資が無駄になるリスクがあります。
このリスクを恐れて積極的な増産が行われない限り、慢性的な供給不足が長期化し、メモリが高いのが当たり前という時代が長く続くシナリオも否定できません。
AIバブル崩壊による価格暴落は期待できるのか?
「AIバブルが弾ければ、余ったメモリが市場に溢れて安くなるのではないか」と期待する声もあります。
しかし、今回は過去の仮想通貨バブル崩壊時とは状況が異なる可能性があります。
前述の通り、メーカーはバブル崩壊を警戒して、そもそもPC向けメモリを過剰に生産していません。
また、AI向けに作られているHBMや特殊なサーバー用メモリは、一般的なPCには流用できない仕様のものが多く含まれます。
したがって、仮にAI投資が減速したとしても、我々が使うDDR5メモリが即座に投げ売り状態になるとは限らないのです。
スマホやゲーム機(Switch 2・PS5)価格への影響はあるか
メモリ価格の上昇は、PCパーツだけでなく、スマートフォンやゲーム機の価格にも影響を及ぼします。
実際に、スマートフォンの製造コストにおいてメモリの占める割合は高まっており、Samsungですら自社スマホ向けのメモリ確保に苦労しているという報道もあります。
今後発売が噂されるNintendo Switchの後継機(Switch 2)や、PlayStation 5などのゲーム機においても、部材コストの上昇は避けられません。
メーカーが利益を削って価格を据え置くか、あるいは本体価格に転嫁して値上げするか、厳しい判断を迫られることになるでしょう。
DDR4とDDR5の価格差と今後の入手難易度
ここでは、DDR4とDDR5の具体的な状況と、今後の入手難易度について解説します。
どちらの規格を選ぶにしても、以前のような「安くて潤沢」な状況ではないことを理解しておく必要があります。
DDR5(4800/5600/6000)の在庫不足と価格上昇率
現在、自作PCの主流であるDDR5メモリは、特にDDR5-5600やDDR5-6000といった「価格と性能のバランスが良い」売れ筋モデルから在庫が消えています。
これらのクロック帯は需要が高く、入荷してもすぐに売り切れてしまう状況です。
また、オーバークロック耐性の高い選別チップを搭載したハイエンドモデルは、チップの供給自体が絞られているため、生産数が激減しています。
価格上昇率は製品によって異なりますが、人気モデルでは底値から2倍以上の値付けになっていることも珍しくありません。
DDR4は「安価な逃げ道」ではなくなりつつある現状
コストを抑えるためにDDR4でPCを組もうと考えている方もいるかもしれません。
確かにDDR5に比べれば絶対的な価格は安い傾向にありますが、DDR4も底値圏を脱し、上昇トレンドに入っています。
さらに、大手メーカーの生産終了方針により、今後は「新品の良質なDDR4メモリ」を入手すること自体が難しくなっていくでしょう。
DDR4は「安価な選択肢」から「入手困難な旧規格」へと、その立ち位置を変えつつあります。
中古市場でのDDR5・DDR4メモリの狙い目と注意点
新品価格が高騰する中、中古市場に目を向けるのも一つの手段です。
PCを買い替えたユーザーや、スペックアップで不要になったメモリがフリマアプリや中古ショップに出回ることがあります。
運が良ければ、高騰前の価格水準に近い値段で手に入れられるかもしれません。
しかし、中古メモリには「メーカー保証がない(または継承できない)」という大きなリスクがあります。
特に、高騰に乗じて品質の悪い転売品や、初期不良品が出回る可能性もあるため、購入には十分な知識と注意が必要です。
高騰時のメモリ購入ガイド:今買うべきか待つべきか
最後に、この厳しい状況下でユーザーはどう行動すべきか、具体的な購入ガイドを提示します。
結論としては、悠長に待っている余裕はないというのが正直なところです。
結論:「必要な場合は即確保」が推奨される理由
直近半年以内にPCを組む予定がある、またはメモリ不足でPCの動作に支障が出ている場合は、「今すぐ買う」ことを強く推奨します。
現状の市場動向を見る限り、数ヶ月待ったところで価格が下がる要素はほとんどありません。
むしろ、さらに価格が上がったり、欲しい製品の在庫が完全になくなったりするリスクの方が高いと言えます。
「あの時買っておけばよかった」と後悔する前に、予算が許す範囲で確保しておくのが賢明な判断です。
32GBか64GBか?価格高騰下での最適な容量選び
メモリが高いため、容量を妥協して16GB(8GB×2)で済ませようと考える方もいるかもしれません。
しかし、最近のゲームやアプリケーション、OSのメモリ使用量は増加傾向にあり、16GBでは快適な動作が厳しくなりつつあります。
基本的には32GB(16GB×2)を最低ラインとして考えるべきです。
もし、動画編集や生成AI、複数のアプリを同時に立ち上げるような用途であれば、無理をしてでも64GB(32GB×2)を確保することをおすすめします。
後から増設しようとしても、その時にはさらに価格が上がっている可能性があるため、最初に必要な容量を積んでおく方が長期的にはコストを抑えられます。
BTOパソコンやメーカー製PCへの価格転嫁のタイミング
パーツ単体だけでなく、BTOパソコンやメーカー製PCの価格も今後さらに上昇する可能性があります。
BTOメーカーはパーツの仕入れ価格がダイレクトに販売価格に反映されやすいため、メモリ価格の高騰は即座にPC本体の値上げにつながります。
もしPCの買い替えを検討しているのであれば、価格改定が行われる前、あるいは販売店の在庫があるうちに決断することをおすすめします。
価格コムやAmazon在庫切れ時の代替購入ルートと転売品への注意
大手通販サイトや価格比較サイトで「在庫なし」となっていても、諦めるのはまだ早いです。
実店舗を持つPCパーツショップの店頭在庫や、秋葉原などの電気街の小規模店舗には、まだ在庫が残っている場合があります。
一方で、Amazonのマーケットプレイスやフリマアプリなどで、定価の数倍の価格で販売されている転売品には注意が必要です。
これらは価格が不当に高いだけでなく、正規の保証が受けられないケースが多々あります。
焦る気持ちはわかりますが、信頼できるショップから購入することを第一に考えてください。
まとめ:メモリ 高騰への対策と今後の展望
- 現在のメモリ価格高騰はAI需要、HBMへのシフト、円安などが原因である
- Micron(Crucial)のコンシューマー撤退が供給不安を加速させた
- DDR5の価格は底値から約3倍近くまで上昇しているケースがある
- 専門家の多くは2026年も価格の高止まりが続くと予測している
- AIバブルが崩壊してもPC向けメモリが急落する可能性は低い
- DDR4も生産縮小により安価な逃げ道ではなくなりつつある
- 必要な場合は値下がりを待たずに「即確保」することが推奨される
- 最低でも32GB、可能なら64GBを最初に搭載するのが長期的にお得
- BTOパソコンも価格転嫁が進むため早めの購入検討が必要である
- 転売品や保証のない中古品にはリスクがあるため注意する

