これからゲーム実況や歌ってみた配信を始めようと機材を選んでいる際、「ループバック機能」という言葉を目にして戸惑っていませんか。
多くのオーディオインターフェースに搭載されているこの機能ですが、実はすべての配信者に必須というわけではありません。
使用するソフトや配信スタイルによっては、むしろ「ループバック機能はいらない」ケースも多々あり、知らずに購入すると機能を持て余したり、トラブルの原因になったりすることもあります。
この記事では、どのような環境ならループバック機能が不要なのか、逆にどのような場合に必須となるのかを、具体的な機材設定や代用策とあわせて詳しく解説します。
ご自身の環境に最適な機材選びと設定の参考にしてください。
ループバック機能がいらないと言われる3つの理由とケース
「配信にはループバック機能が必要」という情報は、かつての常識であり、現在では必ずしも正解ではありません。
特にPCを使用した配信環境においては、ソフトウェアの進化により、ハードウェア側でのループバック機能が不要になるケースが増えています。
ここでは、具体的に機能が不要となる3つの主なパターンについて解説します。
OBS Studioなどの高機能配信ソフトを使用する場合は設定で完結する
PCでゲーム実況や雑談配信を行う際、多くの人が利用している配信ソフト「OBS Studio」を使用する場合、オーディオインターフェースのループバック機能は基本的に不要です。
なぜなら、OBS Studio自体が強力な音声ミキシング機能を持っているからです。
OBSには「デスクトップ音声」という項目があり、これを有効にするだけで、PC内で再生されているゲーム音、BGM、Discordの通話音声などを自動的に配信に乗せることができます。
この場合、オーディオインターフェースは純粋に「マイクの音声を高品質に入力するデバイス」として機能すれば十分です。
むしろ、OBSを使用している状態でハードウェアのループバック機能をオンにすると、音声信号の経路が複雑になり、音が二重に聞こえるなどのトラブルを招く原因となります。
DiscordやZoom通話では相手の声が反響(ハウリング)するため不要
友人との通話やオンライン会議でDiscordやZoomを使用する場合、ループバック機能は「いらない」どころか、有害になるためオフにする必要があります。
もし通話中にループバック機能をオンにしていると、相手から送られてきた声(PCから出る音)を、再びマイク入力として相手送り返してしまいます。
その結果、相手は自分の声が遅れて聞こえる「エコー」や、音が無限に回って「キーン」という不快な音が発生する「ハウリング」に悩まされることになります。
ボイスチャットをしながらゲーム音を相手に聞かせたい場合でも、現在はDiscordの「画面共有」機能などを使用すれば、クリアな音声を相手に届けることが可能です。
そのため、通話用途がメインであれば、ループバック機能付きの機材にこだわる必要はありません。
DTMやマルチトラック録音では音声を分離できないため邪魔になる
音楽制作(DTM)でボーカルや楽器のレコーディングを行う場合、ループバック機能は作業の妨げになることがあります。
楽曲制作では通常、PCから流れる伴奏(ガイドメロディやドラム音源など)をヘッドホンで聴きながら、マイクに向かって新しい音を録音します。
このときループバック機能がオンになっていると、ヘッドホンで聴いている伴奏の音まで一緒に新しいトラックに録音されてしまいます。
これでは、後からボーカルの音量だけを調整したり、エフェクトをかけたりする編集作業ができなくなってしまいます。
純粋な録音作業においては、入力音と再生音を完全に分離する必要があるため、ループバック機能は不要です。
そもそもループバック機能とは?何に使うための仕組みか
必要・不要の判断をより確実にするために、まずはループバック機能の基本的な仕組みと役割について整理しましょう。
この機能を正しく理解することで、トラブル時の切り分けもスムーズに行えるようになります。
PC内のBGMやゲーム音とマイク音声をミックスして配信する機能
ループバック機能とは、PCやスマホなどの端末から出力された音声(BGM、ゲーム音、相手の声など)を、オーディオインターフェース内部で折り返し、マイクからの入力音声とミックスして、再び端末へ送り返す機能のことです。
通常、PCのマイク入力には「マイクの音」しか入りません。
しかし、配信では「マイクで喋っている声」と「PCで流しているBGM」をセットにして視聴者に届ける必要があります。
この「PCの中の音」と「外からのマイク音」を一つにまとめて配信ソフトに送る役割を担っているのが、ループバック機能です。
歌ってみた配信でカラオケ音源と歌声を合わせる際の役割
この機能が最も活躍するのは、「歌ってみた」などのカラオケ配信を行うシーンです。
PC上の音楽プレイヤーやYouTubeでカラオケ音源(オフボーカル音源)を再生しながら歌う場合、視聴者には「カラオケ音源」と「あなたの歌声」の両方が聞こえていなければなりません。
ループバック機能を使うことで、PCで再生した高音質なカラオケ音源と、オーディオインターフェースに繋いだマイクの歌声を綺麗にミックスし、一つの音楽として配信に乗せることができます。
これにより、遅延(レイテンシー)を感じることなく、手軽に高クオリティな歌枠配信が可能になります。
オーディオインターフェースの機能とソフトウェアでの代用手段の違い
ループバックには、オーディオインターフェースという「ハードウェア(機械)」で行う方法と、PC内の「ソフトウェア(アプリ)」で行う方法の2種類があります。
ハードウェアによるループバックは、スイッチ一つで切り替えができたり、PCへの負荷が少なかったりするなど、安定性と手軽さに優れています。
一方、ソフトウェアによるループバック(仮想ミキサーソフトなど)は、機材を買い替えずに導入できるメリットがありますが、設定が複雑になりやすく、PCのスペックによっては音飛びなどのリスクがあります。
現在はPCスペックの向上によりソフト処理でも十分実用的になっていますが、初心者にとってはハードウェア機能の方が直感的で扱いやすい側面があります。
OBS配信でループバック機能を使わずに音声を流す設定方法
前述の通り、OBS Studioを使用する場合、高価な機材側のループバック機能は必須ではありません。
ここでは、OBSの設定だけでゲーム音やBGMを配信に乗せる具体的な手順と、よくあるトラブルの回避策を解説します。
OBSの「デスクトップ音声」機能を使ってBGMやゲーム音を乗せる手順
OBSでPC内の音を配信に乗せる手順は非常にシンプルです。
まず、OBSの「設定」メニューから「音声」タブを開きます。
次に、「グローバル音声デバイス」の中にある「デスクトップ音声」の項目で、「既定」または現在使用しているスピーカー(オーディオインターフェースの出力など)を選択します。
これだけで、PCで鳴っている音(YouTube、ゲーム、iTunesなど)に合わせて、OBSの音声ミキサーの「デスクトップ音声」ゲージが動くようになります。
個別のソフトの音だけを取り込みたい場合は、「ソース」の追加から「アプリケーション音声キャプチャ(ベータ版)」や「音声出力キャプチャ」を選択することで、より細かい制御も可能です。
OBSとループバック機能を併用すると音が二重になる原因と対処法
OBSで配信中に「声やBGMが二重に聞こえる(エコーがかかる)」というトラブルの多くは、OBSの機能と機材のループバック機能を同時に使用していることが原因です。
OBSが「デスクトップ音声」としてPCの音を拾っている状態で、さらにオーディオインターフェースがループバック機能でPCの音をマイク入力として送り返してしまうと、同じ音が2回取り込まれてしまいます。
これを防ぐためには、OBSを使用する際はオーディオインターフェース側のループバック機能を必ず「OFF」にしてください。
もしAG03MK2などの物理スイッチがある機種であれば、「LOOPBACK」ではなく「INPUT MIX」や「DRY CH 1-2」などに切り替えることで解決します。
自分の声を確認しながら配信するためのモニタリング設定
ループバック機能を使わない場合、自分の声(マイク音)がヘッドホンから聞こえず、喋りにくいと感じることがあります。
これを解消するには、2つの方法があります。
1つ目は、オーディオインターフェースの「ダイレクトモニタリング」機能を使用する方法です。
これはPCを経由せず、マイクの音を直接ヘッドホンに返す機能で、遅延ゼロで自分の声を確認できます。
2つ目は、OBSの「オーディオの詳細プロパティ」からマイク入力の「音声モニタリング」を「モニターのみ(出力はミュート)」または「モニターと出力」に設定する方法です。
ただし、OBS経由のモニタリングは若干の遅延が発生するため、基本的には機材側のダイレクトモニタリング機能を使用することをおすすめします。
逆にループバック機能が必要になる・あると便利なケース
ここまで「いらない」ケースを中心に解説しましたが、環境によってはループバック機能が「必須」あるいは「あると非常に便利」な場合も存在します。
ご自身の用途が以下に当てはまる場合は、ループバック機能搭載モデルを選ぶ価値が大いにあります。
スマホやタブレット(iPhone/iPad)での雑談・歌枠配信には必須級
スマートフォンやタブレットを使って、ツイキャス、17LIVE、Pocochaなどのアプリで配信を行う場合、ループバック機能はほぼ必須と言えます。
PC版のOBSのような高度なミキシング機能を持たないスマホアプリでは、端末内で再生したBGMとマイク音声を同時に配信に乗せることが難しい仕様になっていることが多いからです。
ループバック機能付きのオーディオインターフェースをスマホに接続すれば、スマホ内の音楽アプリでBGMを流しながら、それをマイク音声とミックスして配信アプリに送ることができます。
特にYAMAHA AG03MK2のようなスマホ配信に特化した機種は、この接続が簡単に行えるため、多くのライバーに支持されています。
オーディオインターフェース内蔵のエフェクト(リバーブ)を配信に乗せたい場合
歌配信や雑談配信で、自分の声に「エコー(リバーブ)」をかけたい場合、ループバック機能が役立ちます。
多くのオーディオインターフェースには、DSPエフェクトと呼ばれる内蔵リバーブ機能がありますが、機種によってはこのエフェクト音が「モニター(自分の耳)」には聞こえても、「配信(相手)」には届かない仕様になっているものがあります。
ループバック機能をオンにすることで、エフェクトがかかった状態のモニター音声をそのまま配信に乗せることが可能になります。
PCに負荷をかけずに高品質なエフェクトを使いたい場合は、この運用方法が非常に有効です。
Macユーザーが仮想オーディオデバイスを使わずに設定を簡略化したい場合
Windowsと異なり、macOSはシステムレベルで「PC内の音を録音・配信する」という動作が標準では難しくなっています。
OBSなどを使用する場合でも、別途仮想オーディオデバイスをインストールして設定する必要があるなど、Windowsに比べて手順が複雑になりがちです。
しかし、ループバック機能付きのオーディオインターフェースを使用すれば、これらの面倒な設定をスキップし、ハードウェア側で音声をまとめることができます。
設定の煩わしさから解放されたいMacユーザーにとって、ループバック機能は強力な助っ人となります。
ループバック機能がないオーディオインターフェースでの代用策
手持ちの機材にループバック機能がついていない場合や、あえてシンプルな機材を選びたい場合でも、ソフトウェアや配線の工夫で同様のことを実現できます。
VoiceMeeter Bananaなどの仮想ミキサーソフトを使用する方法
Windowsユーザーであれば、「VoiceMeeter Banana」という無料の仮想ミキサーソフトを使用するのが定番の代用策です。
このソフトをインストールすると、PC内に仮想的なオーディオ入出力デバイスが作成されます。
ブラウザや音楽プレイヤーの出力先をVoiceMeeterに設定し、マイク入力もVoiceMeeterに集約することで、ソフト上で音声を自由にミックスして配信ソフト(OBSやDiscordなど)に送ることが可能になります。
設定には多少の学習コストがかかりますが、一度構築してしまえば、高価な機材と同等以上の自由度で音声をコントロールできます。
Macユーザー向け仮想デバイス(BlackHole/Soundflower)の活用
Macユーザーの場合は、「BlackHole」や(旧来の)「Soundflower」といった仮想オーディオドライバを使用します。
これらをインストールし、Mac標準の「Audio MIDI設定」アプリで「複数出力装置」を作成することで、システム音を仮想デバイスとスピーカーの両方に流すことができます。
配信ソフト側でその仮想デバイスを入力ソースとして指定すれば、PC内の音を配信に乗せることが可能です。
最近のmacOSでは「LadioCast」などのミキサーアプリと組み合わせる方法も一般的です。
アナログ接続や外部ミキサーを使って物理的に配線する方法
ソフトウェアの設定が苦手な場合や、より直感的に操作したい場合は、物理的な配線で解決する方法もあります。
例えば、別途アナログミキサーを用意し、PCのヘッドホン出力をミキサーに入力、マイクもミキサーに入力し、ミックスした音を別のオーディオインターフェースでPCに戻すといった方法です。
あるいは、スマホや別の音楽プレイヤーをオーディオインターフェースの「AUX入力」端子にケーブルで繋ぐことで、外部音源としてBGMを流す方法もあります。
これらは「ループバック」とは厳密には異なりますが、BGMとマイクをミックスするという目的は達成できます。
Discord通話やゲーム配信で発生するループバックのトラブルと解決策
ループバック機能を使用する際、特にトラブルが起きやすいのがDiscordなどの通話アプリを併用するシーンです。
ここではよくある問題とその解決策を提示します。
Discordで相手にゲーム音だけを聞かせて通話音声は返さない設定
「ゲーム音は通話相手に聞かせたいが、相手の声まで送り返したくはない」という場合、単純なループバック機能では対応できないことがあります。
この場合、最も簡単な解決策はDiscordの「画面共有(Go Live)」機能を使うことです。
特定のゲーム画面やアプリケーションウィンドウを共有することで、そのアプリの音だけをクリアに相手に届けることができます。
これならループバック機能は不要であり、相手の声が回る心配もありません。
自分の声が聞こえない・遅延する場合のダイレクトモニタリング活用
ループバックの設定をいじっているうちに、「自分の声が遅れて聞こえて喋りづらい」という現象が起きることがあります。
これは、PCで処理された後の音が返ってきている(レイテンシーが発生している)状態です。
解決するには、配信ソフトやPC側のモニタリング機能をオフにし、オーディオインターフェース本体の「ダイレクトモニタリング」機能をオンにしてください。
多くの機種では「DIRECT MONITOR」というスイッチやつまみで調整できます。
これにより、遅延のない自分の声を聴きながら快適に配信や通話ができます。
ハウリングを防ぐためにループバックをOFFにすべきタイミング
「キーン」という強烈なハウリング音や、音が何重にも重なるエコーが発生した場合は、音声が無限ループしています。
これを防ぐための鉄則として、以下のタイミングでは必ずループバック機能をOFFにしてください。
- Discord、Skype、Zoomなどで通話をする時
- DAW(音楽制作ソフト)で録音をする時
- OBSで「デスクトップ音声」を有効にしている時
特に、通話アプリを使用する際は、自分だけでなく相手の耳にもダメージを与える可能性があるため、通話前にスイッチを確認する癖をつけましょう。
まとめ:ループバック機能はいらない?環境による必要性の結論
この記事では、ループバック機能の必要性について、配信環境や用途別に解説してきました。
結論として、PCでOBSを使用するスタイルであれば、ループバック機能がない機材でも全く問題ありません。
一方で、スマホ配信や手軽さを重視する場合は、この機能が強力な武器になります。
最後に、これまでのポイントをまとめます。
- PCでOBS Studioを使って配信する場合、基本的にはループバック機能はいりません。
- OBSの「デスクトップ音声」機能を使えば、PC内の音は簡単に配信に乗せられます。
- DiscordやZoomなどの通話アプリ使用時は、相手の声が反響するため機能はオフにすべきです。
- DTM(音楽制作)の録音作業においても、音声分離の妨げになるため不要です。
- スマホやタブレットでの「歌ってみた」や雑談配信には、ループバック機能が必須級です。
- Macユーザーは、設定を簡略化するためにループバック機能付きを選ぶメリットがあります。
- 機能がない場合でも、「VoiceMeeter Banana」などのソフトで代用が可能です。
- 音が二重になるトラブルの多くは、OBSの設定と機材の機能の重複が原因です。
- 自分の声を聞く際は、遅延のない「ダイレクトモニタリング」機能を活用しましょう。
- 機材選びでは、「自分の配信スタイル(PCかスマホか)」を最優先基準にしてください。
