「KEF LSX II」は、英国の老舗オーディオメーカーKEFが送り出す、コンパクトながら本格的なHiFiサウンドを楽しめるワイヤレススピーカーです。
デスク周りを高音質化したい、テレビの音を映画館のようにアップグレードしたい、しかし大きな機材は置きたくない。
そんな悩みを抱える方にとって、本機はまさに理想的な解決策となり得る一台です。
この記事では、KEF LSX IIのレビュー解説を中心に、音質の詳細、前モデルからの進化点、そして気になる廉価版「LSX II LT」との違いまで徹底的に深掘りします。
実際に使用して感じたメリットだけでなく、購入前に知っておくべき注意点も包み隠さずお伝えしますので、ぜひスピーカー選びの参考にしてください。
KEF LSX IIとは?特徴と進化点を徹底解説
KEF LSX IIは、アンプ、DAC、ストリーマー(ネットワーク再生機能)を全て内蔵した、オールインワン・アクティブスピーカーです。
ケーブルをつないで電源を入れるだけで、スマートフォンやテレビ、パソコンの音源を最高品質で再生できる手軽さが最大の魅力です。
ここではまず、本機の基本的なスペックや特徴、そして初代モデルからどのような進化を遂げたのかを解説します。
KEF LSX IIの基本スペックとUni-Qドライバーの特徴
本機の心臓部には、KEF独自の特許技術である第11世代「Uni-Qドライバー」が搭載されています。
これは、高音域を担当するツイーターを、中低音域を担当するウーファーの中心に配置する同軸構造のドライバーユニットです。
一般的なスピーカーは高音と低音が別の場所から出ますが、Uni-Qは「点音源(一点からすべての音が出る)」を実現しているため、音が自然に広がり、聴く位置が多少ずれても正確なステレオイメージが得られます。
また、最大出力は合計200W(LF:70W + HF:30W ×2)と、このサイズからは想像できないほどのパワーを持っています。
前モデルからの進化点:HDMI ARCとUSB-C搭載の衝撃
初代LSXからLSX IIへの最大の変更点は、接続インターフェースの大幅な強化です。
新たに「HDMI ARC」と「USB Type-C」入力が搭載されました。
HDMI ARCに対応したことで、テレビとケーブル1本で接続でき、テレビのリモコンでスピーカーの音量調整や電源連動が可能になります。
また、USB Type-C入力により、パソコンと直接デジタル接続して高音質なPCスピーカーとして活用することも容易になりました。
これにより、単なる音楽鑑賞用スピーカーから、テレビやPCを含むエンターテインメントの中心となるシステムへと進化しています。
洗練されたデザインとサイズ感:デスクトップにもリビングにも馴染む理由
著名なインダストリアルデザイナーであるマイケル・ヤング氏が手掛けたデザインは、ミニマルでありながら高級感にあふれています。
スピーカーの側面や上面はKvadrat社製のファブリックで覆われており(一部カラーを除く)、無機質になりがちなオーディオ機器に温かみのあるインテリア性を与えています。
サイズは幅155mm、高さ240mm、奥行き180mmと非常にコンパクトです。
この絶妙なサイズ感により、書斎のデスク脇に置いても圧迫感がなく、リビングのテレビボードに置いてもスタイリッシュに収まります。
【音質レビュー】KEF LSX IIのサウンドは価格以上か?
スピーカー選びで最も重要なのは、やはり「音質」です。
価格が20万円を超える製品として、そのサウンドクオリティは価格に見合うものなのでしょうか。
ここでは、実際に試聴して感じた音の特徴を、定位感、帯域バランス、ジャンルごとの相性といった観点から詳しくレビューします。
点音源「Uni-Q」がもたらす圧倒的な定位感と解像度
実際に音を出して最初に驚かされるのは、その圧倒的な「定位感」の良さです。
Uni-Qドライバーの恩恵により、ボーカルが左右のスピーカーのちょうど真ん中、まるでそこに人が立っているかのように明瞭に浮かび上がります。
音がスピーカーから出ているという感覚が消え、空間そのものが鳴っているような錯覚を覚えるほどです。
解像度も非常に高く、楽器の細かなニュアンスや歌手の息遣いまで鮮明に描写されますが、決して分析的すぎて聴き疲れするような音ではありません。
KEFらしい、自然で素直な音色がベースにあり、長時間聴いていても心地よいサウンドです。
デスクトップ(ニアフィールド)での視聴体験と没入感
LSX IIは、パソコンデスクなどで至近距離から聴く「ニアフィールドリスニング」において、その真価を最大限に発揮します。
点音源であるため、スピーカーとの距離が近くても高音と低音のズレを感じることがありません。
デスク上で再生すると、目の前に小さなステージが出現したかのような箱庭的な没入感を味わえます。
特にUSB接続時のクリアさは特筆すべきもので、PCオーディオ環境を一気にハイエンドなレベルへと引き上げてくれます。
リビング利用での広がりと低音の量感:サブウーファーは必要?
コンパクトな筐体ですが、リビングルーム(10畳~15畳程度)でも十分な音圧と広がりを提供してくれます。
低音に関しては、DSP(デジタル信号処理)技術により、サイズを超えた量感と深みがあります。
一般的な音楽鑑賞やドラマ視聴であれば、低音不足を感じることは少ないでしょう。
ただし、映画の爆発音や、重低音を重視するEDMなどを広い部屋で身体に響くレベルで楽しみたい場合は、別途サブウーファー(KC62など)の追加を検討しても良いかもしれません。
背面の端子からサブウーファーを簡単に追加でき、アプリでクロスオーバー設定も可能です。
得意なジャンルと苦手なジャンル:音楽・映画・ゲームでの評価
得意なジャンルは、ジャズ、クラシック(小編成)、ポップス、女性ボーカルなどです。
特にアコースティック楽器の響きや人の声の質感表現は絶品で、情感豊かに鳴らしてくれます。
映画などの映像コンテンツとも相性が良く、セリフが明瞭に聞こえつつ、効果音の移動感もしっかり再現されます。
一方で、重厚なオーケストラや激しいヘヴィメタルなどを大音量で鳴らすと、さすがに大型スピーカーのようなスケール感や音圧には及びません。
また、超低域が主体のクラブミュージックでは、物理的なサイズの限界を感じる場面もあります。
KEF LSX II vs LSX II LT 違いを比較解説
2024年に発売された廉価モデル「LSX II LT」と、通常モデル「LSX II」の違いは、多くの購入検討者が悩むポイントです。
見た目は非常に似ていますが、機能面や設計には明確な違いがあります。
ここでは、両モデルの差を比較し、どちらを選ぶべきかの基準を提示します。
LSX II LTで省略された機能とは?(電源・無線接続・AUX・MQA)
LSX II LTは、コストダウンのためにいくつかの機能が省略されています。
主な違いは以下の通りです。
- スピーカー間の接続: LSX IIはワイヤレス接続が可能ですが、LTは付属のUSB-Cケーブルによる有線接続が必須です。
- 電源供給: LSX IIは左右それぞれに電源ケーブルが必要ですが、LTはプライマリースピーカーのみ電源に繋ぎ、セカンダリーへはUSB-Cケーブルで給電します(コンセントが1つで済むメリットがあります)。
- 入力端子: LTには3.5mm AUX(アナログ入力)端子がありません。
- フォーマット: LTはMQA再生に非対応で、Roon Readyにも対応していません。
音質に違いはあるのか?同一ドライバー搭載の真実
基本的なドライバーユニット(第11世代Uni-Q)や内蔵アンプの出力(合計200W)、キャビネットサイズは両モデルで共通です。
そのため、基本的な音の傾向やクオリティは非常に似ています。
しかし、LSX IIは左右それぞれに独立した電源部を持っているのに対し、LTは片側から電源を供給する仕様です。
厳密に聴き比べると、通常モデル(LSX II)の方が音の厚みや余裕感、空間表現においてわずかに優れているという評価もあります。
とはいえ、その差は微妙なものであり、LT単体で聴けば十分にKEFの上質なサウンドを楽しめます。
【結論】価格差約8万円:どちらのモデルを選ぶべきか
実勢価格で比較すると、両者には数万円(時期によっては8万円近く)の価格差があります。
LSX IIを選ぶべき人:
左右のスピーカーをワイヤレスですっきり設置したい、アナログレコードプレーヤーなどをAUXで繋ぎたい、MQAやRoonを利用したい、予算をかけてでも最高スペックを求めたい人。
LSX II LTを選ぶべき人:
スピーカー間が有線接続でも問題ない(デスク利用など)、AUX入力は不要、コスパを重視してKEFの音を手に入れたい人。
自身の設置環境と必要な入力端子を確認すれば、自然と答えは出るはずです。
実際の使い勝手と操作性をレビュー
多機能なスピーカーだからこそ、日々の操作性や使い勝手は重要です。
ここでは、専用アプリの使い心地や、テレビとの連携、ワイヤレス接続の安定性についてレビューします。
専用アプリ「KEF Connect」の設定と使いやすさ
セットアップや操作は、すべて専用アプリ「KEF Connect」で行います。
このアプリの完成度は非常に高く、初期設定も画面の指示に従うだけでスムーズに完了します。
音量調整や入力切り替えだけでなく、イコライザー設定(EQ設定)も直感的です。
「デスクモード」や「ウォールモード」など、設置場所に合わせて低音の出方を簡単に最適化できる機能があり、オーディオ初心者でも部屋に合わせたベストな音質に調整できます。
テレビとの連携:HDMI ARCによる電源連動と快適性
HDMI ARC接続の利便性は抜群です。
テレビの電源をオンにすればスピーカーも自動で起動し、テレビの電源を切ればスピーカーもオフになります。
音量はテレビのリモコンでそのまま操作できるため、家族も違和感なく使用できます。
サウンドバーのような手軽さで、サウンドバーを遥かに超えるステレオサウンドを楽しめるのが最大のメリットです。
AirPlay 2・Chromecast・Bluetooth接続の安定性
Wi-Fi経由でのAirPlay 2やGoogle Chromecast、Spotify Connectなどの接続は非常に安定しており、高音質です。
スマホで再生中の音楽をワンタップでスピーカーにキャストでき、遅延や音切れもほとんど感じません。
Bluetooth接続も可能ですが、Wi-Fi接続の方が音質面で圧倒的に有利なため、基本的にはWi-Fi経由での再生をおすすめします。
購入前に知っておくべきKEF LSX IIの注意点・デメリット
絶賛されることの多いLSX IIですが、完璧な製品というわけではありません。
購入後に「こんなはずではなかった」とならないよう、いくつかの注意点やデメリットについても正直に解説します。
スリープ復帰時のウェイクアップ遅延と対処法
スリープ状態(スタンバイ)から音が出るまでに、数秒~十数秒程度のタイムラグが発生することがあります。
特に「2番目のウェイクアップソース」設定などで複数の入力を待機させている場合、信号を検知してからアンプが起動するまでに少し待たされる感覚があるかもしれません。
これは省電力機能やネットワーク接続の確立による仕様ですが、即座に音を出したい場合にはストレスになる可能性があります。
Wi-Fi環境への依存度とルーター設定の重要性
本機はネットワークスピーカーとしての機能がメインであるため、自宅のWi-Fi環境の質が動作の安定性に直結します。
ルーターとの距離が遠かったり、Wi-Fi信号が弱い場所で使用したりすると、アプリの反応が鈍くなったり、音楽が途切れたりすることがあります。
安定した動作のためには、5GHz帯のWi-Fiを使用するか、可能であればLANケーブルでの有線ネットワーク接続を検討することをおすすめします。
ゲーム機接続時の遅延と有線接続の推奨
Bluetooth接続の場合、映像に対して音声が遅れる遅延が発生しやすくなります。
アクションゲームや音ゲーなど、タイミングがシビアなゲームをプレイする場合は、Bluetoothではなく、USBやHDMI、またはAUX(LSX IIのみ)による有線接続が必須です。
有線接続であれば遅延はほぼ気にならないレベルになりますが、PS5などのゲーム機と接続する際は設定に注意が必要です。
KEF LSX IIの評判・口コミまとめ
実際にLSX IIを購入したユーザーはどのような評価を下しているのでしょうか。
ネット上のレビューやSNSでの声を分析し、良い評判と悪い評判をまとめました。
ユーザーが高く評価する「オールインワン」の魅力
多くのユーザーが、「アンプやDACを個別に揃える必要がなく、これ一台で完結する手軽さ」を高く評価しています。
また、「サイズからは想像できない高音質」「デザインが美しく所有欲を満たしてくれる」「テレビの音が劇的に良くなった」という声も多数見られます。
特にデスク環境で使用しているユーザーからは、定位の良さとコンパクトさのバランスが絶賛されています。
ユーザーが指摘する不満点と改善への期待
一方で、不満点として挙げられるのは「価格の高さ」や「アプリの挙動がたまに不安定になる」といった点です。
また、「付属のリモコンがシンプルすぎて入力ソースの切り替えが分かりにくい(LEDの色で判断する必要がある)」という指摘もあります。
一部の環境では、Wi-Fi接続の設定に苦労したという声もあり、ネットワークスキルの有無によって導入のハードルが少し変わるようです。
総評:KEF LSX IIはどんな人におすすめのスピーカーか?
ここまでKEF LSX IIの特徴や音質、使い勝手を解説してきました。
最後に、このスピーカーがどのような人にとってベストバイとなるのかをまとめます。
複雑なオーディオ機器を置かずに高音質を手に入れたい人へ
アンプ、DAC、配線ケーブルなどを選ぶ手間を省き、電源を入れるだけですぐにハイエンドオーディオの世界を楽しみたい人には最適です。
シンプルで美しいデザインは、インテリアを損なうことなく、生活空間に上質な音楽をもたらしてくれます。
テレビの音質を劇的に向上させたい人へ
HDMI ARC対応により、テレビ用のスピーカーとしても極めて優秀です。
サウンドバーでは得られない、左右のスピーカーが離れた本格的なステレオ再生による臨場感は、映画やライブ映像の感動を何倍にも高めてくれるでしょう。
KEF LSX IIの価格に見合う価値と満足度
約20万円という価格は決して安くありませんが、内蔵されているアンプやストリーマーの性能、そしてスピーカー自体のクオリティを考えれば、コストパフォーマンスは決して悪くありません。
同等の音質を単品コンポーネントで揃えようとすれば、これ以上の予算と設置スペースが必要になるはずです。
「良い音」と「快適な使い勝手」の両方を高い次元で妥協したくない方にとって、KEF LSX IIは長く愛用できる最良のパートナーとなるでしょう。
まとめ:KEF LSX II レビュー解説の総括
- KEF LSX IIはアンプ内蔵のオールインワン・ワイヤレスHiFiスピーカーである
- 第11世代Uni-Qドライバーによる「点音源」再生で、抜群の定位感と解像度を実現している
- HDMI ARCとUSB-C入力を搭載し、テレビやPCとの接続性が劇的に向上した
- 音質はクリアで自然、特にボーカルやアコースティック楽器の表現力に優れる
- 廉価版のLSX II LTとの主な違いは、スピーカー間ワイヤレス接続やAUX入力の有無である
- 音質面では通常モデルとLTに大きな差はないが、電源構成の違いなどで通常版が有利な場合がある
- 専用アプリ「KEF Connect」で設定や音質調整が簡単に行える
- スリープ復帰の遅延やWi-Fi環境への依存といった注意点もある
- ゲーム機との接続では遅延回避のために有線接続が推奨される
- 高価だが、設置のしやすさと機能性を考慮すれば価格に見合う高い満足度が得られる製品である
