唯一無二のサウンドでオーディオファンを魅了し続ける米国ブランド「GRADO」。
そのGRADOから登場した新たなハイエンドモデル「Signature S950」について、実際のところ音質はどうなのか、兄弟機との違いや価格、ユーザーからの評判が気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、プロの視点から「GRADO Signature S950」のレビューを徹底的に解説します。
音質の特徴からスペック、メリット・デメリット、そして実際の評判や口コミまで、購入を検討する上で知っておきたい全ての情報を網羅しました。
この記事を読めば、あなたがGRADO Signature S950に投資する価値があるのか、その答えが明確になるはずです。
GRADO Signature S950とは?まずは基本情報を解説
GRADO SignatureシリーズにおけるS950の立ち位置とコンセプト
GRADO Signature S950は、アルミニウムハウジングを採用した「Signature HP100 SE」に続く、Signatureシリーズの第2弾として位置づけられるヘッドホンです。
最大の特徴は、GRADOの伝統ともいえる木製ハウジングに回帰した点にあります。
HP100 SEが分析的で現代的なサウンドを目指したのに対し、S950はブラジリアン・ウォールナット材を用いることで、より音楽的で温かみのある、リスナーが深く没入できる体験の提供をコンセプトとしています。
GRADOが長年培ってきた伝統と、着脱式ケーブルといった新たな革新が融合した、ブランドの新たな方向性を示す重要なモデルと言えるでしょう。
ブラジリアン・ウォールナット材採用による唯一無二のデザインと特徴
本機を象徴するのは、ハウジングに採用されたブラジリアン・ウォールナット材です。
この木材は密度が高く耐久性に優れており、温度や湿度の変化に強いという特性から、長期間にわたって安定した音響特性を維持します。
さらに、ブルックリンの工房で手作業で作られるハウジングは、木目が一つひとつすべて異なり、所有する製品が世界に一つだけのユニークなデザインを持つという特別な価値を提供してくれます。
重量も約400g(ケーブル含まず)と、兄弟機であるHP100 SE(約520g)よりも大幅に軽量化されており、装着感の向上にも寄与しています。
兄弟機「Signature HP100 SE」との主な違いは?素材とチューニングを比較
Signature S950と兄弟機であるHP100 SEとの最も大きな違いは、「ハウジングの素材」と、それに伴う「サウンドチューニング」の2点です。
| 項目 | Signature S950 | Signature HP100 SE |
|---|---|---|
| ハウジング素材 | ブラジリアン・ウォールナット | アルミニウム |
| サウンド傾向 | 温かみのあるナチュラルなトーン | シャープで硬質な現代的サウンド |
| 得意なジャンル | ジャズ、バラード、ブルース | ロック、シンセポップ、女性ボーカル |
| 重量(本体のみ) | 約400g | 約520g |
HP100 SEがアルミニウム素材を活かしたシャープで分析的なサウンドを目指しているのに対し、S950はウォールナット材の特性を活かした、温かみと躍動感を両立したナチュラルなサウンドに調整されています。
搭載される52mm口径ダイナミックドライバーは基本的に同じですが、目指す音の方向性が明確に異なり、それぞれに代えがたい魅力を持っています。
【最重要】GRADO Signature S950の音質をレビュー解説
全体の音の傾向:「古参ファンも納得」の至高のGRADOサウンド
Signature S950の音質は、まさに「至高のGRADOサウンド」と呼ぶにふさわしい仕上がりです。
GRADOらしい中高域のシャープさをしっかりと残しつつ、ウッドハウジングならではの温かみと響きが加わった、非常にナチュラルで立体的なトーンが特徴となっています。
音のバランスは中高域寄りで、最新のハイエンドヘッドホンのような超高解像度で音を分析するタイプではありません。
むしろ、楽曲が持つ「味」や「空気感」、そして演奏の「熱量」といった、数値では測れない部分を巧みに表現することに長けており、古くからのGRADOファンも思わず唸るような、ブランドの哲学が凝縮されたサウンドです。
高音域の評価:リアルな刺激と滑らかさを両立したトランペットの表現力
高音域は、突き刺さる手前の絶妙な刺激と、心地よい滑らかさを兼ね備えています。
特にトランペットやサックスといった金管楽器、スネアドラムのスナップ音の表現力は圧巻です。
目の前で演奏されているかのような、容赦のないリアルな炸裂音が鼓膜に迫ってくる感覚は、このヘッドホンでしか味わえない快感と言えるでしょう。
ただし、楽曲や音量によってはその刺激が「ピーキー」と感じられることもあります。
このスリリングなバランスこそがGRADOサウンドの真骨頂であり、多くのファンを惹きつけてやまない魅力の源泉となっています。
中音域の評価:しっとり系ボーカルを艶やかに鳴らす生々しさ
中音域の素晴らしさは、特にボーカルの表現力において際立ちます。
エラ・フィッツジェラルドや宇多田ヒカルのような、少し低めでしっとりとした女性ボーカルは、非常に艶やかで品があり、息遣いまで伝わってくるかのような生々しい歌声を響かせます。
ボーカルはやや近めに定位し、ジャズやバラードを聴けば、その立体的な音場感と相まって、まるで自分だけのために歌ってくれているかのような深い没入感を得られるでしょう。
一方で、YOASOBIのようなハイトーンボーカルと電子音が多い楽曲では、ボーカルとシンセサイザーが重なり、キンキンとした刺激を強く感じやすいという側面も持ち合わせています。
低音域の評価:空気が震えるような立体的で豊かなパーカッション
低音域は、沈み込むような重低音で圧倒するタイプではなく、豊かに広がり空間を振動させるような、質感を重視した表現が特徴です。
レビュワーが共通して絶賛するのが、タムやコンガといったパーカッション(打楽器)の表現力です。
「ドゥオン」という空気が震えるようなリアルな迫力と、音が立体的に広がりながら消えていく余韻の美しさは、他のヘッドホンではなかなか味わえません。
サブベースの深い沈み込みは控えめなため、EDMなどの電子音楽には物足りなさを感じるかもしれませんが、アコースティック楽器のリアルな響きを求めるリスナーにとっては、この上なく魅力的な低音と言えます。
GRADO Signature S950の評判・口コミを多角的に分析
肯定的な評判・口コミ:「ジャズボーカルの空気感が最高」「打楽器の表現が唯一無二」
Signature S950の肯定的な評判として最も多く見られるのが、特定の音楽ジャンル、特にジャズやバラードとの相性の良さを絶賛する声です。
多くのレビュワーやユーザーから、「古いジャズ音源のスモーキーな空気感まで見事に再現してくれる」「パーカッションの生々しい響きは唯一無二」といった評価が寄せられています。
また、「ハイエンド機でありつつも、古き良き楽曲の雰囲気を壊さず、その魅力を最大限に引き出す」という点も高く評価されており、録音された場の雰囲気や空気感を大切にしたいオーディオファンから熱烈な支持を得ています。
否定的な評判・口コミ:「楽曲によっては中高域がピーキー」「解像度重視ではない」
一方で、注意点として挙げられているのが、中高域のピーキーさと解像度に関する指摘です。
「現代的なJ-POPやアニソンなど、高音域に情報が詰まった楽曲では、ボーカルやシンセが刺さるように感じることがある」というレビューが見られます。
これはS950の個性とも言えますが、聴く人や楽曲によってはデメリットになり得る部分です。
また、「すべての音を細かく分析して聴くような、解像度重視で買うヘッドホンではない」という意見も共通しています。
モニターヘッドホンのような分析的なサウンドを求めるユーザーには不向きかもしれません。
装着感はどう?スポンジ製イヤーパッドの快適性と長時間の使用感レビュー
装着感については、評価が分かれるポイントです。
GRADO伝統のスポンジ製イヤーパッド(Gクッション)は、耳を完全に覆わないオンイヤータイプで、通気性が良く蒸れにくいという大きなメリットがあります。
これにより、開放的で軽快な装着感を実現しています。
しかし、本体重量が約400gと決して軽くはないため、「長時間のリスニングでは頭頂部が痛くなってくる」という声も複数のレビューで見られました。
側圧は強すぎず適度なフィット感ですが、快適に使えるかどうかは個人の頭の形や慣れに左右される部分が大きいと言えそうです。
購入前に知るべきメリット・デメリット(おすすめな点と注意点)
おすすめな点①:ジャズやバラードなど「味」のある楽曲の雰囲気を最大限に引き出す表現力
Signature S950が持つ最大のメリットであり、おすすめしたい点は、楽曲が持つ「味」や「雰囲気」を最大限に引き出すその類まれな表現力です。
特に、録音環境の空気感まで含めて楽しみたい1950~70年代のジャズやブルース、しっとりとしたバラードといった楽曲では、他のヘッドホンでは味わえない感動的なリスニング体験を提供してくれます。
超高解像度サウンドとは異なるベクトルで、音楽の核心に触れるような深い感動を求める方にとって、これ以上ない選択肢となるでしょう。
おすすめな点②:GRADO史上初の着脱式ケーブル採用で広がるカスタマイズ性
GRADOの歴史において画期的とも言える、ケーブル着脱式(4ピンミニXLR端子)に対応したことも大きなメリットです。
これにより、断線時のケーブル交換が容易になっただけでなく、サードパーティ製のケーブルを含めたリケーブルによる音質チューニングが可能になりました。
さらに、後述する4.4mmバランス接続などへも対応しやすくなり、ユーザーが自身の再生環境や好みに合わせてヘッドホンをカスタマイズする楽しみが広がりました。
注意点①:万能機ではない!特定のジャンルに深くハマる個性的な音作り
購入前に必ず理解しておくべき注意点は、Signature S950が決して万能型のヘッドホンではないということです。
そのサウンドは非常に個性的で、得意なジャンルでは他を寄せ付けない圧倒的なパフォーマンスを発揮する一方、苦手なジャンルでは魅力が半減してしまう可能性があります。
あらゆる音楽を平均点以上で楽しみたいという方よりも、「特定の音楽を最高の音で聴きたい」という強いこだわりを持つ方にこそ向いているヘッドホンです。
注意点②:開放型特有の音漏れと遮音性|利用シーンは限られる?
本機は開放型(オープンエアー)構造を採用しているため、構造上、音漏れは非常に大きくなります。
また、外部の音を遮断する効果(遮音性)もほとんどありません。
このため、電車内やカフェ、図書館といった公共の場での使用は現実的ではなく、周りの騒音もそのまま聞こえてしまいます。
静かな自室など、完全にプライベートな空間で、音楽だけに集中できる環境での使用が前提となる点を留意しておく必要があります。
注意点③:バランスケーブルで真価を発揮?レビュワーが絶賛する音質変化とは
多くのレビューで共通して指摘されているのが、別売りの4.4mmバランスケーブルに交換することで、Signature S950のポテンシャルがさらに引き出されるという点です。
バランス接続に変更すると、音の分離感や定位が向上し、S950の魅力である躍動感がさらにアップする一方で、懸念点であった中高域のピーキーな感覚が少し抑えられ、より聴きやすくなると評価されています。
レビュワーの中には「バランスケーブル前提のチューニングではないか」と感じる人もいるほどで、S950の真価を味わうためには、バランス接続環境への追加投資も視野に入れる必要があるかもしれません。
GRADO Signature S950のスペックと価格情報
GRADO Signature S950のスペック詳細一覧表
GRADO Signature S950の主な仕様を以下の表にまとめました。
| 項目 | スペック |
|---|---|
| ドライバー構成 | 52mm口径ダイナミックドライバー |
| 形式 | オープンエアー |
| 再生周波数帯域 | 3.5 – 51.5kHz |
| インピーダンス | 38Ω |
| 音圧感度 | 117dB |
| ハウジング素材 | ブラジリアン・ウォールナット |
| ケーブル仕様 | スーパーアニール12芯OFCケーブル(着脱式) |
| ケーブル長 | 約1.85m |
| 入力端子 | 6.3mm標準プラグ(バリエーションモデルあり) |
| ハウジングコネクター | 4Pin mini XLR |
| 重量(ケーブル含まず) | 約400g |
| 付属品 | ヘッドホンケーブル, Ear Pad G, Ear Pad F |
価格はいくら?新品の価格と販売店(ヨドバシ・e☆イヤホン等)まとめ
GRADO Signature S950の希望小売価格は、352,000円(税込)です。
ハイエンドモデルにふさわしい価格設定となっています。
主な取り扱い販売店は、e☆イヤホン、ヨドバシカメラ、フジヤエービック、ビックカメラといった大手家電量販店やオーディオ専門店です。
店舗によっては試聴機が展示されている場合も多いため、この価格帯の製品としては、購入前に一度ご自身の耳で実力を確かめてみることを強く推奨します。
また、標準の6.3mmプラグモデルの他に、4.4mmバランスプラグや4pin XLRバランスプラグが付属するバリエーションモデルも同価格で販売されています。
まとめ:GRADO Signature S950 レビュー解説
本記事では、GRADO Signature S950の音質から評判、価格に至るまでを徹底的にレビュー解説しました。
録音された空気感や雰囲気を重視する、オーディオファン向けの逸品
結論として、Signature S950は、一般的な高解像度やフラットな特性を追い求めるのではなく、音楽が録音された場の空気感や、演奏者が込めた熱量といった「雰囲気」を深く味わいたい、真のオーディオファンにこそおすすめしたい逸品です。
特に、古き良きジャズの名盤や、情感豊かなバラード、パーカッションが躍動するワールドミュージックなどをこよなく愛する方であれば、他のどのヘッドホンでも得られない、唯一無二の感動的なリスニング体験が待っているでしょう。
現代的なPOPSやロックを聴くなら「Signature HP100 SE」も要検討
もし、あなたのリスニングスタイルが、現代的なJ-POPやロック、ハイトーンの女性ボーカル曲、電子音を多用したシンセポップが中心なのであれば、兄弟機である「Signature HP100 SE」の方がより満足度の高い選択となる可能性があります。
HP100 SEは、S950とは対照的に、よりシャープで硬質、現代的な楽曲の魅力を引き出すチューニングが施されています。
ご自身の音楽ライブラリと照らし合わせ、どちらの個性がよりマッチするかを比較検討することが重要です。
購入前に試聴は必須!後悔しないための最終チェックポイント
Signature S950は、その個性的なサウンドと高価な価格から、誰にでも安易におすすめできるヘッドホンではありません。
購入を成功させるための最も重要な最終チェックポイントは、ずばり「試聴」です。
この記事で解説したレビューや評判を一つの参考としながら、最後は必ずご自身の耳で、その音質、装着感、そして最も重要な「あなたが愛する音楽との相性」を確かめてください。
それが、後悔のない買い物をするための最も確実な方法です。
- GRADO Signature S950は伝統の木製ハウジングを採用したハイエンドモデルである
- ハウジングのブラジリアン・ウォールナット材は唯一無二の木目と優れた音響特性を持つ
- 音質はGRADOらしいシャープさと木の温かみを両立したナチュラルなトーンが特徴
- ジャズやバラードなど、録音の空気感を重視するアコースティックな楽曲再生に長ける
- 中高域は楽曲によってピーキーに感じられ、聴く人や音楽を選ぶ個性を持つ
- 高解像度を追求するのではなく、音楽の「味」や「雰囲気」を表現するのが得意
- 装着感は開放的だが、本体重量があるため長時間の使用には慣れが必要
- GRADO史上初のケーブル着脱式を採用し、リケーブルやバランス接続の楽しみが広がった
- 開放型のため音漏れが大きく、利用シーンは静かなプライベート空間に限られる
- 高価な製品であり、購入前には必ず試聴して自分の音楽との相性を確認することが不可欠
