ゲーミングPCを購入しようとした際、以前よりも価格が上がっていることに驚く方が増えています。
パーツショップやBTOメーカーのサイトを見ても、メモリやSSDの値上がりが目立ち、予算内で希望のスペックが組めないという悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
「今は時期が悪いから待つべきか」「これ以上上がる前に買うべきか」という判断は、現在の複雑な市場状況においては非常に難しくなっています。
この記事では、現在の価格上昇の背景にある深刻な理由や、2026年にかけた価格推移の予測について詳しく解説します。
ゲーミングPCの買い時を見極め、後悔のない選択をするための判断材料としてお役立てください。
2025年～2026年 ゲーミングPC価格高騰の現状と真実
メモリ価格が3倍？パーツ市場で起きている異常事態
PCパーツ市場では現在、メモリ（DRAM）の価格が異常なペースで上昇しています。
2024年の価格と比較して、DDR5メモリなどの主要な規格では価格が2倍から3倍近くに跳ね上がっているケースも確認されています。
これは一時的な需給の乱れではなく、市場全体を揺るがす構造的な変化が起きているためです。
特に自作PCユーザーやアップグレードを検討していた層にとっては、予算計画が根本から崩れるほどのインパクトを与えています。
かつては数千円で手に入っていた容量のメモリが、数万円単位の出費を強いる状況となっており、自作PCだけでなく完成品PCの価格構造にも大きな影響を及ぼしています。
ドスパラやパソコン工房などBTOメーカーへの値上げ影響
パーツ単体の価格上昇は、当然ながらドスパラやパソコン工房といったBTOメーカーの販売価格にも波及しています。
メーカー側は大量仕入れによってコストを抑える努力を続けていますが、仕入れ原価の上昇分をすべて吸収することは困難な状況です。
その結果、同等のスペックを持つゲーミングPCであっても、数ヶ月前と比較して数万円単位で価格が改定されるケースが増えています。
また、価格を据え置くために、搭載されるメモリやSSDのメーカーを変更したり、標準構成のスペックを調整したりする動きも見られます。
以前と同じ予算感でPCを探すと、ワンランク下の性能しか手に入らないという事態が現実のものとなっています。
SSDやHDDも高騰中！ストレージ不足の深刻な実態
値上がりの波はメモリだけでなく、データを保存するSSDやHDDといったストレージ製品にも押し寄せています。
特に高速な読み書きが可能なNVMe SSDの価格上昇が顕著です。
HDDに関しても、大容量モデルを中心に価格が上昇傾向にあり、データ保存用として安価に追加することが難しくなっています。
この背景には、AI開発やデータセンターの拡張による世界的なストレージ需要の爆発的増加があります。
企業向けの需要が優先されることで、一般消費者向けの供給量が絞られ、結果として市場価格の高騰を招いています。
ストレージはゲームのインストールに不可欠なパーツであるため、ゲーミングPC全体のコスト増に直結しています。
なぜゲーミングPCやパーツが高騰しているのか？4つの主要原因
【AI需要】データセンター向けHBM優先で一般向けメモリが後回しに
現在の価格高騰を引き起こしている最大の要因は、生成AIブームに伴うデータセンター需要の急増です。
AIの学習や推論には、広帯域メモリ（HBM）と呼ばれる超高性能なメモリが大量に必要とされます。
Samsung、SK Hynix、Micronといった主要な半導体メーカーは、利益率が高く需要が旺盛なHBMの生産にリソースを集中させています。
その結果、私たちが普段使用しているゲーミングPC向けのDDR5やDDR4メモリの生産ラインが縮小され、供給不足に陥っています。
メーカーにとっては、一般向けメモリを作るよりもAI向けメモリを作った方が圧倒的に収益性が高いため、この傾向は当面続くと見られています。
【Micron撤退】Crucialブランド終了が市場に与える衝撃と供給不足
市場にさらなる衝撃を与えたのが、半導体大手Micronによる消費者向けブランド「Crucial（クルーシャル）」のメモリ・ストレージ事業からの撤退発表です。
Crucialは長年にわたり、高品質でコストパフォーマンスに優れたメモリやSSDを提供し、多くのユーザーに愛用されてきました。
この主要プレイヤーが一般向け市場から姿を消すことは、供給元の選択肢が減ることを意味します。
Micronもまた、成長著しいデータセンター向けのビジネスへ注力するためにリソースをシフトする決断を下しました。
供給量が減る一方で需要が変わらなければ、価格競争の原理が働きにくくなり、市場価格はさらに上昇しやすくなります。
【生産調整】メーカーの「学習」による意図的な供給絞り込み
過去のメモリ市場では、好況時に各社が増産しすぎて供給過剰になり、価格が暴落するというサイクルが繰り返されてきました。
しかし、現在の半導体メーカーは過去の失敗から学び、慎重な生産調整を行っています。
需要が増えたからといってすぐに工場をフル稼働させるのではなく、在庫過多による値崩れを防ぐために、意図的に供給量をコントロールしているのです。
この「作らないことで価格を維持する」という戦略により、市場は常に品薄感を帯びた状態が続いています。
ユーザー側が価格下落を期待して待っていても、メーカー側が価格を下げないように生産量を絞っているため、以前のような安値には戻りにくい構造になっています。
【円安・インフレ】ドル円相場と輸送コスト上昇のダブルパンチ
PCパーツの多くは海外から輸入されているため、為替相場の影響をダイレクトに受けます。
1ドル150円台前後で推移する円安基調は、日本国内での販売価格を大きく押し上げる要因です。
海外でのドル建て価格が変わらなくても、円安が進めば日本での価格は自動的に上がってしまいます。
加えて、世界的なインフレによる原材料費やエネルギー価格の上昇、物流コストの増加も価格に転嫁されています。
これらのマクロ経済的な要因が複合的に重なり、ゲーミングPCの価格を高止まりさせています。
ゲーミングPCの値上げはいつまで続く？2026年の価格推移予測
専門家も指摘する「年単位の品薄」と将来性の見通し
多くの業界専門家やアナリストは、現在の品薄と高騰が短期的なものではなく、年単位で続くと予測しています。
AI需要の拡大はまだ初期段階にあり、今後数年間はデータセンターへの投資が加速し続ける見込みです。
そのため、一般向けメモリやストレージの供給が劇的に改善する可能性は低く、2026年にかけても価格は高値圏で推移、あるいはさらに上昇する恐れがあります。
「いつか下がるだろう」という楽観的な見通しを持ちにくいのが現状です。
長期的な視点で見れば、PCパーツは「高いのが当たり前」という新しい価格基準に移行しつつあると言えるでしょう。
PCパーツが安くなる時期は来るのか？過去の傾向との違い
これまでは、新しい規格が登場したり、生産技術が向上したりすることで、時間の経過とともにパーツ価格は下落するのが一般的でした。
しかし、今回はAI特需という特殊かつ強力な要因が絡んでいるため、過去のセオリーが通用しません。
「時期が悪い」と購入を見送っている間に、さらに価格が上がってしまったというケースが多発しています。
また、メーカーによる生産調整が機能しているため、在庫処分による投げ売りセールなども期待しにくい状況です。
安くなる時期を待つこと自体が、機会損失のリスクを高める結果になりかねません。
DDR4は生産終了へ向かうため逆に値上がりする可能性
最新規格のDDR5が高いからといって、一世代前のDDR4を選べば安く済むとは限りません。
メーカー各社はDDR5やHBMへの移行を進めており、DDR4の生産ラインは縮小、あるいは終了（EOL）へと向かっています。
市場流通量が減っていく中で、保守用や増設用としてのDDR4需要が残っているため、需給バランスが崩れて逆に値上がりする現象が起きています。
「枯れた技術だから安い」という常識が覆され、古い規格のパーツ確保にすら高額なコストがかかる可能性があります。
今後、DDR4搭載のPCを維持・修理するコストも上昇していくことが予想されます。
「時期が悪い」は本当か？ゲーミングPCの買い時と買い替え時期
結論：「欲しい時が買い時」ではなく「今すぐ確保」が推奨される理由
これまでのPC市場では「欲しい時が買い時」と言われてきましたが、現在は「今すぐ確保」が最も合理的な判断と言えます。
今後、価格が下がる要素よりも上がる要素の方が圧倒的に多いためです。
特にMicronのコンシューマー撤退の影響が本格化し、市場在庫が枯渇し始めれば、さらなる価格高騰は避けられません。
迷っている時間そのものが、将来的な購入コストを引き上げるリスクになります。
必要なスペックが決まっているのであれば、これ以上の値上がりを待つよりも、現在の価格で手を打つのが賢明です。
ブラックフライデーや初売りセールを待つと在庫がなくなるリスク
年末のブラックフライデーや新年の初売りセールを待つ方も多いですが、今年は注意が必要です。
供給量が限られているため、人気モデルやコストパフォーマンスの高い製品は、セールの開始を待たずに在庫切れになる可能性があります。
また、元々の価格設定が上がっているため、セールで多少値引きされたとしても、数ヶ月前の通常価格より高いということも起こり得ます。
BTOメーカー側もパーツ確保に苦労しており、受注停止や納期の大幅な遅延が発生するリスクも考慮すべきです。
確実に入手したいのであれば、セールのタイミングにこだわりすぎない方が安全です。
Windows 10サポート終了需要と重なりさらなる高騰の懸念
2025年10月にはWindows 10のサポート終了が予定されています。
これに伴い、企業や個人のPC買い替え需要（特需）が爆発的に発生すると予想されます。
この買い替え需要と、現在のパーツ不足・AI需要が重なることで、2025年後半から2026年にかけてPC市場全体が極度な品薄状態になる懸念があります。
需要がピークに達する時期には、価格高騰だけでなく、そもそもモノがないという事態も想定されます。
この「特需」の波に巻き込まれる前に、早めに購入を済ませておくことが、結果的に最も安く、確実にPCを手に入れる方法となります。
ゲーミングPCが高くて買えない時の対策と選び方
最新ハイエンドではなくミドルスペックでコストを抑える
予算が厳しい場合は、最高性能を目指すのではなく、身の丈に合ったミドルスペックモデルを狙うのがおすすめです。
例えば、最新のRTX 4060などを搭載したモデルであれば、フルHD環境でのゲームプレイには十分な性能を持っています。
ハイエンドモデルはパーツ単価の上昇幅も大きいため、コストパフォーマンスが悪化しやすい傾向にあります。
自分のプレイしたいゲームや用途を整理し、過剰なスペックを削ぎ落とすことで、高騰下でも納得のいく価格でPCを購入できます。
画質設定を調整すれば、ミドルスペックでも多くの最新ゲームを快適に楽しむことが可能です。
あえて型落ちを狙うべきか？中古PCのリスクと注意点
価格を抑えるために中古PCを検討する方もいますが、慎重な判断が必要です。
中古市場には、マイニングで酷使されたグラフィックボードを搭載したPCや、消耗したパーツが含まれているリスクがあります。
特に電源ユニットやストレージは消耗品であるため、購入後すぐに故障して修理費がかさむ可能性も否定できません。
また、メーカー保証が付かない、あるいは期間が短いことが多いため、万が一のトラブル時に自己解決できる知識が求められます。
安心を買うという意味では、セール時期を狙った新品の型落ちモデルや、メーカー認定の再生品などを選ぶ方が無難です。
分割払いや下取りキャンペーンを賢く活用する
一括での支払いが難しい場合は、BTOメーカーが提供している分割払い手数料無料キャンペーンを活用しましょう。
多くのメーカーで36回から48回払いまでの金利手数料を負担してくれるキャンペーンを実施しています。
これにより、月々の支払いを数千円程度に抑えつつ、今すぐ必要なスペックのPCを手に入れることができます。
また、現在使用しているPCがある場合は、下取りキャンペーンを利用することで、購入価格から数千円から数万円の値引きを受けられる場合があります。
これらの制度を組み合わせることで、手元の現金を残しつつ、高騰するゲーミングPCを購入するハードルを下げることができます。
まとめ：ゲーミングPC 高騰に関する重要ポイント
- メモリ価格は昨年比で2倍から3倍に高騰しており異常事態が続いている
- BTOメーカーも原価上昇によりPC本体価格の値上げを余儀なくされている
- SSDやHDDなどのストレージもデータセンター需要により不足している
- 価格高騰の主因はAI向けのHBM生産優先による一般向けメモリの供給減だ
- MicronのCrucialブランド撤退が供給不足と価格上昇に拍車をかけている
- メーカーの生産調整により今後も価格が下がる要素は極めて少ない
- 円安や輸送コスト増も日本国内のPC価格を高止まりさせている要因だ
- 2026年にかけても品薄と高騰は続く可能性が高く待つメリットは薄い
- Windows 10終了に伴う買い替え特需と重なりさらなる入手難が予想される
- 欲しいと思った今が決断の時であり早めの確保が結果的に節約になる
