光造形3Dプリンターで美しい造形物を出力した後、多くの人が直面するのが「後処理」という少し面倒な工程です。
未硬化のレジンを洗浄し、さらにUVライトで二次硬化させるこの作業は、作品の品質を決定づける重要なステップでありながら、時間と手間がかかるのが現実です。
特に、洗浄に使うアルコールや洗浄液の扱いや臭い、均一な二次硬化の難しさに悩んでいる方も少なくないでしょう。
この記事では、そんな後処理の悩みを解決してくれると評判の洗浄硬化機「ELEGOO Mercury Plus 2.0」について、その特徴やスペック、価格から実際のユーザーの評判・口コミまで、購入を検討している方が知りたい情報を網羅的にレビュー解説します。
洗浄と硬化を1台でこなす本製品が、あなたの3Dプリントライフをどのように変える可能性があるのか、ぜひ最後までご覧ください。
ELEGOO Mercury Plus 2.0の基本をレビュー解説
ELEGOO Mercury Plus 2.0の主な特徴
ELEGOO Mercury Plus 2.0は、光造形3Dプリンターの後処理を劇的に効率化するために設計された多機能なマシンです。
この製品が持つ最大の魅力は、後処理に必要な「洗浄」と「二次硬化」という2つの主要な機能を1台に集約している点にあります。
これにより、これまで別々の機器や手作業で行っていたプロセスを、スマートかつ省スペースで完結させることが可能になります。
また、安全性や静音性にも配慮された設計が施されています。
例えば、洗浄時には密閉性の高い容器を使用することで、アルコールなどの洗浄液の揮発や気になる臭いを大幅に抑制します。
硬化時には、UV光を99.95%カットする黄色いカバーが目を保護してくれるため、安心して作業に集中できるでしょう。
さらに、超音波式ではなくモーターによる水流で洗浄するため動作音が非常に静かで、夜間の作業や集合住宅での使用にも適しています。
操作も直感的で、タッチパネル式のボタンで洗浄・硬化モードの切り替えやタイマー設定(0〜30分)が簡単に行えるため、3Dプリンターの周辺機器を初めて使う方でも迷うことなく扱える点も大きな特徴と言えます。
洗浄と硬化を1台でこなす2in1機能
ELEGOO Mercury Plus 2.0が多くのユーザーから支持される最も大きな理由が、この「洗浄と硬化の2in1機能」です。
この機能により、ユーザーは時間、スペース、そしてコストの三つの面で大きなメリットを享受できます。
まず、最大の利点は省スペース性です。
通常、後処理を効率化しようとすると、洗浄用の超音波洗浄機と、硬化用のUVライト(硬化機)の2台をそれぞれ用意する必要がありました。
しかし、Mercury Plus 2.0なら、本体サイズ(200×200×352mm)という、3Dプリンター本体と同程度のスペースさえ確保すれば、その両方の役割を果たしてくれます。
作業スペースが限られている方にとっては、非常に魅力的なポイントです。
機能の切り替えも非常にシンプルです。
洗浄を行う際は専用の洗浄バケツをセットし、硬化を行う際はそのバケツを取り外して付属の硬化用ターンテーブルを設置するだけです。
この簡単な手順で、一台のマシンが全く異なる二つの役割をこなします。
ただし、この2in1機能には注意点も存在します。
それは、洗浄モードから硬化モードへ切り替える際に、洗浄液で満たされたバケツを取り外す必要があることです。
洗浄液(IPAなど)をなみなみと入れた状態のバケツはかなりの重量になるため、持ち運びや保管には少し手間を感じるかもしれません。
洗浄と硬化を同時に並行して行いたい場合は、洗浄機と硬化機が別々になっている「Mercury X Bundle」のようなセパレートタイプの方が適している場合もあります。
ELEGOO Mercury Plus 2.0のスペック
製品の購入を検討する上で、具体的なスペックの把握は欠かせません。
ELEGOO Mercury Plus 2.0がご自身の作業環境や使用している3Dプリンターに適しているか、以下のスペック表でご確認ください。
項目 | スペック詳細 |
---|---|
制御方法 | タッチボタン |
光源 | 405nm UV LED 16個 |
定格電力 | 48W |
入力電圧 | 100V/240V 50/60Hz |
タイマー設定時間 | 0-30分 |
本体サイズ | 200mm × 200mm × 352mm |
最大硬化サイズ | 直径140mm × 高さ165mm |
最大洗浄サイズ(プラットフォームあり) | 124mm × 90mm × 110mm |
最大洗浄サイズ(プラットフォームなし) | 131mm × 90mm × 220mm |
本体重量 | 3.8kg |
特に注目すべきは「最大洗浄サイズ」です。
「プラットフォームあり」のサイズは、3Dプリンターのビルドプラットフォームに造形物を付けたまま洗浄する場合の上限サイズを示します。
ご自身のプリンターのプラットフォームがこのサイズに収まるか、事前に確認することが重要です。
もし収まらない場合でも、「プラットフォームなし」のサイズ内で収まる造形物であれば、プラットフォームから取り外した後に付属の洗浄カゴに入れて洗浄することが可能です。
また、UVライトの波長は405nmとなっており、これは市販されているほとんどの光造形用レジンの硬化に適した標準的な波長です。
タイマー機能も0分から30分まで細かく設定できるため、レジンの種類や造形物の大きさに応じて最適な硬化時間を選ぶことができ、過剰露光による黄変や劣化を防ぎます。
ELEGOO Mercury Plus 2.0の価格
ELEGOO Mercury Plus 2.0の価格は、その機能性を考慮すると非常にコストパフォーマンスに優れた設定になっています。
Amazonなどの主要なオンラインストアでは、おおよそ14,000円前後で販売されていることが一般的です(価格はセールや時期によって変動します)。
この価格をどう捉えるかは、比較対象によって変わってくるでしょう。
例えば、後処理をできるだけ安価に済ませたい場合、100円ショップなどで購入できる密閉タッパーと、安価なネイル用のUVライトを組み合わせれば、約3,000円程度で簡易的な洗浄・硬化環境を整えることも可能です。
しかし、この方法では手作業の手間や洗浄液の臭い、均一な硬化の難しさといった課題が残ります。
一方で、同等レベルの自動化と効率を求め、6Lクラスの「超音波洗浄機」と専用の「二次硬化機」をそれぞれ個別に購入する場合、合計金額は20,000円を超えることも珍しくありません。
この点を考慮すると、Mercury Plus 2.0の約14,000円という価格は、手作業の不便さを解消しつつ、本格的な専用機を2台揃えるよりもコストを抑えられる、非常にバランスの取れた選択肢であると言えます。
「後処理の手間をお金で解決したい、でも出費はなるべく抑えたい」と考える多くの3Dプリンターユーザーにとって、この価格設定は大きな魅力となるはずです。
ELEGOO Mercury Plus 2.0の購入前にレビュー解説
ELEGOO Mercury Plus 2.0のおすすめな点
ELEGOO Mercury Plus 2.0には、日々の3Dプリント作業をより快適で効率的なものにする、数多くのおすすめポイントがあります。
最大のメリットは、やはり後処理の「面倒」から解放される点です。
これまで手作業でブラシを使ったり、容器を振ったりして洗浄していた時間を、機械に任せることができます。
洗浄を自動で行っている間に、次のプリント準備やレジンタンクの清掃など、他の作業を進められるため、全体の作業時間を大幅に短縮できるのです。
次に、静音性の高さも特筆すべき点です。
洗浄機というと「ジーン」という高い音が鳴り響く超音波式を想像するかもしれませんが、本製品はモーターでプロペラを回して水流を起こす方式を採用しています。
そのため、動作音は非常に静かです。
アパートやマンションなどの集合住宅に住んでいる方や、家族が寝静まった深夜に作業することが多い方でも、周囲を気にすることなく使用できるのは大きな利点でしょう。
さらに、安全性への配慮もおすすめできるポイントです。
密閉できる洗浄バケツは、洗浄液であるIPA(イソプロピルアルコール)などの揮発と、それに伴う強い臭いを効果的に防ぎます。
また、UVカットカバーは硬化中に発生する紫外線を99.95%もブロックしてくれるため、目を保護し、安全に作業を見守ることができます。
これらの機能が、1台にコンパクトにまとまっている省スペース性も相まって、初心者からヘビーユーザーまで、幅広い層におすすめできる一台となっています。
ELEGOO Mercury Plus 2.0の注意点
多くのメリットがある一方で、ELEGOO Mercury Plus 2.0を購入する前に知っておくべき注意点もいくつか存在します。
これらを理解しておくことで、購入後の「思っていたのと違った」という事態を避けられます。
第一に、洗浄液の量がかさむ点です。
本製品は、洗浄バケツの底にあるプロペラで水流を起こす仕組み上、造形物を洗浄するためにはある程度の深さまで洗浄液を満たす必要があります。
手作業で洗浄する場合に比べて多くの洗浄液(IPAやエタノールなど)を一度に消費するため、ランニングコストが少し高くなる可能性があります。
特に大きな造形物を洗浄する場合は、それなりの量を覚悟する必要があるでしょう。
第二に、水洗いレジンとの相性です。
Amazonの商品説明にも記載がありますが、この洗浄機能は「水洗い可能な樹脂で印刷された3Dモデルにはあまり適しておらず、流水で洗浄する方がおすすめ」とされています。
水洗いレジンは水との親和性が高くないと、水流だけでは十分にレジンを洗い流せない場合があるため、主にご自身が水洗いレジンを使用している場合は注意が必要です。
第三に、洗浄バケツの取り扱いです。
前述の通り、洗浄液を多く入れるため、満タンに近い状態のバケツはかなり重くなります。
洗浄モードから硬化モードへ切り替える際に、この重いバケツを持ち上げて移動させるのが、人によっては少し苦痛に感じるかもしれません。
最後に、洗浄カゴの網目が比較的粗いという点です。
非常に小さいパーツや細かい部品を洗浄する場合、網目からすり抜けて下に落ちてしまう可能性があります。
その場合は、別途ステンレス製の茶こしや、網目の細かいネットなどを活用する工夫が必要になるかもしれません。
他社製プリンターとの互換性について
「ELEGOO製品だから、ELEGOOのプリンターしか使えないのでは?」と心配されるかもしれませんが、結論から言うと、ELEGOO Mercury Plus 2.0は多くの他社製光造形3Dプリンターと組み合わせて使用することが可能です。
しかし、その互換性にはいくつかのレベルがあり、特に注意すべきポイントが存在します。
まず、二次硬化機能については、ほぼ全てのメーカーのプリンター・レジンと互換性があると考えて問題ありません。
硬化に必要なUV光の波長は405nmで、これは業界の標準的な仕様です。
そのため、お使いのレジンが特殊なものでない限り、メーカーを問わずしっかりと硬化させることができます。
問題は洗浄機能、特に「ビルドプラットフォームに造形物を付けたまま洗浄する」場合の互換性です。
この洗浄方法で使用する付属のプラットフォームブラケット(支柱)は、ELEGOO Marsシリーズのような小型プリンターのプラットフォーム形状に最適化されています。
そのため、Anycubic社のPhotonシリーズや、その他のメーカーのプリンター、さらには同じELEGOOでも大型のSaturnシリーズや、新型のMars 4シリーズなど、プラットフォームのサイズや形状が異なるモデルでは、このブラケットがうまく取り付けられなかったり、洗浄バケツにプラットフォームごと収まらなかったりするケースが報告されています。
この場合、プラットフォームから造形物を取り外してから、付属の洗浄カゴに入れて洗浄するという方法をとれば問題なく使用できます。
ご自身の使い方として「プラットフォームごと丸洗いしたい」という希望が強い場合は、購入前に必ずお使いのプリンターのビルドプラットフォームの寸法と、本製品の「最大洗浄サイズ(プラットフォームあり):124mm×90mm×110mm」を比較検討することが非常に重要です。
ELEGOO Mercury Plus 2.0の評判・口コミ
製品の実際の使い心地を知る上で、ユーザーからの評判や口コミは非常に参考になります。
ELEGOO Mercury Plus 2.0は多くのユーザーに使用されており、様々な声が寄せられています。
良い評判・口コミ
肯定的な意見として最も多く見られるのは、やはり「後処理が圧倒的に楽になった」という声です。
- 「手洗いしていた頃の苦労は何だったのかと思うくらい快適。IPAの臭いを吸わなくて済むのが最高」
- 「洗浄と硬化がこれ一台で済むので、場所も取らないし見た目もスッキリする」
- 「動作音がとても静かで、夜でも気兼ねなく使える。超音波洗浄機にしなくて良かった」
- 「タイマーをセットしておけば、他の作業ができるので時間を有効活用できるようになった」
このように、作業効率の向上、快適性、静音性を高く評価する声が多数を占めており、多くのユーザーが導入したことによる満足感を得ていることがうかがえます。
気になる評判・口コミ
一方で、いくつかの具体的な課題を指摘する声も見られます。
- 「ELEGOO Mars 4のプラットフォームはサイズが合わず、プレートごと洗浄できなかった。商品説明をよく確認すべきだった」
- 「洗浄バケツの蓋のロックが少し固くて、開け閉めにコツがいる」
- 「洗浄液が結構な量必要になる。また、洗浄液を入れるとバケツが重くて、硬化モードへの切り替えが少し億劫」
- 「洗浄カゴの網目が粗いので、小さいパーツは100均の茶こしに入れて洗っている」
これらの口コミは、本製品の注意点として挙げた内容と一致するものが多く、特にプリンターとの互換性や、物理的な使い勝手に関する部分で不便を感じるケースがあるようです。
これらの良い点と気になる点の両方を踏まえることで、ご自身の環境や使い方に本当にマッチする製品なのかを、より正確に判断できるでしょう。
まとめ:ELEGOO Mercury Plus 2.0のレビュー解説
- ELEGOO Mercury Plus 2.0は洗浄と二次硬化の2つの機能を1台に集約したマシンである
- 1台2役のため、別々に機器を揃えるより省スペースでコストを抑えられる
- 価格は約14,000円前後で、機能性を考えるとコストパフォーマンスは高い
- 水流で洗浄する方式のため、超音波式に比べて動作音が非常に静かである
- 密閉できる洗浄バケツとUVカットカバーにより、安全性にも配慮されている
- 操作はタッチボタン式で直感的に行え、タイマー設定も可能である
- 他社製プリンターでも使用可能だが、プラットフォームごと洗浄する際の互換性には注意が必要
- 洗浄にはある程度の量の洗浄液が必要で、ランニングコストが少し高くなる可能性がある
- 水洗いレジンの洗浄にはあまり適しておらず、流水洗浄が推奨される場合がある
- 多くのユーザーが後処理の効率化に満足しているが、一部で使い勝手に関する指摘もある