IntelからASUSへと引き継がれ、新たな進化を遂げたミニPC「NUC」。
その最新モデル「ASUS NUC 14 Pro」は、AI時代に対応するIntel Core Ultraプロセッサを搭載し、そのコンパクトな筐体からは想像もつかないほどの高性能を発揮すると話題です。
しかし、ベアボーンキットが基本となるため、「実際の性能はどれくらい?」「組み立ては難しい?」「購入前に知っておくべき注意点はない?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな「ASUS NUC 14 Pro」のレビュー解説として、その特徴から詳細なスペック、各種ベンチマークテストの結果、そしてユーザーからのリアルな評判や注意点まで、あらゆる角度から徹底的に検証していきます。
この記事を読めば、ASUS NUC 14 Proがあなたの期待に応える一台なのか、そのすべてが明らかになります。
ASUS NUC 14 Proのレビュー解説|特徴とスペック
ASUS NUC 14 Proの主な特徴
ASUS NUC 14 Proは、Intelが長年培ってきたミニPCのノウハウと、ASUSの技術力が融合して生まれた、新世代のコンパクトPCです。
この製品の最大の特徴は、最新のIntel Core Ultraプロセッサを搭載し、AI処理能力と省電力性を飛躍的に向上させた点にあります。
その理由は、CPU、GPUに加えて、AI処理に特化したエンジンであるNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)を新たに内蔵したことにあります。
これにより、従来のミニPCでは難しかったAIを活用したアプリケーションも、低消費電力で快適に動作させることが可能になりました。
また、Intelから引き継がれた信頼性の高い設計思想はそのままに、ツールレスで内部にアクセスできるシャーシなど、ASUSならではのユーザーフレンドリーな改良が加えられています。
さらに、法人向けにはIntel vPro Enterpriseに対応したモデルも用意されており、高度なセキュリティと管理機能を提供します。
このように、ASUS NUC 14 Proは、単に小型で高性能なだけでなく、AI時代を見据えた先進性と、ビジネスユースにも応える信頼性を兼ね備えた、非常に汎用性の高いミニPCとして設計されているのです。
ASUS NUC 14 Proのスペック詳細
ASUS NUC 14 Proは、ユーザーが自身の用途や予算に合わせて柔軟に構成できるベアボーンキットを基本としています。
そのため、購入時にはメモリやストレージ、OSが含まれていない点に注意が必要ですが、その分、最新規格のパーツに対応した高い拡張性を誇ります。
CPUは、省電力モデルの「Core 3 100U」から、高性能な「Core Ultra 7 165H」まで、幅広いラインナップから選択可能です。
メモリはDDR5-5600規格のSO-DIMMに対応し、2つのスロットで最大96GBまで搭載できます。
ストレージは高速なPCIe Gen4に対応したM.2スロットを2基備え、モデルによっては2.5インチのSATAドライブも追加できるため、容量と速度を両立した構成も可能です。
以下に、ASUS NUC 14 Proの主要なスペックをまとめました。
項目 | スペック詳細 |
---|---|
CPU | Intel Core Ultra 7 / 5 / 3 シリーズ |
GPU | Intel Arc Graphics (Core Ultra) / Intel Graphics (Core 3) |
メモリ | DDR5-5600 SO-DIMM ×2 (最大96GB) |
ストレージ | M.2 2280 PCIe Gen4x4 SSDスロット ×1 M.2 2242 PCIe x4 NVMe SSDスロット ×1 2.5インチSATAベイ ×1 (Tallモデルのみ) |
有線LAN | 2.5GBASE-T |
無線通信 | Wi-Fi 6E, Bluetooth 5.3 |
前面ポート | USB 3.2 Gen2x2 Type-C ×1, USB 3.2 Gen2 Type-A ×2 |
背面ポート | Thunderbolt 4 ×2, USB 3.2 Gen2 Type-A ×1, USB 2.0 Type-A ×1, HDMI 2.1 ×2 |
映像出力 | 最大4画面同時出力対応 |
本体サイズ | Slim: 117×112×37mm Tall: 117×112×54mm |
重量 | Slim: 約480g~ Tall: 約570g~ |
このように、非常にコンパクトな筐体ながら、デスクトップPCに匹敵するほどの豊富なインターフェースと高い拡張性を備えているのが、ASUS NUC 14 Proの大きな魅力です。
伝統を受け継ぐデザインと豊富なインターフェース
ASUS NUC 14 Proは、Intel時代から続くNUCの伝統的な「4×4インチ」というコンパクトなフットプリントを忠実に受け継いでいます。
このサイズ感は、デスク上のスペースを圧迫せず、モニターの背面にVESAマウントで取り付けることも可能で、非常に自由な設置ができます。
デザインは、Intel NUC 13 Proシリーズを踏襲したシンプルでミニマルなもので、どんな環境にも自然に溶け込みます。
一方で、上位モデルの「NUC 14 Pro+」では、陽極酸化アルミニウムシャーシを採用した、より高級感のあるモダンなデザインが採用されており、所有欲を満たしてくれます。
このコンパクトな筐体に、驚くほど豊富なインターフェースが詰め込まれているのが本機の特長です。
充実の接続ポート
- Thunderbolt 4 (USB4) ×2: 最大40Gbpsの高速データ転送、USB PDによる給電(非対応)、そしてDisplayPort映像出力に対応する万能ポートを2基も搭載。外付けGPUボックスや高速ストレージの接続など、将来的な拡張性も万全です。
- HDMI 2.1 ×2: Thunderbolt 4ポートと合わせることで、最大4台の4Kモニターへ同時に映像出力が可能。広大な作業領域を必要とするクリエイターやトレーダーにも最適です。
- 高速USBポート: 前面には最大20GbpsのUSB 3.2 Gen2x2 Type-Cポートも備え、ポータブルSSDなどとの高速なデータ交換を実現します。
- 高速ネットワーク: 有線LANは2.5Gbpsに対応し、無線も最新規格のWi-Fi 6Eをサポート。大容量データのダウンロードやオンラインでの共同作業もスムーズに行えます。
これらの豊富なインターフェースにより、USBハブなどを別途用意することなく、ほとんどの周辺機器を直接接続できる高い利便性を実現しています。
ASUS NUC 14 Proのおすすめな点
ASUS NUC 14 Proは、その高い性能と拡張性から、幅広いユーザーにおすすめできる非常に優れたミニPCです。
特に、「省スペースでパワフルな環境を構築したい」「信頼性とサポートを重視したい」「自分の用途に合わせてPCをカスタマイズしたい」といったニーズを持つ方には最適な選択肢となります。
こんな方におすすめ
- ビジネスユーザー・開発者:
Intel vPro Enterprise対応モデルを選択すれば、高度なセキュリティとリモート管理機能を利用できます。コンパクトなため、オフィスのデスクでも場所を取らず、静音性も高いため作業に集中できます。 - クリエイター:
Thunderbolt 4ポートを2基搭載しているため、高速な外付けストレージや4Kモニター、ペンタブレットなど、多くの周辺機器を同時に接続できます。Core Ultraプロセッサの高い処理能力と合わせ、写真編集や動画編集といったクリエイティブな作業も快適にこなせます。 - リビングPCとして:
4Kの4画面出力に対応し、非常に静かに動作するため、リビングのテレビに接続して高画質な動画コンテンツを楽しむメディアセンターとしても最適です。デザインもシンプルで、インテリアの邪魔をしません。 - PC自作入門者・カスタマイズ好き:
ベアボーンキットが基本なので、メモリやSSDを自分で選んで組み込む楽しみがあります。ツールレスで内部にアクセスできる設計になっており、比較的簡単に組み立てやメンテナンスが可能です。
このように、ASUS NUC 14 Proは、その汎用性の高さと信頼性から、仕事からプライベートまで、あらゆるシーンで活躍するポテンシャルを秘めた一台と言えるでしょう。
ASUS NUC 14 Proのレビュー解説|性能と評価
ASUS NUC 14 Proのベンチマークスコア
ASUS NUC 14 Proの性能を客観的に評価するため、各種ベンチマークソフトを用いてその実力を測定しました。
結論として、最新のIntel Core Ultraプロセッサを搭載した本機は、前世代のNUC 13 Proから飛躍的な性能向上を遂げており、ミニPCのカテゴリにおいてトップクラスのパフォーマンスを発揮します。
CPU性能 (CINEBENCH R23)
CPUの純粋な処理能力を測る「CINEBENCH R23」では、上位モデルのCore Ultra 7 165H搭載機が、マルチコアテストで「16,655 pts」という非常に高いスコアを記録しました。
これは、一世代前のCore i7-1360Pのスコア(約12,000 pts)を大幅に上回るものであり、デスクトップ向けのメインストリームCPUに迫る性能です。
CPU | マルチコアスコア | シングルコアスコア |
---|---|---|
Core Ultra 7 165H | 16,655 pts | 1,800 pts |
Core i7-1360P | 12,034 pts | 1,926 pts |
総合性能 (PCMark 10)
Webブラウジングやビデオ会議、オフィスソフトの操作といった日常的な作業の快適さを示す「PCMark 10」の総合スコアも非常に優秀です。
特に、写真や動画編集などのコンテンツ制作能力を示す「Digital Content Creation」のスコアが大きく向上しており、クリエイティブな用途にも十分対応できることがわかります。
3Dグラフィックス性能 (3DMark)
内蔵GPUがIntel Arc Graphicsに進化したことで、3D描画性能は劇的に向上しました。
DirectX 12ベースのテスト「Time Spy」では、Core Ultra 7 165H搭載機が「3,000」を超えるスコアを記録。
これは、旧世代の内蔵GPU(Intel Iris Xe Graphics)の約2倍に相当し、エントリークラスの単体グラフィックボード「GeForce GTX 1650」に匹敵する性能です。
これらのベンチマーク結果から、ASUS NUC 14 Proは、コンパクトな筐体ながら、CPU・GPUともに非常に高いパフォーマンスを備えた、バランスの取れたマシンであると評価できます。
Core Ultra搭載によるAI・ゲーミング性能
ASUS NUC 14 Proが搭載するIntel Core Ultraプロセッサは、単に処理速度が速いだけでなく、「AI」と「ゲーミング」という2つの領域で新たな可能性を切り拓きます。
AI処理を高速化するNPU「Intel AI Boost」
Core Ultraプロセッサの最大の特徴は、CPU、GPUに次ぐ第3の頭脳として、AI処理に特化した「NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)」を搭載している点です。
これにより、ビデオ会議での背景ぼかしやノイズ除去、画像生成AIといったタスクを、CPUに大きな負荷をかけることなく、低消費電力で高速に処理できます。
今後、Windowsや各種アプリケーションがNPUに最適化されていくことで、これまでクラウド上で行うのが当たり前だったAI処理を、ローカル環境で快適に実行できる時代が到来するでしょう。
ASUS NUC 14 Proは、その未来を先取りするAI対応PCなのです。
内蔵GPUでどこまでゲームが遊べるか?
グラフィックス性能が大幅に向上したIntel Arc Graphicsにより、これまでの内蔵GPUでは難しかったPCゲームも、設定次第で十分に楽しめるようになりました。
- ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク (フルHD)
- 標準品質(デスクトップPC): 「やや快適」評価(平均50~60fps程度)
- 高品質(デスクトップPC): 「普通」評価(平均30~40fps程度)
- レインボーシックス シージ (フルHD)
- 最高設定: 平均60fps以上を維持し、快適にプレイ可能
このように、FF14のような人気MMORPGや、比較的負荷の軽いeスポーツタイトルであれば、フルHD解像度で十分にプレイできる性能を持っています。
もちろん、最新の重量級AAAタイトルを高画質でプレイするには単体GPUを搭載したゲーミングPCが必要ですが、「息抜きに少しゲームを楽しみたい」というニーズには十分応えてくれるでしょう。
ASUS NUC 14 Proの評判・口コミ
ASUS NUC 14 Proは、その高い性能とコンパクトさから、多くのユーザーに好意的に受け入れられています。
しかし、ベアボーンキットという性質上、PC初心者にとってはいくつかのハードルがあることも事実です。
ここでは、実際に購入・使用したユーザーからの評判や口コミをまとめました。
良い評判・口コミ
- 性能と静音性のバランス:
「このサイズでCore Ultra 7が搭載されているのは驚異的。普段使いではファンが回っているのか分からないほど静か。」
「動画のエンコードをさせても、想像以上に静かでパワフル。メインマシンとして十分使える。」 - デザインと拡張性:
「Intel NUCのデザインが好きだったので、そのまま引き継がれて嬉しい。」
「Thunderbolt 4が2ポートあるのが決め手。将来的に外付けGPUも試してみたい。」
「ツールレスで中を開けられるので、メモリ増設がとても簡単だった。」 - 信頼性:
「やはりASUS製という安心感がある。サポートも期待できる。」
気になる評判・口コミ
- ベアボーンキットのハードル:
「OSのクリーンインストール時にネットワークドライバが認識されず、別のPCでドライバをダウンロードする必要があり手間取った。」
「メモリやSSD、OSを別途購入すると、トータルでは結構な金額になる。」 - 付属品について:
「ACアダプターは付属していたが、コンセントに挿す側の電源コード(ミッキー型)が別売りで、慌てて買いに走った。」 - ストレージの規格:
「手持ちのSATA接続のM.2 SSDを挿したら認識しなかった。NVMe専用だと知らなかった。」
これらの口コミから、ASUS NUC 14 Proは、製品自体の完成度や性能は非常に高いものの、購入からセットアップ完了までには、ある程度のPC知識や事前準備が必要になるケースがあることがわかります。
ASUS NUC 14 Proの購入前に知るべき注意点
ASUS NUC 14 Proは非常に魅力的な製品ですが、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、購入前にいくつか知っておくべき重要な注意点があります。
これらは主に、製品形態(ベアボーンキット)と、それに伴うセットアップ作業に関するものです。
ベアボーンキットであることの理解
まず最も重要なのは、ASUS NUC 14 Proが基本的に「ベアボーンキット」として販売されている点です。
これは、PCの骨格(ケース、マザーボード、CPU)のみの製品であり、動作に必要なメモリ(RAM)、ストレージ(SSD)、そしてOS(Windowsなど)が付属していないことを意味します。
これらのパーツは、自分で別途購入し、組み込む必要があります。
そのため、完成品のミニPCを購入するのに比べて、追加の費用と組み立ての手間がかかります。
OSインストール時のドライバー問題
特にPC自作に不慣れな方がつまずきやすいのが、OSのクリーンインストール時に発生するドライバーの問題です。
最新のハードウェアを搭載しているため、Windowsのインストールメディアに、Wi-Fiや有線LANを動作させるためのドライバーが含まれていない場合があります。
その場合、OSインストール後にインターネットに接続できず、各種ドライバーをインストールできないという状況に陥ってしまいます。
対策として、事前に別のPCを使ってASUSの公式サイトからLAN関連のドライバーをダウンロードし、USBメモリなどに保存しておくことを強く推奨します。
もしくは、USB接続の有線LANアダプターを用意しておくと、スムーズに作業を進めることができます。
必要なパーツの規格確認
メモリやストレージを選ぶ際には、対応する規格を正確に確認する必要があります。
- メモリ: DDR5規格のSO-DIMM(ノートPC用)メモリが必要です。デスクトップ用のDDR5メモリとは形状が異なるため、間違えないように注意しましょう。
- ストレージ: M.2スロットは、高速な「NVMe」プロトコルにのみ対応しています。同じM.2形状でも、旧来の「SATA」プロトコルのSSDは認識されないため、購入時には必ず「NVMe」対応製品であることを確認してください。
これらの注意点を事前に把握し、必要な準備をしておくことで、ASUS NUC 14 Proのセットアップを円滑に進め、その高い性能を存分に楽しむことができるでしょう。
まとめ:ASUS NUC 14 Pro レビュー解説
- Intelから事業を引き継いだASUS製の最新ミニPCである
- AI処理用のNPUを内蔵したIntel Core Ultraプロセッサを搭載
- コンパクトな筐体にデスクトップ級の豊富なインターフェースを備える
- Thunderbolt 4を2基搭載し、高い拡張性を持つ
- 内蔵GPU性能が大幅に向上し、軽めのゲームなら快適にプレイ可能
- ベアボーンキットが基本で、メモリやストレージは別途購入が必要
- ツールレスで内部にアクセスでき、メンテナンス性が高い
- 軽作業時は非常に静かで、リビングPCにも最適
- OSインストール時にネットワークドライバの事前準備が必要な場合がある
- 省スペースで高性能、かつ信頼性の高いPCを求めるユーザーに最適