iPhone 12シリーズに搭載された「A14 Bionic」チップ。
登場から数年が経過し、後継のチップも次々と発表される中で、「A14 Bionicの性能は今でも通用するのか?」「最新チップやライバルのSnapdragonと比較して、どの程度の性能差があるのか?」といった疑問をお持ちの方もいるでしょう。
この記事では、各種ベンチマークスコアや具体的な比較データを用いて、A14 Bionicの性能を徹底的に解説します。
A13やA18といった歴代Aシリーズチップ、Snapdragon、さらにはMacに搭載されるM1・M2チップとの性能比較を通じて、A14 Bionicの現在の立ち位置を明らかにしていきます。
A14 Bionicの性能はどのくらい?まずは結論から解説
A14 Bionicチップの主なスペックと特長まとめ
A14 Bionicは、Appleが2020年に発表した高性能チップで、業界で初めて5ナノメートルプロセス技術を採用した画期的な存在です。
この微細化により、118億個ものトランジスタを集積し、前世代のA13 Bionicと比較して電力効率と処理性能が大幅に向上しました。
具体的には、2つの高性能コアと4つの高効率コアから成る6コアCPU、4コアGPU、そして機械学習処理を担う16コアのNeural Engineを搭載しています。
これにより、アプリの起動やWebブラウジングといった日常的な操作はもちろん、写真編集や動画視聴などもスムーズに行える性能を持っています。
最新チップと比較して何世代前の性能?現在の立ち位置を5段階で評価
A14 Bionicの性能は、最新のA18 Bionicなどと比較すると数世代前のものになりますが、現在でも多くの用途で十分なパフォーマンスを発揮します。
現在の立ち位置を5段階で評価するなら、「3.5:日常使いでは快適、一部の最新ゲームや重い作業では力不足を感じる可能性あり」といったレベルです。
Webサイトの閲覧、SNS、動画ストリーミング、一般的なアプリの使用においては全く問題なく、快適な操作感を維持できます。
ただし、グラフィック負荷の高い最新3Dゲームを最高設定でプレイしたり、4K動画の編集といった専門的な作業を行ったりする場面では、最新チップとの性能差を感じることがあるでしょう。
【結論】A14 Bionic搭載モデルは今でも十分使える?こんな人におすすめ
結論として、A14 Bionicを搭載したiPhone 12シリーズやiPadは、現在でも十分に実用的なデバイスです。
特に、以下のような使い方を想定している方には、コストパフォーマンスの面からも非常におすすめできます。
主な用途がWeb閲覧、LINEやX(旧Twitter)などのSNS、YouTubeなどの動画視聴であるライトユーザーの方や、最新の高性能は求めないけれど、安定した動作と手頃な価格を両立したいと考えている方には最適な選択肢の一つと言えるでしょう。
【ベンチマーク比較】A14 Bionicの性能を数値で客観的に見る

Geekbenchスコアで見るCPU性能比較(シングルコア・マルチコア)
CPUの純粋な処理性能を測る「Geekbench」のスコアを見ると、A14 Bionicの性能が客観的にわかります。
Geekbench 5のスコアでは、A14 Bionicはシングルコアで「1583」、マルチコアで「4198」を記録しています。
これは、前世代のA13 Bionic(シングルコア:1310、マルチコア:3390)から着実に性能が向上していることを示しています。
一方、最新のA18チップはGeekbench 6で「8492」(マルチコア)というスコアを記録しており、世代間の大きな進化が見て取れます。
AnTuTuベンチマークの総合スコアで見る全体性能
CPU、GPU、メモリ性能などを総合的に評価する「AnTuTu Benchmark (Ver.8)」において、A14 Bionicのスコアは「599,519」です。
これも前世代のA13 Bionicのスコア「501,136」を大きく上回っており、システム全体のパフォーマンスが向上していることの証明となります。
AnTuTuスコアはスマートフォンの全体的な快適さを示す指標であり、この数値からもA14 Bionicが日常利用において高いパフォーマンスを持つことがわかります。
iGPU-FP32で見るGPU(グラフィック)性能
グラフィック処理性能を示す指標の一つである「iGPU-FP32」のベンチマークでは、A14 Bionic(4コアGPU)のスコアは「749」です。
ゲームや動画編集といったグラフィックを多用するタスクの快適さに直結するこの性能は、新しいチップほど向上しています。
例えば、A18(5コアGPU)では「2150」、A18 Pro(6コアGPU)では「2580」と、A14 Bionicに対して約2.9倍から3.4倍もの性能差があり、3Dゲームなどでの滑らかさに大きな違いが生まれます。
【世代別】AppleのAシリーズチップとの性能比較
旧モデル「A13 Bionic」との違いは?性能はどれくらい向上した?
A14 Bionicは、直前のモデルであるA13 Bionicから大きな進化を遂げています。
最大の違いは、製造プロセスルールが7nmから5nmへと微細化された点です。
これにより、トランジスタ数が85億個から118億個へと増加し、性能と電力効率が大幅に向上しました。
Appleの発表によると、CPU性能は約40%、GPU性能は約30%高速化されており、機械学習性能を担うNeural Engineに至っては2倍以上の性能向上を果たしています。
新モデル「A18 Bionic」との性能差は歴然?CPU性能は約1.8倍の差
最新のA18 Bionicチップと比較すると、A14 Bionicとの間には4世代分の技術的な隔たりがあり、その性能差は歴然です。
ベンチマークスコアで比較すると、CPU性能ではA18 BionicがA14 Bionicの約1.8倍という結果が出ています。
この差は、アプリのインストール速度やWebページの読み込み時間など、日常のあらゆる操作で体感できるレベルです。
GPU性能においてはさらに差が大きく、A18は約2.9倍、A18 Proに至っては約3.4倍もの性能向上を遂げており、特にグラフィック性能を要求される場面での体験が大きく異なります。
A15 Bionic・A16 Bionicとも比較|世代間の進化をチェック
A14 BionicからA18 Bionicに至るまでの世代間の進化も注目すべき点です。
Appleの比較データによると、A18チップのCPU性能は、A15 Bionicと比較して50%向上、A16 Bionicと比較しても30%向上しています。
このように、AppleのAシリーズチップは世代を重ねるごとに着実な性能向上を実現しており、A14 Bionicはその進化の過程にある重要なチップという位置づけになります。
【競合比較】SnapdragonとA14 Bionicはどちらが高性能?

同世代のライバル「Snapdragon 888」とのベンチマークスコア比較
A14 Bionicと同世代のAndroidスマートフォン向けハイエンドチップ「Snapdragon 888」と比較すると、ベンチマークの種類によって結果が異なります。
CPUのシングルコア・マルチコア性能を測るGeekbench 5では、A14 BionicがSnapdragon 888(シングルコア:1112、マルチコア:3607)を上回るスコアを示しています。
これは、Appleのチップ設計がコアあたりの性能を重視していることを反映しており、単発の処理能力では優位性があることを示唆しています。
ゲームなど高負荷時の持続性能に違いはある?発熱問題も解説
一方で、高負荷が継続するゲームプレイなどでは、単純なベンチマークスコアだけでは測れない「持続性能」が重要になります。
一部のテストでは、A14 Bionicを搭載したiPhone 12が高負荷時に発熱し、性能が低下する傾向が指摘されています。
対照的に、Snapdragonシリーズは比較的安定したパフォーマンスを維持すると評価されることもあり、「瞬発力のAチップ、安定のSnapdragon」と表現されることがあります。
長時間のゲームプレイを重視する場合は、こうした持続性能や発熱に関するレビューも参考にすると良いでしょう。
【上位モデル比較】Mac/iPad Pro搭載のMシリーズチップとの違いは?
A14 BionicとM1チップの関係性は?基本設計と思想の違いを解説
A14 BionicとMacに搭載されているM1チップは、同じApple Siliconアーキテクチャをベースにしているため、「いとこ」のような関係性と表現できます。
しかし、両者は設計思想が大きく異なります。
A14 Bionicはスマートフォンのバッテリー駆動時間と性能のバランスを最優先に設計されたモバイル向けチップです。
対してM1チップは、より大きな電力供給と冷却機構を持つMacのために設計されており、CPU・GPUのコア数が多く、メモリ帯域幅も広くなっています。
そのため、M1チップはA14 Bionicを遥かに凌ぐ処理性能を発揮します。
A14 BionicとM2チップの性能差はどのくらい?
M1チップの後継であるM2チップとA14 Bionicの性能差はさらに大きくなります。
AppleはiPad Air (M2)の発表時に、そのパフォーマンスがA14 Bionic搭載モデルと比較して最大3倍高速であると説明しています。
M2チップは、CPU、GPU、Neural Engineの各性能がM1からさらに向上しており、メモリ帯域も強化されています。
動画編集や3Dデータ制作といったプロフェッショナルな作業も快適に行えるM2チップと、モバイルでの利用に最適化されたA14 Bionicとでは、想定されている用途が異なり、性能にも明確な差があります。
A14 Bionicで人気ゲーム「原神」は快適にプレイできる?

「原神」はサクサク動く?推奨スペックと実機での動作感をレビュー
高いグラフィック性能が求められる人気ゲーム「原神」は、A14 Bionic搭載デバイスでもプレイ可能です。
しかし、「サクサク快適に動くか」と問われると、設定次第という回答になります。
実機レビューによると、A14 Bionicを搭載したiPad(第10世代)では、ゲームの起動にやや時間がかかり、最高画質設定でのプレイは厳しい場面もあるようです。
画質設定を中程度に調整すればプレイ自体は可能ですが、最新チップを搭載したデバイスのような滑らかさを期待するのは難しいかもしれません。
長時間プレイでの発熱やバッテリー消費はどの程度?
「原神」のような高負荷なゲームを長時間プレイすると、A14 Bionic搭載デバイスでは発熱とバッテリー消費が顕著になる傾向があります。
あるレビューでは、iPad(第10世代)で原神をプレイし続けた場合、約4時間でバッテリーが切れるという報告がありました。
また、本体が熱を持つことでパフォーマンスが低下するサーマルスロットリングが発生する可能性も考慮する必要があります。
長時間のゲームプレイを想定する場合は、冷却対策やモバイルバッテリーの準備が推奨されます。
A14 Bionicチップを搭載しているiPhone・iPadはどれ?
A14 Bionic搭載iPhoneモデル一覧(iPhone 12シリーズ)
A14 Bionicチップは、2020年に発売されたiPhone 12シリーズ全モデルに搭載されています。
- iPhone 12
- iPhone 12 mini
- iPhone 12 Pro
- iPhone 12 Pro Max
これらのモデルは、中古市場などで手頃な価格で入手可能となっており、コストを抑えつつ安定した性能のiPhoneを求める場合に良い選択肢となります。
A14 Bionic搭載iPadモデル一覧(iPad Air 第4世代, iPad 第10世代)
iPadでは、以下の2つのモデルにA14 Bionicチップが搭載されています。
- iPad Air (第4世代)
- iPad (第10世代)
特にiPad (第10世代)は、比較的新しいモデルでありながらA14 Bionicを採用しているのが特徴です。
これらのiPadは、動画視聴や電子書籍、Webブラウジング、軽めのクリエイティブ作業などに適しています。
まとめ:A14 Bionicの性能比較からわかる価値
A14 Bionicの性能評価:3つのメリットと2つのデメリット
ここまでA14 Bionicの性能を多角的に比較してきましたが、そのメリットとデメリットを整理します。
メリットとしては、「日常的な使用には十分すぎる性能」「搭載モデルが中古市場で手頃な価格になっている」「iPhoneとiPadの両方で選択肢がある」点が挙げられます。
一方、デメリットは「最新チップと比較すると性能差が大きい」「高負荷な3Dゲームや専門的な動画編集には不向き」という点です。
これらの特性を理解することが、自分に合ったデバイスを選ぶ上で重要になります。
【最終判断】A14 Bionic搭載デバイスの購入をおすすめする人・しない人
最終的に、A14 Bionic搭載デバイスの購入は、使用目的によっておすすめできるかどうかが決まります。
Webサイト閲覧、SNS、動画視聴、音楽再生、軽めのゲームといったライトな使い方を主とする方や、高性能よりも価格を重視する方、スマートフォンのサブ機を探している方には、非常におすすめできます。
反対に、最新の3Dゲームを最高画質で滑らかにプレイしたい方や、4K動画編集、本格的なイラスト制作など、高いマシンパワーを必要とするクリエイティブな作業を頻繁に行う方には、より新しいAシリーズやMシリーズチップを搭載したモデルを検討することをおすすめします。
- A14 Bionicは5nmプロセスを採用した高性能チップである
- 日常的な用途であれば現在でも十分快適に動作する性能を持つ
- 前世代のA13 Bionicと比較してCPU・GPU性能が大幅に向上している
- 最新のA18 Bionicと比較するとCPU性能で約1.8倍の差がある
- 同世代のSnapdragon 888に対しGeekbenchスコアでは優位性を示す
- 高負荷が続くと発熱により性能が低下する可能性がある
- Mac用のM1/M2チップとは設計思想が異なり、性能には大きな差が存在する
- 人気ゲーム「原神」は設定を調整すればプレイ可能である
- 搭載機種はiPhone 12シリーズとiPad Air (第4世代)、iPad (第10世代)である
- コストパフォーマンスを重視するライトユーザーにとって良い選択肢となる