パソコンを使っていると、いつの間にかCドライブの空き容量が赤色で表示され、動作が重くなることがあります。
不要なファイルを削除しても容量が戻らない場合、原因は「pagefile.sys」という巨大なシステムファイルかもしれません。
この記事では、Windowsの隠しファイルであるpagefile.sysの役割から、Cドライブの容量不足を解消するための正しい対処法までを詳しく解説します。
安易に削除してパソコンが動かなくなるリスクを避け、安全かつ効果的に空き容量を確保する方法を身につけましょう。
pagefile.sysとは?Cドライブを圧迫する巨大ファイルの正体
Cドライブの容量不足を調査していると、数GBから数十GBもの巨大なサイズを占有している「pagefile.sys」というファイルの存在に気づくことがあります。
これはウイルスや不要なデータではなく、Windowsが正常に動作するために作成した重要なシステムファイルです。
まずは、このファイルがどのような役割を果たしているのかを正しく理解しましょう。
pagefile.sysの役割はWindowsの「仮想メモリ」
pagefile.sysの正体は、Windows OSにおける「仮想メモリ」の実体ファイルです。
パソコンには、データを一時的に保存して高速に処理するための「物理メモリ(RAM)」が搭載されています。
しかし、複数のアプリを同時に開いたり、動画編集などの重い作業を行ったりすると、物理メモリだけでは容量が足りなくなることがあります。
そのような場合に、HDDやSSDといったストレージ(保存領域)の一部をメモリの代わりとして使う仕組みが仮想メモリであり、そのデータが書き込まれる場所がpagefile.sysなのです。
物理メモリが不足したときにPCを助ける重要な仕組み
物理メモリが満杯になったとき、Windowsは使用頻度の低いデータを一時的にpagefile.sysへ退避させます。
これにより、物理メモリに空きスペースを作り出し、新しい作業やアプリの処理を続行できるようになります。
もし仮想メモリ(pagefile.sys)が存在しなければ、メモリ不足になった瞬間にアプリが強制終了したり、システム全体がフリーズしたりする恐れがあります。
つまり、pagefile.sysはパソコンの安定動作を支える「予備のメモリ」として機能しているのです。
なぜpagefile.sysは勝手に肥大化してしまうのか?
pagefile.sysのファイルサイズは、Windowsの初期設定では「システム管理サイズ」となっており、PCの状態に合わせて自動的に変動します。
搭載している物理メモリの容量が多いほど、あるいはシステムがメモリ不足を感じて仮想メモリを多く必要とするほど、pagefile.sysのサイズも大きくなる傾向があります。
一般的には物理メモリと同等、あるいはそれ以上のサイズが確保されることが多く、例えば16GBのメモリを搭載している場合、pagefile.sysも16GB近くまで肥大化することが珍しくありません。
これが、何もしていないのにCドライブの容量が圧迫される主な原因の一つです。
pagefile.sysは削除しても大丈夫?リスクと正しい判断基準
容量不足を解消するために、巨大なpagefile.sysを削除したいと考えるのは自然なことです。
しかし、システムに関わる重要なファイルであるため、安易な削除はトラブルの元となります。
ここでは、削除のリスクと、どのような場合に削除や調整が許容されるのかについて解説します。
結論:完全削除は非推奨!アプリが落ちたりフリーズする原因に
結論から申し上げますと、pagefile.sysを完全に削除(無効化)することは推奨されません。
前述の通り、これは物理メモリが不足した際の命綱です。
これをなくしてしまうと、メモリ不足が発生した際に逃げ場がなくなり、「メモリが不足しています」というエラーが頻発したり、最悪の場合はブルースクリーンが発生してPCが落ちたりする可能性があります。
また、一部の古いソフトウェアや特定のシステム機能は、物理メモリに十分な空きがあっても仮想メモリがあることを前提に動作する場合があり、不具合の原因となります。
削除しても問題ないケースとは(大容量メモリ搭載時など)
リスクはあるものの、pagefile.sysを削除しても実用上問題が出にくいケースも存在します。
それは、物理メモリ(RAM)を32GBや64GBといった大容量で搭載しており、普段の作業でメモリ使用量が上限に達することがまずない場合です。
動画編集や3Dレンダリングなどの特殊な作業をせず、ブラウジングや文書作成程度であれば、物理メモリだけですべて処理しきれるため、仮想メモリがなくても動作する可能性は高いでしょう。
ただし、システムエラー時に生成されるダンプファイル(エラー記録)が作成されなくなるなどのデメリットは残ります。
削除の代わりにやるべき「サイズ縮小」と「別ドライブへの移動」
Cドライブの容量不足を解消しつつ、システムの安定性も維持したい場合に最適なのが、「サイズの縮小」または「別ドライブへの移動」です。
削除するのではなく、ファイルサイズの上限を小さく設定して容量圧迫を防ぐか、保存場所をDドライブなど余裕のある別のストレージに変更することで、Cドライブの空き容量を確保できます。
これが最も安全で効果的な解決策といえます。
【手順解説】pagefile.sysを最適化してCドライブの容量を空ける方法
それでは、実際にpagefile.sysの設定を変更して、Cドライブの空き容量を増やす手順を解説します。
ご自身の環境やリスク許容度に合わせて、最適な方法を選択してください。
方法1:pagefile.sysのサイズを小さく固定する(カスタムサイズ設定)
自動設定で肥大化するのを防ぐために、サイズを手動で固定する方法です。
- スタートボタンを右クリックし、「システム」を選択します。
- 「システムの詳細設定」をクリックし、「詳細設定」タブの「パフォーマンス」にある「設定」ボタンを押します。
- パフォーマンスオプションの「詳細設定」タブを開き、「仮想メモリ」の「変更」をクリックします。
- 「すべてのドライブのページングファイルのサイズを自動的に管理する」のチェックを外します。
- Cドライブを選択し、「カスタムサイズ」にチェックを入れます。
- 「初期サイズ」と「最大サイズ」に同じ数値を入力します(例:1024MBや2048MBなど)。
- 「設定」ボタンを押し、「OK」で閉じます。
- PCを再起動すると変更が適用されます。
最低でも400MB~1GB程度は残しておくことで、システムの最小限の安定性を保つことができます。
方法2:pagefile.sysをDドライブなど別の場所に移動する
PCにDドライブ(別のSSDやHDD)がある場合、pagefile.sysをそちらへ移動させるのが最もおすすめです。
- 上記と同様に「仮想メモリ」の設定画面を開きます。
- Cドライブを選択し、「ページングファイルなし」を選んで「設定」を押します(警告が出ますが「はい」を選択)。
- 次にDドライブを選択し、「システム管理サイズ」または「カスタムサイズ」を選びます。
- 「設定」ボタンを押し、「OK」で確定します。
- PCを再起動します。
これにより、Cドライブのpagefile.sysがなくなり、Dドライブに新たに作成されるため、Cドライブの容量が大幅に空きます。
方法3:pagefile.sysを完全に無効化(削除)する手順 ※自己責任
物理メモリが十分にあり、リスクを承知の上で削除したい場合の手順です。
- 「仮想メモリ」の設定画面を開きます。
- 「すべてのドライブのページングファイルのサイズを自動的に管理する」のチェックを外します。
- 設定されているドライブ(通常はCドライブ)を選択します。
- 「ページングファイルなし」を選択し、「設定」ボタンを押します。
- 警告メッセージが表示されますが、「はい」を選択して進めます。
- 「OK」で閉じ、PCを再起動します。
再起動後、Cドライブからpagefile.sysが消滅し、その分の容量が解放されます。
動作が不安定になった場合は、すぐに設定を元に戻してください。
もう一つの巨大ファイル「hiberfil.sys」を削除して容量を確保する
Cドライブの隠しファイルを確認すると、pagefile.sysの近くに「hiberfil.sys」という別の巨大ファイルがあることに気づくかもしれません。
実はこちらも設定次第で削除が可能であり、容量確保の大きな助けとなります。
hiberfil.sysとは?pagefile.sysとの違いと「休止状態」の関係
hiberfil.sys(ハイバネーションファイル)は、パソコンの「休止状態(ハイバネーション)」機能を使うために作成されるファイルです。
休止状態とは、PCの電源を切る直前の作業状態(メモリの内容)をストレージに保存し、次回起動時に素早く元の状態に復帰させる機能です。
この「メモリの内容を保存する場所」としてhiberfil.sysが使われます。
そのため、搭載している物理メモリと同じくらいのサイズ(数GB~数十GB)が常に確保されてしまいます。
休止状態を使わないなら削除OK!メリットとデメリット
もし普段、PCをシャットダウンするか「スリープ」しか使わず、「休止状態」を利用していないのであれば、このファイルは不要です。
削除することで、数GBから数十GB単位でCドライブの空き容量を一気に増やすことができます。
デメリットは「休止状態」が使えなくなることと、「高速スタートアップ」機能(休止状態の仕組みを利用して起動を速くする機能)が無効になる可能性があることです。
しかし、最近のSSD搭載PCであれば、高速スタートアップがなくても起動は十分に速いため、影響は少ないと言えます。
コマンド一発!hiberfil.sysを無効化して削除する手順
hiberfil.sysは設定画面ではなく、コマンドプロンプトを使って削除します。
- スタートボタンを右クリックし、「ターミナル(管理者)」または「コマンドプロンプト(管理者)」、「Windows PowerShell(管理者)」のいずれかを選択します。
- 黒い画面(または青い画面)が表示されたら、以下のコマンドを入力します。powercfg.exe /hibernate off
- Enterキーを押します。
- エラーなどが表示されずに次の行が表示されれば成功です。
PCを再起動する必要はなく、この瞬間にhiberfil.sysが削除され、容量が増えています。
元に戻したい場合は powercfg.exe /hibernate on と入力してください。
pagefile.sys操作以外でCドライブの容量不足を解消するテクニック
システムファイルを触るのが怖い場合や、さらに容量を空けたい場合に有効な、その他のテクニックを紹介します。
基本的なメンテナンスを行うだけでも、意外と多くの容量を確保できることがあります。
ディスククリーンアップでWindows Update等の不要ファイルを削除
Windowsには、不要なファイルを安全に削除する「ディスククリーンアップ」機能が標準搭載されています。
特に「システムファイルのクリーンアップ」を行うと、過去のWindows Updateの残骸ファイルなど、数GB単位の不要データを削除できることがあります。
- エクスプローラーでCドライブを右クリックし、「プロパティ」を選択します。
- 「ディスクのクリーンアップ」をクリックします。
- 「システムファイルのクリーンアップ」ボタンをクリックします。
- 「Windows Updateのクリーンアップ」などにチェックを入れて「OK」を押します。
ストレージセンサーを使って一時ファイル(Temp)を自動削除
Windows 10や11には「ストレージセンサー」という便利な機能があります。
これを有効にしておくと、アプリが作成した一時ファイルや、ゴミ箱に入ってから一定期間経過したファイルを自動的に削除してくれます。
「設定」→「システム」→「ストレージ」から、ストレージセンサーをオンに設定しておきましょう。
ドキュメントやダウンロードフォルダの保存先をDドライブへ変更
「ダウンロード」「ドキュメント」「ピクチャ」などのユーザーフォルダは、初期設定ではCドライブに保存されます。
これらはファイルが増えやすいため、容量を圧迫する大きな原因になります。
Dドライブがある場合は、プロパティ設定から保存場所(ロケーション)をDドライブに変更することで、将来的に増えるデータも含めてCドライブの負担を減らすことができます。
設定変更でも解決しない場合の根本的な対策
これまで紹介した方法を試してもCドライブの空き容量が足りない、あるいはPCの動作が遅いままという場合は、ハードウェア的な解決が必要です。
物理メモリ(RAM)を増設して仮想メモリへの依存を減らす
pagefile.sysが肥大化する根本原因は、物理メモリ不足です。
物理メモリを8GBから16GB、あるいは32GBへと増設すれば、Windowsは仮想メモリに頼る必要がなくなります。
結果として、pagefile.sysのサイズを小さく固定しても安定して動作するようになり、PC全体の処理速度も劇的に向上します。
Cドライブ自体を大容量SSDへ換装・クローンする
そもそもCドライブの総容量(128GBや256GBなど)が小さい場合は、ファイルのやりくりには限界があります。
現在は500GBや1TBのSSDも手頃な価格になっています。
「クローンソフト」を使って現在の環境をまるごと新しい大容量SSDにコピーし、ドライブ自体を交換するのが、最も確実で長期的な解決策となります。
まとめ:Cドライブ容量不足 pagefile.sysの対処法
- pagefile.sysは物理メモリ不足を補うための重要な「仮想メモリ」ファイル
- 初期設定では物理メモリと同等以上のサイズに自動で肥大化する
- 完全削除はPCのフリーズや強制終了を招くため非推奨
- 安全な対処法は「サイズの縮小固定」か「Dドライブへの移動」
- 物理メモリが32GB以上など十分にある場合は削除しても影響は少ない
- hiberfil.sys(休止状態ファイル)を削除することでも大幅に容量確保が可能
- コマンド
powercfg /hibernate offでhiberfil.sysは簡単に消せる - ディスククリーンアップでWindows Updateの残骸を消すのも有効
- 根本解決には物理メモリの増設や大容量SSDへの換装を検討する
- リスクを理解し、自分の環境に合った方法で空き容量を確保する
