1万円以下の価格帯で圧倒的な存在感を放つイヤホンブランド、水月雨(MoonDrop)。
2025年11月、同ブランドから待望の新作「蘭II(LAN 2)」が登場しました。
今回は、2つのチューニングモデルのうち、特にリスニングの楽しさを追求した「蘭II POP」に焦点を当てます。
前作から何が進化したのか、同時発売の「REF」とはどう違うのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、実際に使用して感じた音質や装着感、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
4.4mmバランスプラグ標準搭載という攻めた仕様の真価や、あなたの好みに合うかどうかを判断する材料としてお役立てください。
水月雨 蘭II (LAN 2) POPとは?スペックと特徴の概要
まずは、水月雨 蘭II POPがどのようなイヤホンなのか、基本的なスペックと特徴を整理します。
技術的な進化点や、ラインナップにおける立ち位置を把握しましょう。
ガラスドーム複合振動板を採用した蘭II POPの基本スペック
蘭II POPの最大の特徴は、新開発された「ガラスドーム複合振動板」を搭載した10mmダイナミックドライバーです。
厚さわずか0.05mmのガラスドームは非常に高い剛性を持ち、音の歪みを極限まで抑えることに成功しています。
これにより、従来の素材では難しかった高音域の伸びと、クリアな解像度を実現しました。
また、ドライバーにはN52磁石を2枚使用したデュアルマグネット構造を採用し、強力な駆動力で振動板を正確にコントロールしています。
再生周波数帯域は12Hz〜60kHzと非常に広く、ハイレゾ音源の微細なニュアンスまで再現できるポテンシャルを持っています。
現在の価格と発売日・コストパフォーマンスの評価
本製品は2025年11月27日に発売されました。
市場実勢価格は税込8,550円〜9,500円前後で推移しており、エントリークラスからミドルクラスの入り口に位置しています。
1万円を切る価格でありながら、金属製の高品質な筐体や新素材ドライバー、さらに4.4mmバランスケーブルを標準装備している点は驚異的です。
通常、バランス接続を楽しむには追加でケーブルを購入する必要がありますが、そのコストを抑えられるため、コストパフォーマンスは極めて高いと言えます。
POP(ポップ)とREF(リファレンス)のパッケージと外観の見分け方
蘭IIには音質の異なる「POP」と「REF」の2モデルが存在しますが、筐体の形状は同じであるため、見分け方に注意が必要です。
まず、パッケージの色が異なります。
POPは黒を基調としたダークなデザインの箱に入っているのに対し、REFは白を基調とした明るいデザインです。
本体における違いは、フェイスプレートに刻印された模様の位置です。
POPモデルは模様がフェイスプレートの「上寄り」に配置されています。
一方、REFモデルは模様が「下寄り」に配置されているため、ここを確認することで判別可能です。
【実機レビュー】蘭II POPの外観・付属品と装着感をチェック
スペック上の数値だけでなく、実際に手に取って使ってみなければ分からない質感や使い心地についてレビューします。
MIMステンレス筐体の質感と耐久性・デザインの魅力
筐体には、MIM(金属粉末射出成形)製法によるステンレススチールが採用されています。
この価格帯のイヤホンに見られるプラスチック感は皆無で、ひんやりとした金属の手触りと重量感が所有欲を満たしてくれます。
表面はマットな仕上げになっており、指紋が目立ちにくく、傷にも強い印象です。
シンプルながらも洗練されたデザインは水月雨らしく、長く使っても飽きが来ない美しさがあります。
装着感は?重さ(片側9g)や耳へのフィット具合
ステンレス製であるため、片側約9gとイヤホンとしてはやや重みがあります。
しかし、筐体の形状がコンパクトで耳のくぼみに収まりやすいため、装着してしまえば重さはそれほど気になりません。
耳の小さな方でもフィットしやすいサイズ感ですが、イヤーピースだけで支えるような装着になると、動いた際に重みでズレる可能性があります。
付属のイヤーピースや市販のものを使って、しっかりと耳に固定できるよう調整することをおすすめします。
4.4mmバランスケーブル標準装備と3.5mm変換アダプタの使い勝手
本機の大きな特徴として、標準ケーブルのプラグが「4.4mmバランス端子」になっている点が挙げられます。
バランス接続対応のDAP(デジタルオーディオプレーヤー)やDACを持っているユーザーにとっては、箱から出してすぐに高音質再生が楽しめる嬉しい仕様です。
一方で、一般的なスマホやPCの3.5mmジャックで使用するために、3.5mm変換アダプタ(ピグテールタイプ)が同梱されています。
このアダプタを使用すれば問題なく音は聴けますが、プラグ部分が長くなり、ポケットの中などで少々嵩張る点は否めません。
付属のポーチとイヤーピースの品質レビュー
付属品には、持ち運び用のソフトポーチとイヤーピース(S/M/L)が含まれています。
ポーチは布製の巾着タイプで、衝撃からの保護能力は高くありませんが、ケーブルをまとめて傷を防ぐには十分です。
イヤーピースは適度な弾力があり、軸の部分にサイズごとの色分けがされているため、左右のサイズ合わせが容易です。
装着感や遮音性も標準的なレベルをクリアしており、まずは付属品のままで十分に音楽を楽しめます。
水月雨 蘭II LAN 2 POPの音質評価:楽しく聴けるドンシャリ傾向
ここからは、肝心の音質について詳しく解説します。
「POP」という名前の通り、音楽を楽しく聴かせるためのチューニングが施されています。
低音域:REFと比較して厚みとパンチが増したバスドラム
POPモデルの低音域は、REFモデルと比較して明らかに量感が増しています。
バスドラムのキック音やベースラインに厚みがあり、パンチのある力強いサウンドを楽しめます。
ただし、ボワつくような緩い低音ではなく、輪郭がはっきりとしたタイトな質感です。
ロックやEDM、ポップスなどのビート感を重視するジャンルとの相性が抜群によく、聴いていて高揚感を得られるチューニングです。
中音域:ボーカルの距離感と自然な艶やかさ
低音が強化されていますが、ボーカルが埋もれてしまうことはありません。
中音域はクリアで、ボーカルは近すぎず遠すぎない、適度な距離感で定位します。
水月雨が得意とする女性ボーカルの表現力は健在で、透明感と艶やかさを感じることができます。
楽器隊との分離も良く、ギターやピアノのフレーズもしっかりと耳に届きます。
高音域:高い解像度と一部で「刺さる」と言われる鋭さについて
高音域は、ガラスドーム振動板の恩恵もあり、非常に伸びやかで解像度が高いです。
シンバルの金属音やハイハットの刻みが鮮明に聴こえ、この価格帯とは思えない情報量を持っています。
一方で、録音状態や聴く楽曲によっては、高音が鋭く「刺さる」と感じる場合があります。
特に高感度な耳を持つ方や、まろやかな音が好みの方にとっては、少々刺激が強いと感じるかもしれません。
音場と定位感:同価格帯のエントリー機と比較した空間表現
音場は、カナル型イヤホンとしては標準的か、やや広めといった印象です。
左右の広がりだけでなく、奥行きも感じられ、音が平面的になりにくい立体感があります。
定位感が優れているため、どの楽器がどこで鳴っているかが把握しやすく、FPSなどのゲーム用途でも実力を発揮できるでしょう。
同価格帯のエントリー機と比較しても、音の分離と空間表現のレベルは頭一つ抜けています。
徹底比較:蘭II POPとREF、旧モデル・他機種との違い
購入を迷っている方のために、バリエーションモデルや競合機種との違いを比較します。
蘭II POP vs REF:音質の決定的な違いと選び方
POPとREFの最大の違いは、低音の量感と全体のバランスです。
REF(Reference)は、その名の通りフラットで原音に忠実なモニターライクなサウンドを目指しています。
対してPOPは、低域と高域を強調した弱ドンシャリ傾向で、音楽をエモーショナルに楽しむことに特化しています。
分析的に音を聴きたいならREF、ノリ良く音楽を楽しみたいならPOPを選ぶのが正解です。
蘭II POP vs 初代LAN:解像度と表現力はどう進化したか
初代LANと比較すると、蘭II POPは全体的な解像度が大きく向上しています。
初代はやや落ち着いたクールな音色でしたが、蘭II POPはより明瞭で、音の輪郭がクッキリとしました。
特に低音の質感と高音の伸びに関しては、振動板素材の変更による恩恵を強く感じます。
初代の音が好きだった方にとっても、正当なアップグレードとして満足できる進化を遂げています。
蘭II POP vs Aria 2 / Chu 2:水月雨ラインナップ内での立ち位置
エントリーモデルのChu 2と比較すると、蘭II POPは筐体の質感、音の分離感、解像度のすべてにおいて上位互換と言えます。
上位機種のAria 2と比較した場合、解像感ではかなり肉薄していますが、音場の広さや余裕のある鳴り方ではAria 2に分があります。
しかし、価格差を考慮すれば蘭II POPのコストパフォーマンスは非常に高く、Aria 2の予算が出せない場合の強力な選択肢となります。
Truthear Zero Redなど他社ライバル機との比較
同価格帯のライバルであるTruthear Zero Redは、サブベースを重視したハーマンターゲット寄りのサウンドで、全体的にスムーズでおとなしい印象です。
対して蘭II POPは、よりアタック感が強く、高域の煌びやかさが目立つ元気なサウンドです。
落ち着いて長時間聴くならZero Red、短時間で集中して音楽の楽しさを味わいたいなら蘭II POPが適しています。
購入前に知っておきたい蘭II POPの注意点とデメリット
メリットの多い機種ですが、購入後に後悔しないよう、いくつかの注意点も確認しておきましょう。
4.4mmプラグ標準仕様はスマホ直挿しユーザーには不便か?
前述の通り、標準ケーブルは4.4mmプラグです。
一般的なスマートフォンやPCに直接挿して使うには、付属の変換アダプタを噛ませる必要があります。
これによりプラグ部分が長くなり、取り回しが悪くなるため、スマホ直挿しメインのユーザーにとっては不便に感じる要素です。
別途3.5mmケーブルを用意してリケーブルするという手もありますが、追加出費が必要になります。
高音が鋭く感じる場合の対策とエージング効果
開封直後は高音が硬く、耳に刺さるように感じることがあります。
この場合、数十時間ほど音楽を流し続ける「エージング」を行うことで、振動板が馴染み、角が取れてマイルドになることがあります。
それでも気になる場合は、イヤーピースをフォームタイプ(ウレタン素材)に変更することで、高域の刺さりを物理的に減衰させることが可能です。
金属筐体によるタッチノイズと重さの懸念点
金属筐体は高級感がある反面、冬場は耳に入れた瞬間に冷たさを感じることがあります。
また、歩行時にケーブルが服と擦れる「タッチノイズ」が、金属筐体を伝わって響きやすい傾向があります。
付属ケーブルには耳掛け用の加工がされていますが、タッチノイズが気になる場合は、クリップでケーブルを服に固定するなどの対策が有効です。
MoonDrop 蘭II LAN 2 POPの評判・口コミまとめ
ネット上のレビューやSNSでの評判を分析し、ユーザーのリアルな声をまとめました。
良い口コミ:ビルドクオリティと価格以上の音質への評価
多くのユーザーが高く評価しているのは、やはりビルドクオリティの高さです。
「1万円以下とは思えない高級感がある」「所有欲を満たしてくれる」といった声が多く聞かれます。
音質に関しても、「クリアで元気な音が楽しい」「この価格でこの解像度はすごい」と、コストパフォーマンスを称賛する意見が目立ちます。
また、4.4mm環境を持つオーディオファンからは、バランスケーブルが標準付属している点も大きな加点要素となっています。
悪い口コミ:付属品(ケーブル・ケース)や高域への厳しい意見
ネガティブな意見としては、変換アダプタ使用時の使い勝手に関するものが散見されます。
「変換アダプタがぶら下がって邪魔」「スマホで使うには不格好」といった声です。
音質面では、「高音がキツすぎて聴き疲れする」「サ行が刺さる」という感想を持つユーザーも一定数います。
また、付属のポーチが薄手で頼りないため、しっかりとしたケースを別途購入したという報告も見られました。
まとめ:水月雨 蘭II LAN 2 POPはどんな人におすすめ?
水月雨 蘭II POPは、エントリークラスの価格帯でワンランク上の音質と質感を体験できる優れたイヤホンです。
最後に、どのような人にこのイヤホンが適しているのかを整理します。
蘭II POPを買うべき人・REFを選んだほうがいい人
【蘭II POPがおすすめな人】
- ロックやポップスをノリ良く楽しみたい人
- 4.4mmバランス接続環境を既に持っている、または興味がある人
- 金属筐体の高級感あるデザインが好きな人
- ドンシャリ傾向の元気なサウンドが好みな人
【REFを選んだほうがいい人】
- クラシックやアコースティック音源をメインに聴く人
- 味付けの少ない、フラットで分析的な音を好む人
- 高音の刺激が苦手で、聴き疲れしにくい音を求める人
1万円以下で買えるリケーブル対応イヤホンとしての総評
総じて、蘭II POPは「1万円以下で手に入る最高クラスのリスニングイヤホン」の一つと言えます。
新開発ドライバーによる高い基本性能、リケーブル対応による拡張性、そして所有欲を満たすビルドクオリティ。
これらを兼ね備えた本機は、初めての本格的な有線イヤホンとしても、サブ機としても非常に満足度の高い一台になるでしょう。
まとめ:MoonDrop蘭II LAN 2 POPレビュー解説
- 2025年11月発売の蘭II POPは1万円以下で高コスパを実現
- 新開発ガラスドーム複合振動板により低歪みで高解像度な音質
- MIMステンレス筐体は高級感があり耐久性も高い
- 4.4mmバランスプラグ標準装備でDAPユーザーに最適
- スマホ接続には付属の3.5mm変換アダプタが必要
- 音質は低音のパンチと高音の解像感を両立した弱ドンシャリ
- REFモデルと比較して低音の量感とリスニングの楽しさが向上
- 高音が鋭く感じる場合はエージングやイヤーピース変更が有効
- 競合のAria 2やZero Redと比較しても独自の魅力がある
- 楽しく音楽を聴きたいユーザーにとって最適な選択肢
