Phrozenの大型光造形3Dプリンター「Sonic Mega 8K S」に注目が集まっています。
「ミニチュアを一度にたくさん作りたい」「大きな造形物を分割せずにプリントしたい」と考えたとき、その選択肢としてSonic Mega 8K Sが挙がることは少なくありません。
しかし、旧モデルとの違いや実際の印刷品質、ユーザーからの評判はどうなのでしょうか。
この記事では、Phrozen Sonic Mega 8K Sのスペックや特徴、海外の著名なレビュアーによる詳細なレビュー内容を徹底的に分析し、その実力と注意点を解説します。
購入を検討している方が抱えるであろう疑問にすべてお答えし、あなたにとって最適な一台かどうかの判断材料を提供します。
Phrozen Sonic Mega 8K Sとは?大型・高速プリントを実現する高コスパモデル
結論:ミニチュアの大量生産や大型造形をしたいなら最適な一台
Phrozen Sonic Mega 8K Sは、ミニチュアの軍隊のような大量生産や、コスプレの小道具といった大型モデルの造形を目的とするユーザーにとって、非常に優れた選択肢です。
その理由は、巨大な造形サイズ、高速な印刷能力、そして品質と価格の優れたバランスにあります。
実際に、多くのレビュアーが指摘するように、このプリンターは単なる趣味の領域を超え、小規模な印刷ビジネスや大量生産の現場で真価を発揮する「生産性の獣」と言えるでしょう。
複数の小型プリンターを管理する手間を考えれば、この一台で完結できるメリットは計り知れません。
旧モデル「Sonic Mega 8K」との主な違いは?スペックと価格を比較
Sonic Mega 8K Sは、先行モデルである「Sonic Mega 8K」の廉価版として位置づけられています。
しかし、単にコストダウンしただけでなく、ユーザーのニーズに合わせて仕様が最適化されている点が特徴です。
主な違いは以下の表の通りです。
| 項目 | Sonic Mega 8K S | Sonic Mega 8K |
|---|---|---|
| 本体価格(参考) | 約236,000円 | 約880,000円 |
| 筐体の材質 | プラスチックベース | 全金属製 |
| 造形サイズ (LxWxH) | 330 x 185 x 300 mm | 330 x 185 x 400 mm |
| 本体重量 | 26 kg | 35 kg |
| カバー形式 | リフトアップ式 | 両開きドア式 |
| データ入力 | USB | USB / Ethernet |
価格が大幅に抑えられている一方で、造形高さが10cm低くなり、筐体の材質が変更されています。
また、ネットワーク機能が省略されるなど、コストと機能のトレードオフが見られます。
それでも、基本的な印刷性能を維持しつつ、個人でも導入しやすい価格帯になったことは大きな魅力です。
「S」付き廉価版でも品質は高い?FauxHammer氏の評価
「廉価版」と聞くと品質が心配になるかもしれませんが、その懸念は不要です。
著名なレビュアーであるFauxHammerのロス氏は、Sonic Mega 8K Sを「決して安いものではない」と評価しています。
彼は「信頼性の高いブランドが提供する、最高品質、最高の構造を備えた大判LCD 3Dプリンター」とまで述べており、コスト削減のために品質を犠牲にするような製品ではないことを強調しました。
Phrozenが長年培ってきた品質への信頼は、このSモデルでも健在であると言えます。
Phrozen Sonic Mega 8K Sのスペックと注目すべき7つの特徴
主要スペック一覧表【Sonic Mega 8Kと比較】
改めて、Sonic Mega 8K Sの主要スペックを旧モデルと比較してみましょう。
| モデル名 | Sonic Mega 8K S | Sonic Mega 8K |
|---|---|---|
| 本体サイズ(LxWxH)[mm] | 472 x 380 x 566 | 470 x 400 x 680 |
| 造形サイズ(LxWxH)[mm] | 330 x 185 x 300 | 330 x 185 x 400 |
| ピクセルサイズ[mm] | 0.043 (43µm) | 0.043 (43µm) |
| プリントスピード | Ave. 600layers/h | Max 70 mm/h |
| データ入力 | USB | USB/Ethernet |
| 本体重量[kg] | 26 | 35 |
| スライスソフト | CHITUBOX | CHITUBOX |
XY解像度を決定するピクセルサイズは両モデルで共通しており、基本的な精細度は同等であることがわかります。
大きな違いは、やはり本体サイズ、重量、そして造形高さにあります。
特徴①:ミニチュア80体を一度に印刷できる15インチの大型造形サイズ
Sonic Mega 8K Sの最大の特徴は、330 x 185 mmという広大なビルドプレートです。
これにより、例えば1/32スケールの兵士モデルであれば、一度の印刷で約80体を並べて造形することが可能です。
これは、小型プリンターで何度も印刷を繰り返す手間と時間を大幅に削減し、生産性を飛躍的に向上させます。
大量のアイテムを効率的に作りたいユーザーにとって、このサイズは強力な武器となるでしょう。
特徴②:ACFフィルム採用による高速印刷(最大600層/時)
本機は、レジンバットの底にACF(Advanced Composite Film)フィルムを標準採用しています。
ACFフィルムは、従来のFEPやPFAフィルムに比べて非粘着性に優れており、造形物がフィルムから剥がれる際の抵抗が少ないのが特徴です。
これにより、ビルドプレートの上昇速度を上げることができ、結果として印刷時間全体の大幅な短縮につながります。
Phrozenは最大で1時間あたり600層の硬化が可能としており、大型モデルでも現実的な時間で完成させることができます。
特徴③:使いやすさを向上させるリフトアップカバーとドリップハンガー
日々の使い勝手を向上させるための細やかな設計も魅力の一つです。
本体カバーは、上方に開くリフトアップ式を採用。
これにより、カバーの置き場所に困ることがなく、限られた作業スペースでも効率的に運用できます。
また、Z軸アームには金属製のドリップハンガーが標準装備されており、印刷後のビルドプレートを斜めに掛けておくことで、余分なレジンを無駄なくバットに戻すことが可能です。
特徴④:レジンの流れを最適化する穴あきビルドプレート
ビルドプレートには多数の穴が開けられています。
これは、巨大なプレートがレジンバット内を上下する際に発生するレジンの流れをスムーズにするための重要な機能です。
もし穴がなければ、プレート下のレジンが適切に流れず、次の層を硬化する際に悪影響を及ぼし、造形失敗の原因となり得ます。
一方で、印刷後に穴にレジンが詰まりやすいというデメリットもありますが、大型造形の成功率を高めるためには不可欠な設計と言えるでしょう。
特徴⑤:工場出荷時のキャリブレーションでセットアップが簡単
3Dプリンターの初期設定で最も手間がかかる作業の一つが、ビルドプレートの水平調整(レベリング)です。
Sonic Mega 8K Sは、このレベリングが工場出荷時に完璧に調整された状態で届きます。
ユーザーは箱から出して簡単な設定をするだけで、すぐに印刷を開始できるため、初心者でも安心して導入することが可能です。
特徴⑥:ChituBox Proの1年ライセンスが付属
付属品として、人気のスライサーソフト「ChituBox Pro」の1年間有効なライセンスが同梱されています。
これは単体で購入すると約170ドル相当の価値があり、コストパフォーマンスをさらに高めています。
ChituBox Proは、無料版に比べてサポート構造の自動生成機能が強化されているなど、より高度で効率的なデータ準備を可能にします。
特徴⑦:自動レジン供給装置や換気扇に接続できる拡張性
本体の背面には、オプションパーツを追加するためのポートが用意されています。
これにより、別売りの自動レジン供給・回収装置「Pump & Fill」をシームレスに統合したり、換気ホースを接続してレジンの匂いを外部に排出したりすることが可能です。
これらの拡張性は、よりプロフェッショナルな運用や、安全な作業環境の構築をサポートします。
【レビュー解説】Sonic Mega 8K Sのリアルな評判・口コミを徹底分析
印刷品質は本当に8K?解像度43ミクロンの実力を検証
「8Kプリンター」という言葉から、非常に高い精細度を期待するかもしれません。
しかし、ここで言う「8K」とはスクリーン全体のピクセル数を指すもので、必ずしも印刷の細かさを直接示すわけではありません。
重要なのはXY解像度(ピクセルサイズ)であり、Sonic Mega 8K Sでは43ミクロンです。
これは、より小型のSonic Mini 4K(35ミクロン)などと比較すると若干劣ります。
実際にマクロレンズで拡大すると、表面にピクセルの格子(ボクセル化)が見えることもありますが、肉眼で見る限り、特に大型モデルにおいては全く気にならないレベルです。
小さなミニチュアでも十分すぎるほどの品質ですが、最高の精細度を求めるなら他の選択肢も視野に入れる必要があります。
メリット・おすすめな点は?ユーザーが評価するポイントまとめ
多くのレビュアーやユーザーが共通して評価しているメリットは、以下の点に集約されます。
- 圧倒的な造形サイズによる高い生産性
- 廉価版とは思えない堅牢で高品質な作り
- ACFフィルムによる驚異的な印刷速度
- 箱出しですぐに使える簡単なセットアップ
- リフトアップカバーやドリップハンガーといった実用的な機能
- ChituBox Proが付属する高いコストパフォーマンス
デメリット・注意点は?購入前に知っておくべきこと
一方で、いくつかのデメリットや注意点も指摘されています。
- Wi-FiやEthernetといったネットワーク機能がない
- 印刷データを保存する内部ストレージがない
- レジンヒーターが付属していない
- レジンバットのハンドルがやや持ちにくい
- ビルドプレートの穴にレジンが詰まり、清掃に手間がかかる
これらの点は、特に業務用途で複数台を運用する場合や、利便性を最優先するユーザーにとってはマイナスポイントとなる可能性があります。
ネットワーク機能(Wi-Fi/Ethernet)がない点はどう?
現代の3Dプリンターにおいて標準となりつつあるWi-FiやEthernet接続機能がないことは、最も大きなデメリットの一つです。
これにより、印刷データは常にUSBメモリを使って手動で転送する必要があります。
個人の趣味で使う分には大きな問題にならないかもしれませんが、プリンターを別の部屋に設置している場合や、複数のプリンターを効率的に管理したいプリントファームなどでは、作業効率の低下につながる可能性があります。
印刷速度は本当に速い?VogMan氏による速度テストの結果
公称の印刷速度は本当に出るのでしょうか。
レビュアーのVogMan氏が実施した速度テストでは、驚くべき結果が報告されています。
Phrozenが発表していた「1時間あたり900層」という数値をテストしたところ、実際にはそれを上回る「1時間あたり928層」を達成したのです。
さらに重要なのは、この高速印刷設定でも、印刷品質が犠牲になることはなく、むしろ通常速度のレジンで印刷したものより優れていたと評価しています。
この結果は、Sonic Mega 8K Sの高速性能が単なるマーケティング文句ではないことを証明しています。
Phrozen Sonic Mega 8K Sの価格と購入できる場所
日本での販売価格はいくら?
日本国内におけるPhrozen Sonic Mega 8K Sの販売価格は、正規代理店などで取り扱われており、おおよそ236,000円前後となっています(2025年時点)。
価格は販売店や時期によって変動する可能性があるため、購入前には必ず最新の情報を確認してください。
旧モデルの価格を考えると、非常に戦略的な価格設定と言えるでしょう。
おすすめの購入先は?【正規代理店・Amazon】
3Dプリンターのような精密機器は、購入後のサポート体制が非常に重要です。
そのため、国内の正規代理店(株式会社イグアスや株式会社サンステラなど)からの購入を強く推奨します。
正規代理店を通じて購入することで、日本語での技術的なサポートや、万が一の故障時の保証を安心して受けることができます。
Amazonなどのオンラインマーケットプレイスでも販売されていますが、その際も出品者が正規代理店であることを確認すると良いでしょう。
同時購入を推奨する周辺機器は?(Wash Mega S, Cure Mega S)
Sonic Mega 8K Sの巨大な造形サイズを最大限に活かすためには、後処理を行うための周辺機器も大型のものが不可欠です。
Phrozenは公式に、大型洗浄機「Wash Mega S」(25L容量)と、大型二次硬化機「Cure Mega S」をラインナップしています。
これらを併せて導入することで、印刷から後処理までの一連のワークフローをスムーズに行うことができ、大型造形のクオリティを最大限に高めることが可能です。
まとめ:Phrozen Sonic Mega 8K Sのレビュー解説
このプリンターがおすすめな人の特徴
Phrozen Sonic Mega 8K Sは、特定のニーズを持つユーザーにとって、他に代えがたい価値を提供します。
- ミニチュアアーミーなど、小型モデルを一度に大量生産したい方
- コスプレの鎧やヘルメットなど、大型モデルを分割せずに造形したい方
- 3Dプリントをビジネスとして展開し、生産効率を重視する事業者
- 複数の小型プリンターを1台に集約して管理を効率化したい方
- 品質と価格のバランスが取れた大型プリンターを探している方
より高精細なモデルを求めるなら?他の選択肢
もしあなたの最優先事項が、生産性やサイズではなく、最高の精細度であるならば、他の選択肢を検討するべきです。
Sonic Mega 8K Sの43ミクロンという解像度は十分高品質ですが、例えば同じPhrozenの「Sonic Mini 8K S」は22ミクロンという驚異的な解像度を誇ります。
もちろん、その場合は造形サイズが大幅に小さくなるため、自身の制作スタイルに合わせて、サイズと精細度のどちらを優先するかを慎重に判断する必要があります。
大量生産・大型造形の常識を変える一台
Phrozen Sonic Mega 8K Sは、これまで高価で専門的だった大型光造形の世界を、より身近なものにした画期的な3Dプリンターです。
圧倒的な生産性と十分な品質を、個人でも手の届く価格帯で両立させています。
いくつかの妥協点はあるものの、その強力な性能は多くのユーザーにとって、それらを補って余りあるメリットとなるでしょう。
あなたの創造性を、サイズという制約から解放してくれる一台です。
- Sonic Mega 8K Sは大型・高速プリントを高コスパで実現するモデルである
- 旧モデルMega 8Kより安価だが、ビルドクオリティは高い評価を受けている
- 15インチの大型ビルドプレートでミニチュアの大量生産が可能
- ACFフィルム採用により最大600層/時の高速印刷を実現する
- XY解像度は43ミクロンで、超高精細よりも大型造形に適している
- リフトアップカバーやドリップハンガーなど使いやすさを向上させる工夫がされている
- Wi-FiやEthernetなどのネットワーク機能は搭載されていない
- 実際のレビューでは公称値を上回る印刷速度が確認されている
- 購入はサポートが充実している国内正規代理店が推奨される
- 生産性とサイズを重視するユーザーにとって最適な選択肢である
