「iPhoneでハイレゾ音源を楽しみたいけど、意味ないって本当?」「ハイレゾ対応の高価なワイヤレスイヤホンを買っても無駄なの?」といった疑問をお持ちではないでしょうか。
Apple Musicがハイレゾロスレス配信を開始し、高音質な音楽が身近になりましたが、その性能をiPhoneで最大限に引き出すにはいくつかのハードルが存在します。
この記事では、「iPhoneでハイレゾは意味ない」と言われる技術的な理由から、Bluetooth接続の限界、そして有線接続で真の高音質を実現するための具体的な方法まで、専門的な知識をわかりやすく解説します。
さらに、予算に応じたおすすめの高音質化プランもご紹介しますので、あなたのiPhoneを本格的な音楽プレイヤーへと進化させるための最適な答えが見つかるはずです。
「iPhoneでハイレゾは意味ない」と言われる3つの決定的理由
iPhone単体、特にワイヤレスイヤホンで音楽を聴く環境では、ハイレゾ音源が持つ本来の性能を発揮できないため、「意味ない」と言われることがあります。
その背景には、Bluetoothの伝送技術、iPhone本体の性能、そして音楽配信サービスの仕様という3つの明確な理由が存在します。
理由① Bluetooth接続ではハイレゾ音源をそのまま伝送できないから
最大の理由は、Bluetoothという無線通信技術の仕組みにあります。
Bluetoothで音声を伝送する際は、データを一度圧縮して送信し、イヤホン側で元に戻すという処理が行われます。
この圧縮の過程で、ハイレゾ音源が持つ膨大な情報量の一部が失われてしまうため、イヤホンに届く時点ではもはやハイレゾ品質ではなくなっているのです。
理由② iPhone本体の内蔵DACがハイレゾに完全対応していないから
iPhoneには、デジタル音楽データをアナログの音声信号に変換するための「DAC(Digital to Analog Converter)」というチップが内蔵されています。
しかし、この内蔵DACの性能は、最大で48kHz/24bitまでの対応となっています。
これはCD音質(44.1kHz/16bit)を超える品質ではありますが、配信されているハイレゾ音源の中には96kHzや192kHzといった、さらに高スペックなものも多く、それらを再生しようとするとiPhone側で48kHzにダウンサンプリング(品質を落として再生)されてしまいます。
理由③ Apple Musicの「ハイレゾロスレス」もワイヤレスでは圧縮されてしまうから
Apple Musicでは「ロスレス」や「ハイレゾロスレス」といった高音質な音源が配信されています。
しかし、これらの高音質音源をiPhoneで再生しても、AirPodsなどのワイヤレスイヤホンに送る段階でBluetoothによる圧縮がかかります。
結果として、せっかくのハイレゾロスレス音源も、その情報量を維持したまま耳に届けることはできず、性能を活かしきれない状態となります。
iPhoneとBluetoothの壁:なぜワイヤレスイヤホンでハイレゾが聴けないのか?

iPhoneとワイヤレスイヤホンでハイレゾが聴けない根本的な原因は、iPhoneが対応しているBluetoothの音声圧縮方式(コーデック)が、ハイレゾ品質のデータ伝送を想定していないためです。
イヤホン側がどれだけ高性能でも、送信側であるiPhoneの制約を超えることはできません。
音質を左右する「コーデック」とは?仕組みをわかりやすく解説
コーデックとは、Bluetoothで音声データを送る際の「圧縮ルール」のことです。
音声データは容量が大きいため、そのまま無線で送ると遅延や途切れが発生しやすくなります。
そこで、コーデックを使ってデータを効率的に圧縮し、スムーズな通信を実現しています。
代表的なコーデックには、標準的な「SBC」、Apple製品で主に使われる「AAC」、Android端末で広く採用され高音質な「aptX HD」や、SONYが開発したハイレゾ級伝送が可能な「LDAC」などがあります。
コーデック名 | 主な特徴 | 対応OS |
---|---|---|
SBC | Bluetoothの標準コーデック。音質は標準的。 | ほぼ全ての機器 |
AAC | SBCより高音質で低遅延。Apple製品が採用。 | iOS, Android |
aptX HD | CD音質以上の伝送が可能。 | Android |
LDAC | ハイレゾ相当のデータ量を伝送可能。 | Android |
iPhoneが対応するのはAACとSBCのみ!LDACやaptX HDには非対応
重要なのは、iPhoneが公式に対応しているコーデックが「SBC」と「AAC」の2種類のみという点です。
AACはSBCよりも高音質ですが、LDACやaptX HDのようにハイレゾ品質のデータを伝送する能力はありません。
そのため、市場に流通している「LDAC対応」を謳う高機能なワイヤレスイヤホンをiPhoneに接続しても、イヤホンの最高性能であるLDACで通信することはできず、AACでの接続に制限されてしまいます。
結論:ハイレゾ対応の高級ワイヤレスイヤホンを買ってもiPhoneでは性能を発揮できない
以上の理由から、iPhoneユーザーがハイレゾ対応の高級ワイヤレスイヤホンを購入しても、その真価を体験することは困難です。
イヤホンが持つ潜在能力は高くても、iPhoneからのデータ伝送がボトルネックとなり、結果的にAACコーデックの音質が上限となってしまいます。
これは、高性能なスポーツカーを一般道で走らせるようなもので、本来のスピードを出すことができない状態に似ています。
有線ならiPhoneでハイレゾは聴ける?DACの役割と必要なもの

はい、有線接続で「外付けDAC」という専用機器を使用すれば、iPhoneでも本来のハイレゾ音源を聴くことが可能です。
ワイヤレスの制約から解放され、音源が持つ情報を余すことなく引き出すためには、有線接続とDACの導入が鍵となります。
ハイレゾ再生の鍵になる「DAC(ダック)」とは何か?
DAC(Digital to Analog Converter)とは、Apple Musicなどから送られてくるデジタル信号を、私たちが耳で聴くことができるアナログの音声信号に変換する電子部品のことです。
このDACの性能が、最終的な音質を大きく左右するため、「オーディオの心臓部」とも言われます。
スマートフォンやPCには必ず内蔵されていますが、その性能はコストやサイズの制約から限定的です。
iPhoneでハイレゾを聴くために「外付けDAC」が必須な理由
前述の通り、iPhoneに内蔵されているDACは最大48kHz/24bitまでの対応です。
これを超えるスペックのハイレゾ音源(例:96kHz/24bitや192kHz/24bit)を本来の品質で楽しむためには、より高性能な音楽専用の「外付けDAC」が不可欠となります。
外付けDACをiPhoneに接続することで、iPhoneの内蔵DACをバイパスし、高性能なDACで音声変換を行うことができるようになります。
Apple純正の変換アダプタではダメ?CD音質(ロスレス)が限界という事実
Appleが販売している「Lightning – 3.5mmヘッドホンジャックアダプタ」にも、実は小型のDACが内蔵されています。
このアダプタを使用すれば、最大48kHz/24bitまでの音源を再生できるため、Apple Musicの「ロスレス」(最大48kHz/24bit)品質、つまりCDと同等かそれ以上の音質を十分に楽しむことは可能です。
しかし、それを超える「ハイレゾロスレス」(最大192kHz/24bit)の再生には対応しておらず、その場合は48kHzにダウンサンプリングされてしまいます。
「DACを使っても意味ない」は本当?音質の変化を徹底解説
「iPhoneにDACを使っても意味ない」という意見も散見されますが、これは必ずしも正しくありません。
良質な外付けDACを使用すると、音の解像度、透明感、音場の広がりなどが向上し、楽器一つひとつの音がより鮮明に聞こえるようになります。
「意味ない」と感じる場合は、使用するイヤホンの性能や個人の聴覚、または投資対効果の観点からの意見である可能性が高いです。
特に、数千円から数万円の投資で得られる音質向上は、音楽好きにとって十分に価値のある体験と言えるでしょう。
Apple Musicの「ロスレス」設定は無駄?音質を最大限に活かす方法
ワイヤレス接続ではロスレス品質を完全に再現することはできませんが、設定をONにすることに全く意味がないわけではありません。
むしろ、少しでも良い音で聴きたいのであれば、たとえBluetooth接続であってもロスレス設定をONにすることには理論上のメリットが存在します。
設定をONにしてもAirPodsではロスレス音質で聴けていない?
はい、その通りです。
Apple Musicの設定で「ロスレスオーディオ」をONにしても、AirPodsやその他のBluetoothイヤホンで聴く場合、iPhoneからイヤホンへ音声を送る際にAACコーデックで再度圧縮されます。
そのため、データが完全に無損失(ロスレス)の状態で耳に届いているわけではありません。
Bluetooth接続でも「ロスレス設定」にする意味はあるのか解説
意味はあります。
音源の圧縮は、伝言ゲームのように繰り返されるほど情報が劣化していきます。
- 通常設定の場合:Apple Music側で既に圧縮された音源(AAC 256kbps)を、さらにBluetooth伝送のために再圧縮する(2段階の劣化)。
- ロスレス設定の場合:劣化していないマスター品質のロスレス音源を、Bluetooth伝送のために一度だけ圧縮する(1段階の劣化)。
この差は非常に微細かもしれませんが、理論上は元の音源品質が高いほど、一度の圧縮で済むロスレス設定の方が最終的な音質は有利になります。
ただし、データ通信量やバッテリー消費が増えるというデメリットもあるため、ご自身の環境に合わせて判断することが重要です。
Apple Musicのハイレゾ音源を劣化させずに聴くための正しい設定と機材
Apple Musicのハイレゾ音源を劣化させずに聴くためには、以下の設定と機材の組み合わせが必須です。
- iPhoneの設定:「設定」アプリ →「ミュージック」→「オーディオの品質」を開き、「ロスレスオーディオ」をオンにします。さらに、「ハイレゾロスレス」を選択します。
- 必要な機材:iPhoneに接続可能な「外付けDAC(USB-DAC)」と、ハイレゾ対応の「有線イヤホンまたはヘッドホン」を用意します。
- 接続方法:iPhone → 外付けDAC → 有線イヤホン の順に接続して再生します。
この環境を構築することで、初めてApple Musicのハイレゾロスレス音源を本来の品質で楽しむことができます。
SpotifyとApple Music、音質にこだわるならどちらを選ぶべき?
音質を最優先するならば、Apple Musicを選ぶことをおすすめします。
Spotifyの最高音質は約320kbpsの圧縮音源であるのに対し、Apple MusicはCD品質の「ロスレス」から、それを超える「ハイレゾロスレス」まで対応しています。
適切な再生環境を整えることを前提とすれば、Apple Musicの方がより高品位な音楽体験が可能です。
【予算別】iPhoneで今すぐできる高音質化おすすめプラン

高音質な環境を整えるには機材が必要ですが、必ずしも高額な投資が必須というわけではありません。
ご自身の予算やどこまで音質を追求したいかに合わせて、ステップアップしていくことが可能です。
【予算0円〜】まずは有線イヤホンで「CD音質(ロスレス)」を体験しよう
追加の投資をせずに、今すぐ音質を向上させる方法があります。
それは、iPhoneに付属していた、あるいは別途購入した「Lightning – 3.5mmヘッドホンジャックアダプタ」と、手持ちの有線イヤホンを使うことです。
この組み合わせでApple Musicの「ロスレス」を再生すれば、ワイヤレスでは味わえないCD品質のクリアなサウンドを手軽に体験できます。
【予算1万円〜】「ドングルDAC」を導入してハイレゾの世界へ
本格的なハイレゾ再生への第一歩として最もおすすめなのが、「ドングルDAC」の導入です。
これはUSBメモリのように小型で、iPhoneの端子に直接接続して使用するタイプの外付けDACです。
1万円前後から高性能なモデルが多数販売されており、これ一つでiPhoneがハイレゾ対応プレイヤーに変わります。
手軽に持ち運べ、音質の劇的な向上を体感できるため、コストパフォーマンスが非常に高い選択肢です。
【ワイヤレス派向け】高音質コーデック対応の「Bluetoothトランスミッター」という選択肢
どうしてもワイヤレス環境にこだわりたい場合は、「Bluetoothトランスミッター」を使用する方法があります。
これは、iPhoneに接続し、LDACやaptX HDといった高音質コーデックで音声信号を送信する機器です。
これを使えば、対応するワイヤレスイヤホンとの組み合わせで、iPhone単体では不可能な高音質ワイヤレス再生が実現します。
ただし、iPhoneに機器をぶら下げる形になるため、携帯性がやや損なわれる点がデメリットです。
音質を気にする際の着眼点:「ハイレゾ」という言葉だけに惑わされないイヤホン選び
音質を追求する上で、「ハイレゾ対応」というスペック表記は一つの目安に過ぎません。
最終的な音の印象を決めるのは、イヤホンやヘッドホン自体の基本的な性能です。
ドライバーの種類、筐体の素材、メーカー独自の音響チューニングなど、様々な要素が複雑に絡み合って音は作られています。
スペックだけでなく、実際に試聴して自分の好みに合うかどうかを確認することが、満足のいくイヤホン選びで最も重要なポイントです。
iPhoneのハイレゾ再生に関するよくある質問
ここでは、iPhoneでのハイレゾ再生に関して、多くの人が抱く疑問についてお答えします。
iPhoneが将来的にLDACなどの高音質コーデックに対応する可能性は?
現時点では、その可能性は低いと考えられています。
Appleはこれまで、AirPodsシリーズとの連携を重視し、独自のオーディオ技術やAACコーデックを中心にエコシステムを構築してきました。
他社規格であるLDACやaptX HDを積極的に採用する可能性は、過去の動向から見ても高いとは言えません。
ただし、技術革新や市場の変化によっては、将来的に方針転換が行われる可能性もゼロではありません。
SONYのウォークマンとiPhone+DACではどちらが高音質?
一概にどちらが高音質かを決めることは困難です。
SONYのウォークマンは音楽再生専用に設計されているため、ノイズ対策やアンプの性能など、音質面で有利な点が多くあります。
一方、iPhone+DACの組み合わせは、使用するDACやイヤホンの性能によって音質が大きく変わります。
高性能なDACを選べばウォークマンに匹敵、あるいはそれを超える音質を実現することも可能です。
操作性のウォークマン、汎用性とカスタマイズ性のiPhone+DAC、という特徴で選ぶのが良いでしょう。
ハイレゾ対応イヤホンやヘッドホンをiPhoneで使うメリットは?
たとえiPhoneからの出力がハイレゾ品質でなくても、高性能なイヤホンを使うメリットは十分にあります。
ハイレゾ対応を謳うイヤホンは、そもそも再生能力の基礎体力が高く、広い周波数帯域を正確に表現できるように設計されています。
そのため、AACで圧縮された音源であっても、通常のイヤホンに比べて解像度が高く、クリアで表現力豊かなサウンドで楽しむことができる可能性が高いです。
まとめ:iPhoneでハイレゾは意味ないのか最終結論
- iPhone単体やワイヤレス接続でのハイレゾ再生は、その性能を発揮できないため「意味ない」と言われる
- iPhoneが対応するBluetoothコーデックはAACとSBCのみで、ハイレゾ伝送には非対応である
- iPhone本体に内蔵されたDACは最大48kHz/24bitまでの対応で、それ以上のハイレゾ音源は品質が落ちる
- Apple Musicのハイレゾロスレス音源も、Bluetooth接続の段階で圧縮され劣化する
- iPhoneで真のハイレゾ音質を楽しむには、「外付けDAC」と「有線イヤホン」の組み合わせが必須である
- Apple純正の変換アダプタは、ハイレゾには非対応だがCD品質の「ロスレス」再生は可能
- ワイヤレスでもロスレス音源を再生する方が、圧縮済み音源を再圧縮するより理論上は高音質
- 予算ゼロでも、純正アダプタと有線イヤホンを使えばCD品質の音楽を手軽に楽しめる
- 最も手軽なハイレゾ化の方法は、1万円前後から購入できる「ドングルDAC」の導入である
- 「ハイレゾ対応」というスペックだけでなく、イヤホン自体の基本的な性能や音の好みが重要